法人が投資用不動産を取得する際、どのような費用が経費として認められるかを理解することは、節税効果を最大化し、投資の収益性を高めるために非常に重要です。
不動産投資は大きな資本を必要とするため、取得時や所有期間中に発生する様々な費用を適切に経費計上することで、法人の課税所得を減らし、結果として税負担を軽減することが可能です。しかし、経費として認められる項目と認められない項目が存在し、その違いを理解していないと、税務上のリスクを抱えることになります。
例えば、不動産の取得費全額を一度に経費計上することはできませんが、特定の費用は経費として認められます。また、建物部分の取得費は減価償却を通じて長期間にわたって経費化する必要があります。
本記事では、法人が投資用不動産を取得する際に経費として計上できる主な項目と、その計上方法について詳しく解説します。
経費として計上できる主な項目
まず、不動産を購入する際に発生する費用のうち、経費として計上できる主な項目を紹介します。
- 【購入手数料】:
- 不動産業者に支払う仲介手数料やコンサルタント費用は、経費として計上できます。
- 【登記費用】:
- 司法書士に支払う登記費用や登録免許税も経費として計上可能です。
- 【不動産取得税】:
- 不動産を購入した際に課せられる不動産取得税、印紙税も経費として計上できます。
- 【ローン関係費用】:
- ローンを組む際に発生する手数料や金利は、経費として計上できます。
- 【保険料】:
- 不動産にかける火災保険や地震保険などの保険料も経費として計上できます。
資産として計上される項目
一方、以下のような項目は経費として一度に計上するのではなく、資産として計上する、あるいは減価償却を通じて少しずつ経費にしていきます。
- 【土地の購入費用】:
- 土地そのものの購入費用は資産計上され、減価償却の対象とはなりません。
- 【建物の購入費用】:
- 建物部分の購入費用は資産計上され、減価償却の対象となります。
例えば、建物価格8000万円で耐用年数が30年の場合の毎年の減価償却費を計算してみましょう。減価償却費の計算には一般的に定額法が用いられます。定額法では、取得価額を耐用年数で割って毎年同じ金額を償却していきます。
計算式:年間減価償却費 = 取得価額 ÷ 耐用年数この例の場合:
年間減価償却費 = 8000万円 ÷ 30年 = 266.66万円(1円未満を切り捨て)
この金額を30年間にわたって毎年経費として計上することができます。これにより、建物の取得費用を長期間にわたって分散して経費化し、課税所得を減らす効果が得られます。
なお、中古物件の場合や、耐用年数が経過した後の再取得の場合は、計算方法が異なる場合があります。また、税法上の耐用年数は建物の構造や用途によって異なるため、実際の適用にあたっては税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
減価償却とは
減価償却とは、資産の取得費用をその耐用年数にわたって分割して経費として計上する方法です。例えば、建物の購入費用は耐用年数に応じて毎年一定額を経費として計上します。耐用年数は建物の種類や用途によって異なります。
なお、法人の場合、任意償却が認められることもあります。
その他の経費
不動産を取得した後、運用期間中にもさまざまな経費が発生します。
- 【修繕費】:
- 修繕費用(20万円以下)は経費として計上できます。
- 【管理費】:
- 不動産管理会社に支払う管理費用(家賃の3~5%)も経費として計上できます。
- 【固定資産税・都市計画税】:
- 固定資産税や都市計画税なども経費として計上できます。
- 【ローン金利】
- 【火災保険料・地震保険料】
経費計上できない主な項目
- 【不動産取得費の全額(建物部分は減価償却で経費化)】
- 【土地の取得費】
- 【所得税、住民税、法人税】
- 【20万円を超える改修工事(資本的支出として減価償却の対象)】
経費計上のポイント
- 適切な経費計上により、課税所得を減らし節税効果が得られます。
- 法人の場合、経常利益が800万円未満であれば約23%の税率が適用されます。
- 経費の書類は適切に保管し、税務調査に備えましょう。
経費を正確に把握し適切に計上することで、不動産投資の収益性を高めることができます。ただし、経費計上には税務上の専門知識が必要なため、不明点がある場合は必ず専門家に相談してください。