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株高と不動産:経済の風向きから

株高と不動産:経済の風向きから

不動産鑑定士の仕事は、不動産市場の波を把握し、それぞれの物件が持つ本当の価値を見つけることです。その過程で、私達は不動産の価格だけでなく、金融市場や経済状況、社会の動きといった多くの要素に目を向けています。

昨今は日経平均株価が32,000円を超え株高が注目されていますので、今日はマクロ的な視野から見えてくる「株高と不動産」について考えてみたいと思います。

まず、我々が生活する社会は複雑に絡み合っています。私たちの生活は、雇用状況、物価、株価、そして不動産価格など、多くの経済指標に影響を受けています。それらは互いに深く関連し、一つが動けば他の要素も必ず影響を受けます。

その中で、特に注目すべきなのが株価と不動産価格の関係性です。なぜなら、これらは私たちの資産の大部分を占めるからです。株価は企業の活動や経済の健康状態を示し、不動産価格は生活基盤であると同時に投資対象でもあります。そのため、これら二つの動きは私たちの生活や経済全体に大きな影響を与えます。

それでは、この重要な2つの指標がどのように連動し、どのように私たちの生活に影響を及ぼすのでしょうか。まずは現在の株高の理由とその背後にある経済状況を見ていきましょう。

現在の株高の理由

まず、現在の株高の理由について解説します。

コロナが明け経済活動が全面的に再開され、企業の収益が回復し始めています。さらに、各国の中央銀行が行った大規模な金融緩和策の影響が続いており、資金が市場に溢れている状況です。しかし、現在、世界各国では金利の引き上げが始まっており、その動向に注目が集まっています。

その中で、日本だけが依然として低金利を維持しているという状況です。この日本の低金利環境は、投資家にとって借り入れコストを抑える一方、より高いリターンを求めてリスク資産への投資を促しています。これが、外国投資家による日本株への投資を増やし、結果として株価を押し上げています。

そして、金利が低ければ借り入れが安くなるため、企業は新たな事業や投資に取り組みやすくなります。これが企業の収益を上げ、結果として株価を押し上げる一因となっています。

ただし、世界的な金利上昇の流れを鑑みると、今後の金利動向とその影響に注意を払い続ける必要があります。

株高が不動産に与える影響

では、この株高が不動産にどのような影響を与えるのでしょうか。

まず一つ目として、株高は個人投資家の購買意欲を高めます。資産価値の上昇により「富の効果」が生じ、消費や投資への意欲が高まるのです。また、低金利は不動産の購入や投資を手軽にします。この結果、不動産への投資も増加します。

二つ目として、企業の収益増加が不動産価格にも反映されます。企業の収益が上がれば、事業拡大のための不動産投資や、従業員のための住宅提供など、不動産への需要が増える傾向にあります。

さらに、金融緩和や外国投資家の活発な投資、そして低金利により、利回りの高い投資先を求めて不動産市場への投資が増えるという面もあります。これらが結果として不動産価格を押し上げ、不動産市場も活性化します。

まとめ

現在の株高は企業の収益回復、金融緩和、外国投資家による日本株への投資が主な原因となっています。これらの要素はそれぞれ相互に関連し合いながら、株価の上昇を牽引しています。

また、この株高が不動産市場に影響を及ぼしています。個人投資家の購買意欲の向上、企業の不動産需要の増加、そして投資行動の活発化が、株高と不動産価格上昇を同時に推進しています。

さらに、株高や低金利がもたらす富の効果と投資意欲の高まりは、不動産市場における需要を引き上げ、不動産価格を押し上げる要因となります。この結果、不動産市場は活性化し、価格も上昇傾向にあります。

株価の上下や不動産の価値変動は、思っている以上に私たちの生活に密接に関わっています。これらは、経済の流れを示す風見鶏のようなもので、私たちの資産状況や未来のライフプランを大いに左右します。確かに、これらの動きを理解するのは一筋縄ではいきませんが、その理解を深め、適切に対応することで、ある面ではより良い未来を手繰り寄せることにつながります。

以上が、私が不動産鑑定士として見てきた「株高と不動産」の関係性についての説明です。資産運用や生活設計の一助となれば幸いです。

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