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基準地価上昇:地価の回復が地方に広がる

基準地価上昇:地価の回復が地方に広がる

日本の地方都市の地価が回復しつつあることが、最近公表された基準地価の動向から見て取れます。全国の不動産鑑定士が調査を担当している基準地価(令和5年)によると、沖縄県を含む85市町村では、バブル期の1990年を上回る地価を記録しています。

何が起こっているのでしょうか?

例えば、一部の地域では、地方自治体が積極的に取り組んでいる子育て支援策や移住促進策が功を奏し、人々が流入しています。また、地方都市で新規の工場が立地されることに伴い、ファミリー層にアピールするための環境整備に力を入れ、結果として地価上昇につながっている市町村もあります。

しかし、地価上昇がもたらす影響は、肯定的なものだけではありません。単なる経済的な回復以上のものを示唆しています。

特に、新しく地域に移り住む家族や、新たなビジネスを始める事業者にとって、不動産価格の上昇は大きな負担となります。家を購入するコストが増えれば、家計に与える影響は小さくありません。さらに、昨今の長期金利の上昇は住宅ローンの返済額を増やし、賃金が上がらない中での物価の上昇は家計を圧迫しています。また、事業者が新たにオフィスや店舗を構える際の初期投資も増大します。

地方都市の地価上昇は一見するとポジティブな現象のように思われがちですが、その背後には日本における中間層の家計への負担増や経済状況の変動など、複雑な要因が絡み合っています。一般的に、経済成長が進むと地価上昇が起こりやすくなりますが、これが必ずしも全ての市民の生活水準向上に直結するわけではありません。

特に中間層にとって、地価の上昇は住宅取得の障壁となることが多いです。都市部特有の地価高騰は、中間層が郊外へと住まいを求める結果を招き、それに伴う通勤時間の増加など、新たな生活上のストレスを生むことがあります。

また、地価上昇は遅れて賃料の上昇にもつながるため、特に中間層の家計においては、家賃が支出の大きな部分を占めるため、余裕のある生活を送ることがより困難になります。さらに、賃金の伸びが地価上昇や物価上昇に追いついていない現代では、実質的な所得は減少し、生活をより厳しいものにしています。

テレビや新聞で見る地価上昇のニュース。それを単一の現象として捉えるのではなく、より広い社会経済的文脈の中で考察する必要がある時期に来ています。

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