不動産鑑定士として独立し、安定した事業を築くまでの道のりは、多くの下積み期間が必要です。
多くの時間が必要な点は、専門性が要求される分野でのキャリアを追求する人々にとって、共通の経験かもしれませんが、不動産鑑定士に関しては、皆さんの想像以上に長いと思います。
私の経験では、不動産鑑定士として独立し、事業が安定するまで、約14.5年の時間を費やしました。内訳は以下のとおりです。
段階 | 必要な時間 |
資格取得のための勉強時間 | 1.5年 |
実務修習(鑑定士として登録するための実務習得期間) | 2年 |
地価公示評価員になるために必要な実務経験 | 3年 |
さらなるサラリーマン鑑定士として実務経験 | 5年 |
独立し、事業として安定させるまで | 3年 |
合計 | 14.5年 |
激務のエンジニアという職業に限界を感じ、29歳で不動産鑑定士を目指してから、ようやく当初の目標であった独立をし、事業が安定したのは43歳のころ。その間に結婚し、家族が増え、すっかり中年になりました。
一方、万事がすべて順調に進んだ場合の「最速パターン」も例としてあげておきます。
段階 | 必要な時間 |
資格取得のための勉強時間 | 1年 |
実務修習(鑑定士として登録するための実務習得期間) | 1年 |
地価公示評価員になるために必要な実務経験 | 3年 |
さらなるサラリーマン鑑定士としての実務経験 | 3年 |
独立し、事業として安定させるまで | 2年 |
合計 | 10年 |
最短でも10年(※)。桃栗三年柿八年といいますが、何事にも結果が出るまでには相応の年月がかかります。
(※)いろんなタイプの不動産鑑定士がいますので、すべてが一律ではありません。あくまで個人的な感想ですので、ご了承ください。人によっては異なる方法もあります。
今思えば、不動産鑑定士の資格は、一つのスタートラインにすぎませんでした。試験に合格することは確かに大きな一歩ではありますが、実はそこからが長い旅の始まり。一人前(ここでは「一人前」を、独立して事業が安定するまでと定義します。)になるまで、地道な旅が続きます。私自身、不動産鑑定士という職業が人生の太い柱になったのは事実ですが、まだまだ道の途中にいて学び続けています。
正直、20代後半でこの道を選んだとき、こんなに時間がかかるとは思いませんでした(そして、こんなにも地味だとも)。しかし、振り返ってみると、不動産鑑定士として生計を立てられるようになった今、当時の決断を褒めてやりたいと感じます。
その経験一つ一つが積み重なって、私をここまで連れてきてくれたのですから。
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