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相続財産の評価における不動産鑑定の留意点

相続財産の評価における不動産鑑定の留意点

過去の記事で「相続財産の評価と不動産鑑定評価」というテーマについて、「時価」という切り口から解説してみました。

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簡単におさらいしておくと、相続財産の評価方法について、相続税法第22条(評価の原則)では「時価主義」によることが規定されていて、この場合の「時価」を求める方法の一つに、不動産鑑定評価を採用するケースがあります、という内容でした。

今回はもう一歩踏み込んで、相続財産の評価における不動産鑑定では、具体的にどのようなポイントに留意すべきかについて解説してみたいと思います。

非常にニッチな分野にはなりますが、ご興味がありましたらどうぞお付き合いください。

相続財産の評価における不動産鑑定の留意点

相続財産の評価で不動産鑑定を採用する場合、具体的に気を付けるポイントが5つあります。

価格時点は相続発生日となる

時価とは相続開始時における財産の客観的な交換価値と解されます。

客観的な交換価値を把握する場合の不動産鑑定評価における価格時点は「相続発生日」、つまり被相続人の死亡日となります。

価格時点は相続税の申告手続きを行う日の時価等ではない点に留意する必要があります。

税務上の評価単位で評価を行う

相続財産の価額は「評価単位ごと」に評価することとされています。

このため、まずは地目の別によって評価単位を設定することとしており、9種類の地目が規定されています。

注意点としては、当該地目は現況地目であり、登記地目や課税地目とは一致しない場合があるという点です。

この場合、評価単位の設定では利用単位(権利)、私道負担部分があれば宅地と道路に区分、相続・遺贈・贈与により取得した土地毎に区分、単独で利用できない地積や形状で区分しない等に留意する必要があります。

評価単位毎の地積の区分

相続財産の土地の評価は評価単位毎に行うため、地積も評価単位毎に設定する必要があります。

一画地の宅地は必ずしも一筆の宅地からなるとは限らず、二筆以上の宅地からなる場合もあるほか、一筆の宅地が二画地以上の宅地として利用されている場合もあるため、登記地積や台帳地積が評価対象地の地積とならない場合があります。

また、一筆の土地の中に分筆されていない私道部分が含まれる場合や、複数の借地権が存在する場合もあるため、留意が必要です。

相続財産の土地上に存する権利

相続財産の土地の評価においては、所有者が自用地として使っている場合(所有権)は土地そのものの評価額になりますが、所有権以外の権利も存在することに留意します。

例えば建物所有を目的とする土地(宅地)の賃貸借は「借地権」、建物所有を目的としない土地(雑種地)の賃貸借は「借地権」又は「地上権」となります。

したがって、土地賃貸借契約書、借地権図面、土地の無償返還に関する届出書等により、権利の有無、範囲、面積等の確認が必要な点に留意が必要です。

相続に係る資料

相続発生日(価格時点)の確認のためには、依頼者から次のような資料を受領する必要があります。

●相続発生年月日に関する資料
●相続関係の確認のために戸籍・除籍に関する資料
●土地を分割して所得する場合はその内容の確認のために受贈者・相続人の概要に関する資料


その他、所有不動産の全体像を把握するため、名寄帳は必ず入手します。

また、課税明細書では把握できない私道持分、未登記建物、登記されていない利用権等の有無を依頼者へヒアリングし、相続財産に漏れがないよう留意する必要があります。

まとめ

いかがだったでしょうか?

相続財産の鑑定評価では、通常の不動産鑑定評価とは異なる独自の調査項目があることがおわかりいただけたかと思います。

その他、不動産関連の知識が非常に多く必要になるほか、規模の大きな画地、傾斜地、無道路地などの特殊な事案の場合には、財産評価基本通達で算定した価額と時価が乖離する場合もあります。

その他、不動産の相場観も必要になりますので、まずは不動産鑑定士にご相談されてみることをおすすめします。

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