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【不動産市況編⑤】野田市

【不動産市況編⑤】野田市

※写真は野田市役所(2022年8月撮影)

千葉県の北西部に位置する野田市は、江戸川と利根川に挟まれ、水運で栄えた街です。

野田市の主な企業にはキッコーマンのほか、キノエネ醤油、野田ガス、日立物流、トステム等のほか、近年は物流施設の取得のために投資ファンド等の進出も目立っています。

野田市は東葛エリア(※)にあって、土地区画整理済の区画整然とした住宅地域と街路条件のやや劣る既成住宅地域で構成され、近年では土地区画整理事業の施行された地域の取引が多くなっています。

(※)千葉県北部にある野田市、流山市、柏市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市の計6市をいう。

今回は野田市の不動産市況について解説していきます。

野田市といえば

まずは野田市の概要について説明していきます。

野田醤油

千葉県野田市といえば醤油製造が有名です。

全国的な知名度を誇る野田醤油の歴史は古く、今から100年以上前である1917年に「野田醤油株式会社」(現「キッコーマン」)が設立されました。

キッコーマン本社(2022年8月撮影)


野田市が醤油の一大産地となったのは、土壌と気候が醤油造りに適していたこと、原材料入手から製品輸送に係る水運(江戸川)が発達していたことなどが主な要因です。

これにより江戸時代中期には、醤油の一大消費地である江戸の醤油需要の大半は野田で賄われるほどでした。

なお、上記キッコーマンより古い歴史があるのが「キノエネ醤油」。1830年から続く老舗です。

キノエネ醤油工場(2022年8月撮影)

東武野田線

野田市を南北に走るの東武野田線(通称:東武アーバンパークライン)は、当初「野田町」駅(現・「野田市」駅)から「柏」駅まで醤油を運ぶ貨物列車として建設されました。

現在、東武野田線では「清水公園」駅から「梅郷」駅まで約2.9kmの区間で高架化工事が進められています。

東武野田線

イオンノア店と森の遊園地

野田市の中心部、国道16号と東武野田線の間にあるのが「イオンノア店」です。

イオン自体は野田市民の日常の買い物に利用される、いわゆる地方都市の普通の商業施設なのですが、併設された「森の遊園地」では巨大な観覧車があり、市の名物になっています。

イオンノア店(2022年8月撮影)

野田市北部「旧関宿町」

室町時代に築城された関宿城が存する野田市北部は「旧関宿町」と呼ばれます。

江戸時代、房総に多数存在した藩の中でも関宿藩は老中を輩出した名藩として知られています。

関宿城


野田市のみならず、千葉県としても最北端に位置する関宿地区は利根川と江戸川に挟まれた台地と低地からなりますが、鉄道がなく、最寄り駅までの距離も遠いことから交通利便性が劣り、近年は人口減少が続いています。

関宿地区では市施行、組合施行の複数の土地区画整理事情が進行しているものの、総じて不動産需要に乏しく、地価は下落傾向にあります。

野田市の主要な駅(住宅地)

続いて野田市内にある主要な駅の不動産市況について解説していきます。

東武野田線「梅郷」駅

野田市南部では東武野田線「梅郷」駅周辺の住宅地が比較的人気のあるエリアです。

東武野田線「梅郷」駅(西口)(2022年8月撮影)


近年大規模な開発が続き、やや高級志向の商業施設があるつくばエクスプレス線「流山おおたかの森」駅のほか、日本最大のショッピングモール「イオンレイクタウン」にも梅郷は比較的近く、当該施設でショッピングを楽しみたいファミリー層などの需要が見られます。

同じ千葉県にある「流山おおたかの森」駅周辺の不動産価格は高く、需要者層は中間所得者から高所得者層へと変化が見られるため、比較的手頃な価格の梅郷で購入する層が一定数見られます。

梅郷駅周辺の住宅地では、例えばコロナの影響も見られた2020~2021年は概ね坪17~18万円で成約していた物件が、2022年現在では坪20万円程度で成約するなど、(もちろん場所にもよりますが)本記事を書いている2022年9月時点では昨年比で価格の上昇が見られるエリアが増えている印象です。

場合によっては対昨年比で坪5万円程度高く成約しているケースも見られます。

このように売買価格が上昇しているケースでは地主が強きな姿勢も見られるほか、地場の不動産業者の動きも積極的になり、ビルダーが坪30~40万円で募集するなど売り値を上げているケースも見られます。

これらの募集価格に値引きなしで成約する事例も見られるなど、特に駅に近いエリアは坪30万円程度の成約も見られます。

ただし、2022年春頃に一旦ピークが訪れた後の需要は踊り場状態が続いており、昨今の建築費高騰も重なって今後の見通しは不透明な状況であり、注視が必要です。

東武野田線「野田市」駅

「野田市」駅では高架化工事(連続立体交差事業)が行われ、現在は駅西側約6ヘクタールの区域において、土地区画整理事業発が進捗しています。

東武野田線「野田市」駅(西口)(2022年8月撮影)


高架化工事と一体的に駅前区画整理事業を行うことで市街地を再構築し、交通の円滑化や都市機能の集積などを目指しています。

名称野田都市計画事業野田市駅西土地区画整理事業
施行者野田市
施行面積約6ヘクタール
都市計画決定平成17年8月23日
事業認可平成18年11月22日
施行期間平成18年度から令和9年度(予定)
野田市駅西土地区画整理事業の概要

東武野田線「愛宕」駅

「愛宕」駅においても高架化工事と一体的に駅前区画整理事業が進捗しています。

東武野田線「愛宕」駅(西口)(2022年8月撮影)


愛宕駅周辺地区のまちづくりとしては、連続立体交差事業とあわせて、駅前広場や駅舎のバリアフリー化、都市計画道路駅前線、駅周辺の県道つくば野田線、結城野田線などを一体的に整備する計画が進んでいるほか、無電柱化などにより、良好な商業空間と景観形成を目指しています。

名称愛宕駅東口駅前広場事業主体野田市事業
認可平成18年9月26日
施行期間平成18年度から平成27年度(暫定形では完成)
面積3,500㎡(暫定形では2,300㎡)
関連事業愛宕東駅前線(整備済)、幅員は約20m延長は約90m
愛宕駅東口駅前広場整備事業の概要


東武野田線「愛宕」駅(東口)(2022年8月撮影)


また駅西口ではホテルの開発計画も進捗しています。

「愛宕」駅西口ホテル開発用地(2022年8月撮影)


所在野田市野田721-4ほか
開発面積3253.31㎡
用途ホテル
建築面積1,603.08㎡
延床面積4,415.64㎡
地上高約30m
施工者株式会社熊谷組
「愛宕」駅西口における宅地開発事業の概要


上記ホテルのほか、野田市役所に近い国道16号線沿いでは、2020年12月に「ホテルルートイン野田」がオープンしています。

ホテルルートイン野田(2022年8月撮影)


COVID-19(新型コロナ)におけるネガティブな影響が大きかった不動産市場の一つに「ホテル市場」がありますが、回復を見越して市内にホテルが開発されることで、今後は野田市を拠点とした観光・宿泊需要の喚起が期待されます。

東武野田線「川間」駅

東武野田線「川間」駅(南口)(2022年8月撮影)


東武野田線では野田市最北端にあるのが「川間」駅です。

まず野田市全体で見ると、主にテレワークで都心への通勤が不要となったサラリーマン層が戸建住宅を探すケースが増加している印象です。

その中でも川間は春日部などに通勤する埼玉方面の需要者層も取り込むことができ、かつ住みやすさも売りですから川間駅周辺の住宅地需要が増しており、長年続いた地価下落も、一部で下げ止まりの兆候も見られます(不動産業者の聴聞などでは、「北の川間、南の梅里」という言葉も聞かれました)。

相場観としては、例えば川間駅から徒歩5~6分であれば25万円/坪程度の取引が主です。

川間の住宅地における新型コロナの影響で見ると、資材調達の遅れが若干見られたものの影響は限定的で、それよりも現在は建築費高騰に伴う土地建物価格の上昇が顕著です(例えば対昨年比で20%程度上昇するなど)。

野田市の商業地

野田市では駅前の既存商業地域における店舗需要は之しく、駅前商業地の取引はほとんど見られませんが、国道16号沿いなどの幹線道路沿いではロードサイド型店舗を中心とした需要が見られます。

かつては愛宕駅を中心とする地域と本町通り、けやき夢ロードが主要商業地域でしたが、現在では国道 16 号沿線やその他幹線道路沿線の郊外型大型商業施設が商業中心となり、既存商業地域は衰退傾向にあります。

既存商業地域では飲食店のほか、理美容室、学習塾やクリニツク等の個人向けサービス店が存する程度ですが、近年は上記のとおり東武野田線各駅橋上化事業のほか、駅前の土地区画整理事業が進捗しており、今後は駅前商業地としての需要回復が期待されています。

野田市の工業地

野田市は金属・機械・物流を中心とした6つの工業団地を擁し、工業地としてみればポテンシャルの非常に高い自治体です。

特に最近注目を集めるのが物流。野田市から重要物流インフラである成田国際空港と東京国際空港の航空流通拠点までは各々約60km前後、最大消費地である東京都心まで約40km前後、さいたま市中心部まで約30km前後であり、また高速道路のインターチェンジとしては、常磐自動車道「柏IC」、東北自動車道「岩槻IC」へのアクセスが可能です。

このように、野田市は東日本を中心に広域配送拠点としての優位性を持ち、相対的な地価の安さも相俟って、最近では市の中心部を南北に走る国道16号沿線を中心に、大規模物流施設を開発する動きがみられ、工業地として発展しています。

※野田市の工業地の詳細はこちらの記事でまとめています。

【関連記事】 【物流市況編②】野田市(国道16号)

野田市の令和4年地価公示の概要

野田市の令和4年地価公示の概要は以下のとおりです。

区分標準地所在価格(円/㎡)変動率(%)
住宅地野田-1清水673-5555,600▲2.8
野田-2日の出町9-2444,100▲2.9
野田-3宮崎新田126-4864,000▲2.7
野田-4野田509-776,300▲1.4
野田-5みずき2-16-357,900▲0.5
野田-6岡田588-2819,700▲3.0
野田-7上花輪1420-361,500▲2.4
野田-8木間ヶ瀬730-3922,000▲3.5
野田-9清水255-1466,100▲0.6
野田-10柳沢新田272-3349,000▲2.6
野田-11山崎2721-1649,900▲2.7
野田-12岩名1-20-1276,500▲2.3
野田-13関宿台町2546-116,000▲4.8
野田-14山崎1525-1665,300▲1.1
野田-15岩名1105-426,900▲2.2
野田-16尾崎902-2660,200▲0.7
野田-17春日町43-1354,900▲3.7
野田-18宮崎新田79-2064,000▲2.4
野田-19花井新田266-264,400▲2.9
野田-20上花輪新町29-256,700▲1.6
野田-21桜台195-4661,000▲2.4
野田-22山崎2695-2065,400▲1.7
野田-23三ツ堀969-14734,100▲3.1
野田-24山崎1606-3362,300▲1.1
野田-25なみき2-33-225,000▲3.1
野田-26中野台407-3354,900▲1.1
野田-27三ツ堀1374-8ほか20,400▲2.9
野田-28光葉町2-11-1866,300▲0.7
野田-29つつみ野2-11-1256,900±0.0
野田-30岩名2-46-1863,400▲2.5
野田-31清水公園東2-8-1367,400▲0.1
商業地野田5-1野田584-183,500▲1.2
野田5-2尾崎307-8ほか83,100▲1.3
野田5-3山崎1873-1ほか127,000±0.0
野田5-4中根新田18-95ほか102,000▲1.0
工業地野田9-1中里143-10ほか42,200+3.2
野田9-2西三ケ尾340-13ほか79,500+5.2
野田9-3泉3-4-1ほか66,000+6.6
令和4年度 野田市地価公示 価格一覧


概観すると住宅地、商業地ともに令和4年度まではほぼ下落傾向にありますが、下落幅は年々小さくなりつつあるポイントが多く見られます。

物流適地の工業地の地価は上昇傾向で推移しており、当面はその傾向が続くと考えられます。

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【物流市況編①】柏IC
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