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不動産証券化の仕組みをわかりやすく解説

不動産証券化の仕組みをわかりやすく解説

「不動産証券化っていったい何?」

っという方は、けっこういらっしゃるのではないでしょうか。

例えばJ-REITは不動産証券化の手法の一つですが、インターネットで手軽に投資できることもあって、その仕組みを理解しないまま投資されている方も少なくないと思います。

不動産証券化は専門書で勉強するとファイナンスの知識も登場するので、一見難しく感じますが、仕組みは意外なほど簡単です。

本記事では、初心者の方に向けて不動産証券化の仕組みを分かりやすく解説しました。

証券化の仕組みを実例で解説

証券化の仕組みを実例で解説
では、さっそく不動産証券化の仕組みを実例を使って解説していきます。

例えば、あなたが1億円のオフィスビルを所有していて、そのビルをテナントに貸すことで、年間500万円の賃料収入があるとします。

当然ですが、このままではいつまで経っても証券化できません。

証券化だけを目的とした会社を作る

そこで、まずは「証券化することだけを目的とした会社」を作ります。
これがいわゆる特別目的会社(SPV)という、実体のない「器」です。

そして、あなたがこの会社にがオフィスビルを1億円で売却します。

「出来たばかりの会社に1億円なんて払えないんじゃない....?」

そのとおりです。できたばかりの会社にはお金がないので、会社は1億円分の証券を発行します。
証券には株式や債券など、さまざまな形式がありますが、不動産証券化の場合、厳密には「投資口」といいます。

その証券を投資家に売却することで1億円を集め、集めた1億円を会社があなたに差し出します。

これで無事、あなたは1億円を手に入れました。

なぜ投資家はただの”器”に投資するのか?

では、投資家はどうして、何の実績もない”ただの器”にお金を出すのでしょうか?

答えは「オフィスビルが生み出す年間500万円の賃料に期待しているから」です。

例えば、収益をあげている会社が株式や債券を発行すれば、株式ならば配当がありますし、債権なら利子がもらえます。
不動産の場合、1億円の価値があり500万円の賃料収入がある収益ビルなので、投資家としても利回り5%の利益を期待できます(賃料500万円÷元本1億円=利回り5%)。

現代は銀行に預けていても低金利でお金が増えないため、投資家は「不動産に投資して高いリターンを得たい」と思うインセンティブが働きます。

1人で1億円の不動産は買えなくても、一口10万円に小口化されている証券化不動産であれば、購入のハードルがぐっと下がります。

資金調達にはデットとエクイティがある

会社があなたから1億円のオフィスビルを購入する際の資金は、デット(負債)エクイティ(自己資金)で集めます。

デットは銀行からの借入のこと。エクイティは上記のとおり、投資家から集めた資金のことです。

デットを利用することで、エクイティ以上の不動産の取得が可能になり、よりレバレッジを効かせることができます。

実際に会社を運営しているのはアセットマネージャー

「できたばかりの”器”が、どうやって不動産やお金を運用しているの?」

おっしゃるとおり、もちろん”器”には、不動産や金融に関するノウハウがありませんし、そもそも、ただの器なので人がいません。

このため、現実的に会社を動かしているのは、不動産や金融の専門家であるアセットマネージャー(AM)です。

その他、不動産証券化の関係者は多岐にわたりますが、基本的にはAMが中心となって、不動産を運用しています。

不動産の所有者がわざわざ証券化する理由

不動産の所有者がわざわざ証券化する理由
資金調達が目的ならば、わざわざ証券化しなくても、ただ売却すればいいのでは?

という質問について回答しておきます。仮に証券化しなかった場合、1億円のビルがすぐに売れるとは限りません。

もし不動産の価格下落局面で物件を持ち続けてる場合、年々価格が下落していきます。
このような場合、あなたはビルを早く売りたいにもかかわらず、買った翌年には価格が下がってしまうかもしれないので、売買が成立しにくくなります。

一方、このビルには年間500万円の賃料収入があり、5%の利回りを求めて投資したい人はたくさんいる、という状況ならば、あなたは「1人に売却するよりも証券化して1億円集めた方が早いな」と考えるはずです。

こういうケースに一口10万円に小口化して証券化し、投資家を集めているわけです。

証券化しなければ、今すぐに1億円で売れるかどうか分かりませんが、証券化(小口化)することで、あなたは今すぐに1億円を手にでき、投資家は収益不動産に投資できます。
不動産証券化は「売り手と買い手の双方にとっても有利な形で売却できる」というメリットがあります。

また、単純に売却してしまうと所有権は第3者に移ってしまいますが、証券化にすると、あなたも会社に一部出資できるので、引き続き物件運営に関与することができます(※)。

(※)会計上のオフバランスについては、単純化のため考慮外としています。

不動産証券化は不動産と金融をつなげている

不動産証券化は不動産と金融をつなげている
以上が不動産証券化の仕組みです。意外と簡単ですよね。

証券化対象不動産と不動産鑑定士との関わりを付け加えると、不動産の取得時や売却時に不動産鑑定士が登場します。
説得力が高い不動産鑑定評価書を取得することで、「市場価格で不動産を取得・売却してるから、投資しても大丈夫ですよ」と、投資家に対して説明できるというわけです。

話を戻しまして、今回はJ-REITを基にSPVという器を使った例を解説しましたが、SPVを使わずに、事業者自身が不動産を購入するパターンが「不動産特定共同事業法にもとづくクラウドファンディング」です。

投資家は不動産証券化を通じて、小口化された不動産を”容易に”所得できますので、金融市場から不動産市場にお金が流れていきます。

不動産証券化は、眠っているお金を不動産市場に呼び込む、という役割も担っているのです。

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