千葉県幕張に位置するイオン本社。その周囲には旗艦店もあり、新駅も開設されるなど、地域の発展に大きく寄与しています。私自身も、毎週のように夕食の買い出しのためイオンに通っており、大人になってからはイオンに育てられたと言っても過言ではありません。
そんなイオンが、新規店舗の開発を控え、既存施設の改装に注力するという方針を発表しました。その背景には、コロナ禍によるショッピングモールの滞在時間の減少や売上の減少といった現実がありますが、さらに重要な要因として建築費の高騰と建築業界の人材不足が挙げられます。
これらは建築業界全体に影響を及ぼす問題であり、イオンの戦略転換を読み解く重要な視点となっています。
建築資材の価格上昇
近年、建築資材の価格は世界的に上昇しています。これは、鉄鋼や木材、セメントなどの主要資材の供給不足や物流コストの増加が原因です。
例えば、コロナ禍による生産停止や供給チェーンの混乱により、これらの資材が十分に供給されない状況が続いています。その結果、資材の価格が急騰し、新規建築プロジェクトのコストが大幅に増加しています。
建築業界の人材不足
さらに深刻なのが建築業界の人材不足です。今に始まったことではありませんが、日本では少子高齢化が進行しており、建築業界もその影響を受けています。
若年層の減少により、現場で働く職人や技術者の確保が困難な状況が慢性的に続いています。また、建築業界は労働環境が厳しいことから、若者の就職先としての魅力が低く、結果的に人材が不足しています。
これらは、建築プロジェクトの遅延やコスト増加の要因となり、新規店舗開発のリスクを高めています。
建築業界の2024年問題
そして、建築業界が直面する「2024年問題」はさらにこの状況を悪化させる要因となります。
2024年問題とは、建設業法の改正により、長時間労働の規制が強化される問題です。これにより、従来のような過密スケジュールでのプロジェクト進行が困難になり、労働時間の制約が一層厳しくなります。
結果として、建築業界全体の生産性が低下し、コストの上昇が避けられなくなります。
イオンの戦略転換の感想
イオンの戦略転換は極めて慎重かつ合理的な判断だと感じます。新規店舗の開発は高額な初期投資が必要ですが、既存施設の改装であれば、比較的低コストで魅力を維持・向上させることができます。
また、2024年問題に向けた備えとしても有効です。人口減少や少子高齢化といった社会的な変動に対応するため、慎重な経営判断が求められる時期にあるからです。このような背景を踏まえると、イオンの戦略転換は理にかなっています。
慎重な判断が求められる中、イオンがどのように既存施設を改装し、新たな価値を提供していくのか注目していきたいと思います。