COLUMN コラム

【物流市況編②】野田市(国道16号)

【物流市況編②】野田市(国道16号)

「醤油の街」として知られる野田市は、千葉県の北西部に位置し、東は利根川、西は江戸川に囲まれた南北に細長い市です(千葉県のマスコットキャラクターである「チーバくん」の鼻先にあるのが野田市です)。

野田市は住宅地や商業地としては同じ東葛エリア(千葉県北部)である柏や流山や松戸には劣るものの、キッコーマン食品野田工場をはじめ、金属・機械・物流を中心とした6つの工業団地を擁し、工業地としてみればポテンシャルの非常に高い自治体です。

野田市から重要物流インフラである成田国際空港と東京国際空港の航空流通拠点までは各々約60km前後、最大消費地である東京都心まで約40km前後、さいたま市中心部まで約30km前後であり、また高速道路のインターチェンジとしては、常磐自動車道「柏IC」、東北自動車道「岩槻IC」へのアクセスが可能です。

このように、野田市は東日本を中心に広域配送拠点としての優位性を持ち、相対的な地価の安さも相俟って、最近では市の中心部を南北に走る国道16号沿線を中心に、大規模物流施設を開発する動きがみられ、現時点でも複数の開発が続いています。

今回は野田市における物流施設の開発状況についてまとめました。

野田市の物流開発物件

現時点で野田市では4件の物流施設が開発が進行しており、そのうち1件が2022年7月に竣工しています。

物流施設名開発業者竣工日
野田ディストリビューションセンター2ESR2023年6月(予定)
(仮称)野田瀬戸物流センターA棟・B棟SBSホールディングス2023年11月(予定)
MCUD Logistics(野田市尾崎)三菱商事都市開発2022年7月
MCUD Logistics(野田市七光台)三菱商事都市開発2022年12月(予定)
野田市の物流施設開発状況


以下では、各々の物件の概要を記載していきます。

野田ディストリビューションセンター2

野田ディストリビューションセンター2(2022年9月6日撮影)



(引用)Googleマップ

国道16号沿いの市街化調整区域に開発しているのが、ESRが開発する「野田ディストリビューションセンター2」です。

投資総額は約100億円、敷地面積は約21,555㎡のマルチテナント型の物流施設で、1階両面にトラックバースを38台分備え、最小賃貸区画は約2,300坪で、最大4区画に分割可能であるなど、マルチテナントのニーズに柔軟に対応可能な設計がなされています。

各階の天井高(梁下有効)は1階から3階で5.5m、4階で6.0m以上、積載荷量は1.5t/㎡、柱スパンは間口 11m×奥行 11mなどの近時の物流スペックを十分満たす汎用性の高い施設になる見込みです。

なお、当施設は総合物流企業と全棟の賃貸借契約の締結により、着工前に満床となっています。

名称野田ディストリビューションセンター2
所在地野田市蕃昌266-9
アクセス常磐道「柏」IC(約10km)、東北道「岩槻」IC(約20km)、「七光台」駅(約2km)
敷地面積21,555㎡(6,521坪)
延床面積45,600㎡(13,794坪)
構造/階高地上4階建
用途地域市街化調整区域(地区計画)
竣工2023年6月30日(予定)
野田ディストリビューションセンター2の概要


なお、ESRは付近で「ESR野田ディストリビューションセンター」(2019年竣工)も開発しており、「ESR野田ディストリビューションセンター」から「野田ディストリビューションセンター2」までは3.7kmの距離にあります。

野田ディストリビューションセンター(2022年9月6日撮影)

(仮称)野田瀬戸物流センターA棟・B棟

(仮称)野田瀬戸物流センターA棟・B棟(2022年9月6日撮影)



(引用)Googleマップ

未耕作地となっていた瀬戸地区に開発されるのが「(仮称)野田瀬戸物流センターA棟・B棟」です。

SBSホールディングスの自社開発の物件で、2棟構成で計画されており、SBSホールディングスによると「(仮称)野田瀬戸物流センター」のうちA棟について入居企業が決定し、2022年中に着工する予定で、B棟についても既に引き合いがきており、2023年に完成予定となっています。

1万~2万坪をEC・通販専用に充てるほか、ロボットを導入して自動化も検討されるなど、最先端の物流施設となる見込です。

名称(仮称)野田瀬戸物流センターA棟・B棟
所在地千葉県野田市瀬戸1475番1
アクセス(筆者計測)柏IC(約3km)、国道16号(約2㎞)
敷地面積7万4,346㎡(A棟3万5,768㎡、B棟3万8,578㎡)
延床面積26万5,964㎡(A棟14万3,362㎡、B棟12万2,602㎡)
構造/階高RC造・S造/地上4階建
用途地域市街化調整区域(60/200)
竣工A棟:2022年11月、B棟:2023年(予定)
野田瀬戸物流センターA棟・B棟の概要

MCUD Logistics(尾崎)

MCUD Logistics(尾崎)(2022年9月6日撮影)



(引用)Googleマップ

「MCUD Logistics(野田市尾崎)」は工場や企業の立地も多い中里工業団地に位置します。

国道16号のすぐ側に立地しており、常磐自動車道の「柏」ICを利用することで東京・千葉方面への配送も可能であるほか、東北自動車道の「岩槻」ICを経由してさいたま、川越方面へと運送ルートも確保できる立地です。

東武野田線「川間」駅からも比較的近く、朝日自動車(バス)を利用しての通勤も可能ですし、国道16号の沿線にあるため、マイカー通勤も便利な立地となっています。

マルチテナント物流施設で最大3分割まで分割賃貸可能な設計です。

名称MCUD Logistics(尾崎)
所在地千葉県野田市尾崎2325番2
アクセス常磐道「柏」IC(約14km)、東北道「岩槻」IC(約15km)
敷地面積約17,900.20m²(約5,414.81坪)
延床面積3万2,816㎡/9,927坪
構造/階高3階建
用途地域工業専用地域(60/200)
竣工2022年7月
MCUD Logistics(尾崎)の概要

MCUD Logistics(七光台)

MCUD Logistics(七光台)(2022年9月6日撮影)



(引用)Googleマップ

野田市七光台では、国道16号内側にある北部工業団地でも三菱商事都市開発が物流用地を取得し開発しています。

本エリアは東武野田線「川間」駅の徒歩圏内にあり、川間駅周辺には閑静な住宅街が広がっていることから、周辺住民が徒歩や自転車を利用しての通勤が可能な立地であることが大きなアドバンテージです。

また、最大2テナントで分割賃貸可能なマルチテナント型のほか、ゆとりある柱スパンとトラックバースなど近時のテナントニーズに応え、汎用性を備えたスペックで設計されています。

名称MCUD Logistics(七光台)
所在地千葉県野田市七光台368番1ほか
アクセス常磐道「柏」IC(約12.5km)、東北道「岩槻」IC(約18.8km)
敷地面積11,899.78m²(約3,599.68坪)
延床面積24,119.24m²(約7,296.07坪)
構造/階高4階建
用途地域工業地域(60/200)
竣工2022年12月(予定)
MCUD Logistics(七光台)の概要

今後の開発予定

上記のほか、野田市では以下の物流施設の開発が予定されています。

CBRE IM「(仮称)CBREIM野田」

CBREインベストメントマネジメント・ジャパン(CBRE IM)と大豊建設が野田市桐ヶ作にて、11万8,086㎡のマルチテナント型物流施設「(仮称)CBREIM野田」を開発すると発表しました。

立地は野田市最北端の旧関宿地区となり、千葉中心部からやや距離があるものの、圏央道「五霞IC」から10.7kmの距離にあることから、北関東や東北エリアを見据えた物流拠点としての需要が見込まれます。

当施設は2023年4月に着工予定となっています。

名称(仮称)CBREIM野田
所在地千葉県野田市桐ヶ作210
アクセス圏央道「五霞IC」10.7km
敷地面積50,088㎡
延床面積118,086㎡
構造/階高5階建て(ランプにより1、2、3、4階への車両アクセス可)
用途地域工業地域
着工2023年4月
竣工2024年9月予定
(仮称)CBREIM野田の概要


ヒューリック「(仮称)野田市中根物流開発計画」

国道16号沿いの「野田市駅入口」交差点付近にて、ヒューリックの物流施設「(仮称)野田市中根物流開発計画」があります。

当地はコカコーラジャパン跡地であり、国道16号沿いで常磐道「柏」ICより約7kmに位置するなど、立地条件が優れています。

また、建物は地上4階建のボックス型施設となり、各階に事務所スペース、4階にカフェテリアを設け、「CASBEE建築」のAランクの取得が予定されているなど、環境面にも配慮した設計となっています。

名称(仮称)野田市中根物流
所在地野田市中根新田字四辻前283-3ほか
アクセス常磐道「柏」ICより約7km、国道16号沿い
敷地面積18,469.41㎡(約5,540坪)
延床面積約34,300㎡(約10,400坪)
構造/階高鉄骨造4階建(ボックス型)
用途地域市街化調整区域
着工2022年7月
竣工2023年12月1日(予定)
(仮称)野田市中根物流の概要

野田市のJ-REIT運営状況

野田市ではJ-REITなどが取得・運用する大型物流施設も散見されます。

物件名所在所有(投資法人)延床(㎡)鑑定評価額(百万円)CR(%)
アイミッションズパーク野田野田市泉2-1-1伊藤忠アドバンス・ロジスティクス62,750.0014,9004.1
GLP野田吉春野田市吉春722-2GLP26,631.405,8204.2
IIF野田ロジスティクスセンター野田市西三ヶ尾340-13産業ファンド38,828.109,3504.2
Dプロジェクト野田野田市二ツ塚1-1大和ハウスリート29,190.216,9404.3

※鑑定評価額、CR(キャップレート:還元利回り)は2022年1月末または2022年2月末時点

外資やリート系の投資対象となるようなこれらの物件の稼働率は99.5~100%と高く、期中キャップレートは大型施設で4.1%、やや小型施設で4.2~4.3%と千葉県内内陸部としては低く、当エリアの物流施設の需要の高さが伺えます。

前回ご紹介した柏インターチェンジ周辺におけるJ-REIT物件のキャップレート水準が4.0~4.3%であることに鑑みると、野田市の物流は柏インターチェンジに近い水準まで低下(=需要が高まっている)しています。

所見

野田市の既存工業団地には空地が少ないこともあって(県内ほぼ全ての工業団地にも言えますが)、国道16号沿線の市街化調整区域であっても自治体と交渉し、建築可能な大規模地であれば物流施設用地として高値で取引される事例も見られます。

千葉県内陸部の物流エリアにおいて野田市のランクは高く、外資系等による高額な取引も散見されるため、大規模物流施設の鑑定評価額では年間数%の上昇が続くなど、昨今は強気な上昇率が続いています。

今回ご紹介した上記施設が竣工し安定稼働するであろう2023~2024年頃が、野田市物流において供給過多による賃料水準の乱れ等に着目する一つのタイミングとなると考えています。

<不動産市況編>
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【物流市況編①】柏IC
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