東京カンテイがまとめた2024年10月のデータによると、東京23区の新築小規模戸建て住宅の平均売り出し価格は前月比3.2%減の7,374万円となり、2カ月連続の下落となりました。
これは2020年8月以降、3年半ぶりの連続下落です。売り出し価格はこれまで上昇基調が続いていましたが、8月の7,783万円をピークに一転して下落傾向にあります。
月 | 平均売り出し価格(万円) | 前月比(%) |
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8月 | 7,783 | – |
9月 | 7,610 | -2.2 |
10月 | 7,374 | -3.2 |
主観を交えて
戸建住宅価格の下落は不動産市場の調整期の兆しと考えられます。特に東京23区のような都市部では、住宅需要と価格の動向は密接に関連しています。価格の下落が続く理由としては、以下の点が挙げられます。
1. 需要の減少
長期間の価格上昇は、住宅購入を検討する層にとって負担となり、特に新築戸建て市場では「買い控え」の傾向が顕著になっています。これまでの価格高騰により、特に若年層や世帯年収が中程度の層が、無理して購入するのではなく賃貸に留まるか、中古物件へシフトするケースが増えています。加えて、東京23区のような都市部では高価格帯の物件が増加した結果、購入対象として手が届きにくくなったことで、需要が減少していると考えられます。
2. 金利の上昇
金利の上昇も重要な要因の一つです。日銀の利上げに伴い、変動金利型住宅ローンの返済額が増加傾向にあり、住宅購入のハードルが上がっています。特に、ローンの利用が多い若年層や初めて住宅を購入する層にとって、金利上昇は大きな負担となり、結果として購買意欲を下げる要因となっています。加えて、住宅ローン金利が上昇すると、将来の返済負担を懸念する層が多くなり、需要減少に拍車がかかります。
3. 供給過剰
都市部では新築住宅の開発が続いているため、一定水準以上の供給が見られます。供給過剰になると、売れ残り物件が増加し、売り手は価格を引き下げてでも売却を目指すようになります。東京23区のような需要が比較的高いエリアでも、供給が需要を上回る局面では価格調整が生じやすくなります。さらに、都心部での高層マンション建設の増加も、戸建て需要に対する競争要因となり、価格下落に寄与していると考えられます。
これらの要因が複合的に影響し、価格の下落と不動産市場の調整期が進んでいると考えられます。
東京23区の新築戸建不動産市場は、これまでの上昇基調から一転して調整期に入っており、今後の動向を見極めることが重要な時期です。需要減少や金利上昇、供給過剰といった複合的な要因が絡み合い、価格の下落圧力が増している現状は、都市部での住宅購入に慎重な姿勢が求められることを示唆しています。
一方で、この調整は必ずしも長期的な不動産価値の低下を意味するものではなく、健全な市場成長に向けた正常なプロセスとも言えます。不動産価格が落ち着きを見せ、同時に実質賃金が上昇し、手頃な価格帯が増えれば、これまで価格上昇によって購入を控えていた層が市場に戻る可能性も考えられます。