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建築費高騰の現状と今後の展望

建築費高騰の現状と今後の展望

昨今、建築費の上昇が不動産市場に大きな影響を与えています。この問題は私のように不動産業界に関わる者にとっても、非常に重大な関心事です。この記事では、建築費の上昇理由や過去の推移、そして今後の見通しを主観を交えながら解説したいと思います。

建築費上昇の理由

まず、建築費が上昇している背景には、いくつかの主要な要因があります。

  1. 【資材費の高騰】
    鉄鋼や木材、コンクリートなど、建設に必要な資材の価格が近年大幅に上昇しています。建設資材(平均)の価格(東京)は、2021年1月のコロナ禍と比較してわずか40か月間で31%も上昇しており(建設物価調査会総合研究所資料より)、私が実際に賃貸アパート建設プロジェクトを進めている中でも、この影響は日々感じています。特に、ウッドショックやロシア・ウクライナの紛争がサプライチェーンに悪影響を与え、物流コストも高騰しています。そして円安の影響も受けています。これによって、必要な建材が思うように手に入らず、コストが予想を超えることがしばしばあります。
  2. 【人件費の上昇】
    日本国内の建設労働者の不足も深刻です。現場の作業員を確保するだけでなく、技術を持つ職人を見つけるのが特に難しくなっています。公共工事設計労務単価は過去3年間で16%も上昇しています(建築コスト管理システム研究所調べ)。さらに、2024年度には前年度比5%を十分に上回る賃上げが要請されています(ロイター 春闘賃上率5.1%)。少子高齢化が進む中で、労働力の減少が建設業界全体に影響を与え、人件費が上昇しているのは避けられません。
  3. 【環境規制の強化】
    近年、建築においても環境への配慮が求められています。省エネルギー基準やCO2排出量削減に対応するため、エコな建材や新しい技術を導入する必要があり、これも建築費を押し上げる一因となっています。この流れは長期的に見ると正しい方向性だと感じますが、短期的には確かにコストの負担が増えているのも事実です。

過去の建築費の推移

過去の建築費の動きを振り返ると、リーマンショック後の一時的な低迷期を経て、2013年頃からゆるやかな上昇傾向にありました。私が業界に携わる中でも、東京オリンピックに向けた建設需要の増加によって、資材や人件費が急上昇したのを目の当たりにしました。

オリンピック後は一時的に落ち着くかと思われましたが、コロナ禍が再び資材供給の混乱を引き起こし、2021年以降に顕著な上昇が見られるようになり、一般社団法人日本建設業連合会の試算によると、この40か月で全建設コスト(平均)は20~23%上昇したとされています。これは、2023年においては注文住宅の建築費が初めて4000万円を突破するなど(住団連調査)、住宅市場にも影響を及ぼしています。

特にここ数年のコスト上昇は予想を上回るもので、不動産投資を考える際にも、建築費が収支計画に大きく影響を与えるようになりました。

今後の建築費の動向

今後、建築費がどのように推移するかを予測するのは難しいですが、いくつかのポイントが影響すると考えられます。

  1. 【資材価格の不透明さ】
    世界的な情勢やエネルギー価格次第では、さらに資材費が上がる可能性もあります。逆に、技術革新が進めば、リサイクル資材の活用や効率的な生産手法が導入され、コストが抑えられるかもしれません。しかし、私個人の見解では、短期的にはまだ資材価格の高止まりが続くのではないかと感じています。
  2. 【労働力不足とその対策】
    建設現場での人材不足は今後さらに深刻化すると思われます。ロボティクスや自動化技術の導入が期待されますが、すぐに全てが解決するわけではなく、しばらくは人件費の上昇が続くでしょう。この点は、効率化とコスト削減をどのように進めるかが今後の大きな課題です。
  3. 【持続可能な建築への移行】
    環境規制の強化に伴い、エコ建材や省エネ技術の導入が進むでしょう。長い目で見ればこの動向は歓迎されますが、短期的にはコストがかさむため、投資判断が難しくなります。一方で、長期的にはエネルギー効率の良い建物が標準化され、建物の維持コストが削減されることで、経済的にもメリットが得られると感じています。

結論

建築費の上昇は複数の要因によって引き起こされており、今後もしばらく続くと見込まれます。資材価格の変動や労働力不足、環境規制の強化が主な要因です。しかし、技術革新や持続可能な建築へのシフトが進めば、長期的には新しいコスト構造が生まれ、安定する可能性もあります。私自身もこれらの動向を注視しながら、今後の市場分析にどのように活かしていくのかを慎重に考えています。

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