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単身向け家賃11万円超え

単身向け家賃11万円超え

東京23区の単身向け賃貸マンションの平均募集家賃が、2026年4月に11万2,585円となり、過去最高を更新したそうです(アットホーム調べ)。前年同月比では12.6%の上昇。

都心に住み続けるための入場料が、だいぶ上がってきました。単身向けで11万円超えです。私が初めてワンルームマンションに住んだのは、18歳で京都に出たときでした。家賃はたしか4万3千円。その後、20代で目黒のワンルームに住んでいた時期もありますが、共益費込みで6万8千円でした。

もちろん、時代も違いますし、場所も物件の築年数も設備も違います。単純に比べられる話ではありません。それでも、貧乏学生時代を経験した地方出身の感覚が少し残っている私からすると、「ワンルームで11万円ですか……」と、つい声が出そうになります。

もちろん、東京23区です。需要は強いですし、単身世帯も多い。建築費、土地価格、金利、管理費、修繕費も上がっています。「そりゃ、上げたくもなりますよね」という感覚は、正直あります。家賃が上がる理由は、鑑定士の目で見ても十分です。

ただ、少し引いて見ると、これは「都心の賃貸はまだまだ強いですね」で終わる話でもない気がします。

家賃上昇の裏側にあるもの

今回の家賃上昇を、かなりざっくり整理すると、次のようになります。

要因家賃への影響
建築費の上昇新築物件の採算ラインが上がる
土地価格の上昇取得コストが家賃に反映されやすい
金利上昇借入負担が重くなる
単身需要の強さ空室リスクが下がり、強気の募集がしやすい
生活利便性への集中駅近・都心部に需要が偏る

貸す側から見れば、家賃を上げなければ採算が合いにくい。借りる側から見れば、家賃が上がると生活が苦しくなる。つまり、家賃上昇は市場の強さである一方、社会全体で見ると、少し息苦しさも感じる数字です。

「都心に住む価値」とは

これまで都心に住む最大のメリットは、やはり時間でした。

職場に近い。
電車にすぐ乗れる。
終電を気にしなくてよい。
移動時間を減らせる。

都心家賃の高さは、ある意味で「時間を買う価格」だったと思います。ただ、家賃があまりに高くなると、今後、自動運転や移動サービスが普及してくると、この前提が少し変わる可能性があるかもしれません。

これまでの都心居住の価値今後変わる可能性
通勤時間を短くできる移動中に仕事・休憩がしやすくなる
駅近が圧倒的に有利駅距離の不利がやや薄まる
終電が生活を制約する夜間移動の自由度が増す
都心に近いほど便利郊外でも移動負担が軽くなる

移動中に仕事ができる、休める、場合によっては寝られるとなれば、駅近や都心近接の価値も今とは違った見え方になります。

もちろん、自動運転が明日から一気に普及するわけではありません。法制度、道路環境、安全性、コストの問題もあります。ただ、10年、20年という単位で見れば、「多少遠くても快適に移動できる場所」の評価が高まる可能性はあります。「都心に近いから高い」という価値観が、少しずつ揺らぐかも。

特に単身者の場合、働き方も変わっています。在宅勤務、フレックス勤務、副業、地方移住、二拠点生活など、住む場所の選び方は以前より多様になっています。

そう考えると、都心の家賃上昇は強さの象徴である一方で、借りる側に「本当にここまで払って都心に住む必要があるのか」と考えさせるきっかけにもなりそうです。

募集家賃と暮らしの感覚のズレ

ここで、募集家賃と成約家賃、そして継続家賃を分けて整理しておきます。

種類内容
募集家賃貸主が募集時に提示する家賃
成約家賃実際に契約が成立した家賃
継続家賃既に入居している方の家賃

ニュースで出てくるのは、多くの場合、募集家賃です。市場の勢いを見るうえでは重要ですが、これをそのまま既存入居者の値上げに結びつけるのは、少し乱暴だと思います。

募集家賃が上がったからといって、既存の入居者さんに同じテンションで値上げできるかというと、そこは別の話です。大家さんが「相場が上がっていますので」と言うのは簡単ですが、言われる側からすれば「うちの給料も相場連動で上げといてください」と言いたくなるところです。

家賃は、収益不動産の数字であると同時に、誰かの毎月の生活費です。その家賃に見合う管理、設備、安心感、そして納得感があるか。これからは、そこがより厳しく見られる時代になると思います。

千葉市で運用していて感じること

弊社でも、千葉市で単身者向け賃貸マンションを開発し、運用しています。建築費も金利も上がっていますので、貸主側としては、家賃上昇のニュースにはどうしても目が行きます。「うちも少し見直した方がいいのかな」と考えないわけではありません。

ただ、現時点では家賃は据え置きとしています。東京23区の強い数字をそのまま千葉市に当てはめるのは違いますし、入居者さんに長く住んでいただくことも、賃貸経営では大事だと感じています。短期的に家賃を上げるより、穏やかに住んでもらい、安定して運用できる方が、結果的に良い場合もあります。

これはきれいごとではなく、実務上の感覚です。空室が出れば募集費用もかかりますし、原状回復もあります。
家賃を上げた分が、必ず手元に残るとは限りません。

「都心か郊外か」ではなく「納得できるか」

今後、家賃を上げられる物件と、上げると選ばれなくなる物件は、かなり分かれていくと思います。

選ばれやすい物件厳しくなりやすい物件
駅に近い駅から遠い
防犯性が高い共用部が荒れている
ネット環境が良い設備が古い
管理状態が良い修繕が後回し
家賃に納得感がある価格だけが先行している

これから大事なのは、「いくら上げられるか」ではなく、「その家賃で納得してもらえるか」だと思います。

借りる方は、かなり冷静です。家賃、初期費用、駅距離、設備、管理状態をきちんと比較しています。昔のように、何となく決まる、という市場ではありません。そうなると、これから問われるのは「どこにあるか」だけではなく、「その家賃を払っても、ここに住みたいと思えるか」だと思います。

家賃と暮らし

東京23区の単身向け家賃が最高値を更新していることは、たしかに都市部の賃貸需要の強さを表しています。ただ、見方を変えると、これは「都心に住み続けるためのハードルが上がっている」ということでもあります。

これまでは、職場に近いこと、駅に近いこと、移動時間を短くできることが、都心居住の大きな価値でした。しかし、働き方の変化や、将来的な自動運転・移動サービスの普及を考えると、その価値は少しずつ変わっていくかもしれません。

高い家賃を払ってでも都心に住むのか。
少し距離を取って、広さや落ち着き、家計の余裕を選ぶのか。

これからの住まい選びは、単純な「都心か郊外か」ではなく、「自分の暮らしに合っているか」がより大切になっていくように思います。

そう考えると、今回のニュースは「家賃が上がった」という話ではなく、「これからの住まいの価値を、もう一度考える時期に来ている」という話なのかもしれません。

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