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不動産鑑定士の選び方と留意点

不動産鑑定士の選び方と留意点

不動産鑑定は、資産評価や相続、企業間の取引などにおいて大きな意味を持つため、適切な不動産鑑定士選びが重要です。本記事は、4年前に私が書いた「不動産鑑定士の探し方は?簡単テクニック」という記事の内容を踏まえつつ、新しい切り口を加えた「不動産鑑定士の選び方と留意点」をご紹介します。

不動産鑑定士の探し方は?簡単テクニック

不動産鑑定士は数が少なく、適切な鑑定士を見つけるのは正直かなり難しいです。しかし、鑑定の内容や目的によっては選ぶべき鑑定士の条件も異なります。今回は従来の方法に加え、目的別の視点や新たな探し方を含めてみたいと思います。

1. 不動産鑑定士の基本知識を押さえよう

不動産鑑定士の役割とは?

不動産鑑定士は、土地や建物の「適正価格」を算定し、鑑定評価書として提供する専門家です。評価は売買価格だけでなく、例えば以下のような場面でも利用されます。

  • 相続・贈与税評価のための鑑定評価
  • 企業間取引における資産評価
  • 賃料改定や立退料算定
  • 離婚・財産分与に伴う不動産の鑑定評価

不動産鑑定士が少ない理由

不動産鑑定士試験は非常に難易度が高い国家資格であり、合格率も低いことで知られています(一次試験から二次試験まで含めた総合合格率は4~6%程度)。そのため、全国の登録者数は弁護士や税理士の10分の1程度しかいません。加えて、業務の性質上、案件ごとに調査が必要で、依頼対応には専門知識と経験が求められます。

2. 目的別に最適な不動産鑑定士を選ぶポイント

相続・税務対策のための不動産鑑定

必要な知識・スキル:税務評価の知識、不動産税務関連の経験が豊富な鑑定士

  • 選び方のポイント:税務署からの依頼実績がある、または税理士と提携している不動産鑑定士を選ぶと、評価の連携がスムーズになります。特に「相続税路線価評価」に関する実績があるか確認しましょう。

賃料交渉・立退料交渉に必要な鑑定

必要な知識・スキル:オフィスの賃料増減額の判例知識、借地借家法の理解

  • 選び方のポイント:商業地やオフィスビルの案件経験が豊富な鑑定士を選ぶことが重要です。鑑定結果を基に交渉することが前提となるため、弁護士事務所と連携できる鑑定士だと心強いです。

売買価格の妥当性を判断するための鑑定

必要な知識・スキル:市場分析力、近隣エリアの地価動向に関する知識

  • 選び方のポイント:地価変動の激しい都市部や再開発が進む地域では、最新の動向をキャッチしている地元の鑑定士を選ぶとよいでしょう。

3. 地域密着型鑑定士のメリットと探し方

不動産価格には「地域特性」が大きく影響します。したがって、対象不動産の所在地に詳しい鑑定士を選ぶと、以下のようなメリットがあります。

地域密着型の鑑定士のメリット

  • 現地調査が効率的:短期間で正確なデータ収集が可能
  • 地域ごとの商業圏や交通環境を熟知:市場分析が正確
  • 価格査定の際に土地固有のリスクを適切に考慮できる

探し方のポイント

  • インターネット検索時は「地区名+不動産鑑定士」で探す(例:千葉+不動産鑑定士)
  • Googleマップを活用:所在地近くの鑑定士をリストアップできる
  • 各都道府県の不動産鑑定士協会の会員ページを活用する

4. 新しい鑑定士探しの方法

従来のインターネット検索に加え、新たな方法も試してみるとよいかもしれません。

(1) SNSやWEB検索を活用する

不動産鑑定士や事務所は、SNSを通じて情報発信していることがあります。弊社はSNSを利用していませんが(ホームページのみ)、SNSでなくとも、例えばホームページで鑑定士自身が手がけた事例や、コラムなどにより専門的な見解を公開しているケースもあります。これにより、実績や業務姿勢を確認できます。

(2) 業界セミナーや勉強会への参加

不動産関連のセミナーや勉強会は、不動産鑑定士や専門家と直接つながる良い機会です。また、セミナー講師を務める鑑定士は、その分野で一定の知識を持っている可能性が高いです。

5. 他の士業とのネットワークを活用する

士業同士の紹介は、信頼できる鑑定士を効率よく見つける手段です。

最も関連が深い士業と活用法

  • 税理士:相続や企業税務の案件に強い鑑定士を紹介してもらう
  • 弁護士:賃料増額請求や立退料交渉など法的トラブルの案件で紹介を受ける
  • 土地家屋調査士:土地の境界問題に関連する鑑定案件で提携するケースが多い

紹介を受ける際は、自身の要望を具体的に伝え、専門性や実績に合った鑑定士を紹介してもらうことが重要です。

6. 鑑定士選びで確認すべきポイント

(1) 過去の実績の確認

不動産鑑定士の中には、特定の分野に強い専門家もいます。過去の案件事例を確認し、依頼内容に適しているか見極めましょう。

(2) 対応力やコミュニケーション

鑑定士との相談では、依頼者のニーズをしっかりヒアリングし、わかりやすく説明できるかも重要です。また、連絡のスムーズさや回答の速さもポイントです。

(3) 料金体系の確認

鑑定費用は依頼内容や鑑定対象の規模などによって異なります。見積もり時にどの項目に費用がかかるのか、追加費用が発生するケースはどのような時かを確認しておきましょう。

まとめ

不動産鑑定士選びは、対象不動産の地域特性、依頼内容の目的に合わせて専門性を重視することが重要です。また、ホームページを含めたSNSや業界イベントなど新しい情報収集方法も活用することで、選択肢が広がります。

信頼できる不動産鑑定士との出会いが、不動産の適正評価を確保し、資産価値の最大化につながるため、鑑定士探しは効率よく進め、依頼するタイミングを逃さないことが大切です。ぜひニーズに合った鑑定士を見つけてください。

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