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副業とキャリアの転機

副業とキャリアの転機

20代の頃、エンジニアとしてフルタイムで働いていた。

当時(2000年代初頭)は残業が当たり前の時代で、勤務時間が非常に長かった。また、会社の先輩がとても厳しく、仕事に対するプレッシャーが大きかった。今でこそ言えるが当時の自分にとって、その先輩の厳しさはかなりの負担で、日々の業務に追われる中で、次第に「会社を辞めたい」という気持ちが膨らんでいった。自分自身の将来に対する不安や、エンジニアとしてのキャリアに疑問を感じる時期でもあった。

そんな状況から逃れたくて、週末に何か別のことを始めて気分転換を図ろうと思い立ったのが、副業だった。もともと技術にはそれなりに自信があったし、何か自分の力で新しい挑戦をしたいという気持ちもあった。ミクシィで知り合ったエンジニア仲間(以下、彼と言う。)と話しているうちに、ホームページ作成の仕事を始めることになった。物販を扱う小さな会社向けに、商品をオンラインで販売するためのサイトを作るという仕事だった。

特に思い出深いのは、落語のCDを販売するサイトの作成だった。ちょうどドラマ「タイガー&ドラゴン」が流行しており、その人気にあやかって商品がよく売れた。当時は、ネットショップやSEOなんてまだ珍しい存在だったし、SEO対策やサイトの構成に気を配り、売上管理まで手がけることで、週末の副業が少しずつ成果を上げていった。

正直に言えば、この副業を始めた理由は、会社の厳しい環境から逃げたかったからだった。しかし、週末に副業に取り組むことで、精神的に少しずつバランスが取れるようになり、会社でのストレスも少し和らいだ気がする。もちろん、副業がそれなりにうまくいったことで、金銭的にも少し余裕が生まれ、「いつでも会社を辞められる」と思えたことからそれが自信に繋がったことも大きい(実際には副業だけで食べて行ける程稼げているわけではなかったが)。物販の売上の10%を報酬として得て、それを彼と折半していたが、東京で一人暮らしをしていた私にとって、思っていた以上にそれが助けになった。

当時は副業が一般的ではなく、周りには副業をしている人なんてほとんどいなかったが、自分としてはそれでも楽しさを感じた。また、彼と一緒に不動産投資関連のセミナーも開催したりと、ただの技術職に留まらず、副業にどんどん踏み込んでいった。

彼が独立して不動産投資サイトを運営する新会社を立ち上げた時のことは、今でもよく覚えている。それは私が28歳の時だった。彼は勝手に私の名刺まで作っていて、その名刺を渡されながら会社に誘われた。その時、正直少し心が揺れた。ストックオプションの話もあり、一緒に会社を始めていれば、違ったキャリアを歩んでいたかもしれない。しかし、その時すでに私は不動産鑑定士の資格取得に向けて動き出していて、不動産鑑定士になることを決意していたため、彼の誘いを断ることにした。

結果として彼の会社は、マザーズを経て東証一部(現プライム市場)に上場するという成功を収めた。正直、もし一緒にやっていたらどうなっていただろうかと考えたこともある。でも今、私は不動産鑑定士としての道を選んだことを、全く後悔していない。コツコツとした地道な不動産鑑定士の仕事は自分に合っているし、自分が本当にやりたいことだと感じているからだ。今ではその選択が自分の成長や、後の大切な人に出会うための大きな転機だったと思える。

エンジニアとして働きながら副業をしていた時代、不動産鑑定士を目指すために独立を断った決断、そして現在の不動産鑑定士としてのキャリア――振り返ってみると、どれも自分の人生を形成する重要なピースだった。

インターンで学んだ対人スキル

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