COLUMN コラム

家賃の歴史的な上昇が示す不動産市場の変化

家賃の歴史的な上昇が示す不動産市場の変化

昨日の日本経済新聞で、東京都23区における家賃が30年ぶりの上昇幅を記録したというニュースがありました。この現象を分析すると、日本の不動産市場が大きな転換点を迎えつつあることが見えてきます。

家賃上昇の背景

家賃上昇の要因として考えられるのは以下の点です。

  1. 【日銀の利上げ】
    金融緩和政策からの転換により、住宅ローンや不動産投資の資金調達コストが増加。これが賃貸物件オーナーに賃料の見直し(上昇)を促しています。
  2. 【需要と供給の不均衡】
    需要の高いエリアでは物件の供給が不足しており、空室が出ると賃料が引き上げられる傾向があります。特に駅近や再開発が進む地域でこの動きが顕著です。
  3. 【物価全体の上昇】
    エネルギー価格や輸入原材料の高騰に伴い、生活コストが上昇しており、不動産管理費や修繕費も増大しています。この物価上昇も賃料に影響を与えています。

こうした要因が重なり、弊社でも「賃料の増額改定を検討しているんだけど…」というご相談が増えています。

今後の影響

以下に、今後の家賃上昇がもたらす影響を整理します。

項目内容
賃貸市場家賃負担が増えることで、低所得層の住居選択肢が狭まる可能性があります。
不動産投資賃料収入の増加により、不動産投資が再び注目を集める一方、利上げの影響で収益率は低くなるため、物件購入の際は慎重に計算する必要があります。
都市開発高賃料が進む地域ではさらなる高級化が進行し、地域格差が広がる懸念があります。
家賃上昇がもたらす影響

鑑定士としての見解

一般的に、賃料の上昇は、地価の上昇から遅れて発生します。不動産鑑定士として感じるのは、こうした変化が一過性ではなく、長期的な市場動向を示している可能性がある点です。特に、人口減少時代にあっても「価値のある場所」には需要が集中する傾向があり、これは今後も続くでしょう。このような環境では、物件の立地や管理状態が以前にも増して重要になります。

たとえば、新築マンションのように賃料が高めに設定される物件がある一方、築年数が古い物件でもリノベーションを施し、付加価値を高めて賃料を引き上げる例も見られます。このような動きは、家賃上昇が「物件そのものの価値向上」を促すというプラス面もあることを示唆しています。

おわりに

家賃の上昇は、借り手には負担を強いるものの、不動産市場全体の活性化につながる面もあります。現代のような利上げ、物価上昇、賃料上昇の時代にあっても、オーナーと借り手双方が満足するようなバランスの取れた市場を目指すことが重要であると感じます。

弊社では、賃貸用共同住宅の鑑定評価のご依頼をいただくことも多くあります。市場動向をしっかりと把握し、正確で公正な鑑定を通じて、不動産が単なる「商品」ではなく、「生活の場」としての価値を高める一助となりたいと思っています。

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