COLUMN コラム

不動産鑑定とシステム開発

不動産鑑定とシステム開発

もう10数年前になりますが、私は不動産鑑定士になる以前はシステムエンジニアで、主に昇降機(エレベータやエスカレーター)を国内外に販売する営業担当者の負担を軽減するための基幹営業情報システムを開発していました。

不動産鑑定とシステム開発は、まったく異なる業界のように思われるかもしれませんが、実は関連する部分も見られます。不動産鑑定は物件の評価や面積、間口、道路幅員の計測など、多くのデータを収集・分析する作業であり、システム開発にも通じる部分があります。

まず、不動産の評価には、土地や建物の面積、状態、周辺環境、市場動向など、さまざまな要素が関わってきます。これらのデータを正確かつ迅速に収集し、分析し、最終的な鑑定評価額に結びつけていくことが不動産鑑定の重要なポイントです。

これらのデータ収集・分析で情報システムを利用することで、不動産鑑定の作業の効率化や正確性の向上が期待できます。例えば、土地や建物の情報を収集する際には、オンラインデータベースやGIS(地理情報システム)を活用することができますし、画像認識技術を用いて建物の構造や設備などを自動的に評価することもできます。

さらに、システムを活用することで、不動産鑑定の情報の共有や管理がしやすくなります。例えば大手鑑定業者で複数の鑑定士が同時に不動産の評価を行う場合には、基幹システムを介して情報を共有することが技術的には可能ですし、過去の鑑定結果をシステム上にデータベースとして蓄積することで、将来の鑑定作業に役立てることもできます。

また、不動産業界の課題として、情報が分割されており入手経路が多岐にわたることがありますが(例えば固定資産税情報、役所情報、登記情報、売買・リフォーム情報など)、これらがブロックチェーン技術(※)を用いて一元管理ができるようになる未来も訪れるかもしれません。

(※)ブロックチェーンは分散型データベースのことで、簡単に言うと、改ざんが困難で、みんなが同じ情報を持っているデータベースのことです。

今後も、不動産鑑定とシステム開発は密接に関わっていくと考えられます。これらの技術などを活用することで、不動産鑑定の効率性や正確性が向上し、情報の共有や管理も容易になり、鑑定士はより多くの時間を、より重要な分析や鑑定に注力することができるようになります。

しかしその一方で、システムやブロックチェーン技術を導入するためには、不動産鑑定士自身がIT技術(データ解析や機械学習など)に精通し、適切に活用することが必要です。

私自身もまだまだ勉強が必要であり、自戒が多分に含まれますが、今後ますます進化するIT技術を踏まえつつ、人間の専門性や感性を活かし、不動産鑑定の質の向上に取り組むことが求められます。

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