COLUMN コラム

不動産鑑定士の共通の目的とは

不動産鑑定士の共通の目的とは

私が不動産鑑定士として独立したての頃、仕事がなく困っていたときに、その頃所属していた分科会のベテラン鑑定士が、たくさんのアドバイスをくださいました。

※分科会:各都道府県内でグループ分けして「分科会」という組織を設け、鑑定評価員は所属が決まった分科会で、地価公示・地価調査の業務を行う。

どこの馬の骨かわからない新人の若手鑑定士(鑑定士業界では40代でも若手)に世話を焼いても、何の得にもならないのに。

聞けば「俺も独立したての頃、先輩に世話になったから。中田さんも将来、若手を助けてあげて。」とおっしゃってくださいました。

「自分もこの人のようになれるのか。同じような寛容さを持てるのか。」と自問自答しましたが、今の私には自信がありません。

ただ、いつか私も年齢を重ね、仕事がさらに充実し、余裕が生まれた時には、同じように独立の道を選んで、もがいている若手鑑定士をサポートできる人間になろうと心に決めました。

その後、昨年、恩師のいるその分科会を離れ、弊事務所のある千葉市の分科会に異動したわけですが、今夏、その分科会も1年で異動になりました。

今回の私の異動を知って、分科会の皆様が電話やメールで励ましやアドバイスをくださいました。

1年しか分科会にいなかった独立3年目の若手鑑定士に対して、ですよ。コロナの影響で、一度もお会いできなかったし、皆さん独立されて何十年のベテランの鑑定士です。なんなら私ごとき、「ふんぞり返って無視」でもいいじゃないですか(大げさですが)。

でも、そんなことをする人はいませんでした。前回に引き続き、今回も、優しいベテラン鑑定士に囲まれた分科会でした。

不動産鑑定業界は狭い業界です。このため、不動産鑑定士同士の人間関係の構築も大切な仕事の一つです。

不動産鑑定士という仕事をしている目的は、突き詰めていけば、自分自身の幸せのためです。

ただし、「不動産鑑定業界の発展」という目的は、共通してすべての鑑定士が持っていると思います。

うがった見方をすれば「そんなのは綺麗事だ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、業界が活性化すれば自分自身もその恩恵を受けられるので、論理的に考えれば発展を願わない人はいないはずです。

その大きな目的を達成する手段として、「後輩のサポート」だったり、「鑑定士協会の運営」だったり、「鑑定技術の研鑽」だったり、「不動産鑑定士という仕事の広報」だったり、「丁寧な仕事で顧客満足度を向上させること」だったり。

それぞれの鑑定士が、”自分の得意な分野で”、業界の発展のために日々努力しています。

手段は違えど目的は同じ。誰しも、自分の成功だけが目的ではありません。

今回の分科会の異動は、自分が将来描いていた予定を少々変更することになったことから、「点」で捉えると、正直予定外だったな、という気持ちも当初ありました。

その中で、「大きく物事を捉えてみては?」と助言をくださった鑑定士がいらっしゃいました。

確かに「点」で捉えるのではなく、物事を「線」で捉えると、また新しい経験、新しい鑑定士や新しい仕事に出会える場になるはずです。これまでの人生を振り返ってみても、思い通りにならないことばかりでしたが、結果的に良かったなと思えることも多々ありました。

たった1年間ですが、今回出会えた分科会の鑑定士の方々に、感謝の気持ちを伝えられたことも、大きな収穫でした。

一つの事象は、見方によって良くも悪くも見ることができるのですから、サクッと気持ちを切り替えて、良い方から見る方が賢く、幸せな時間を増やすことができます。

不動産鑑定業界に携われて、年齢は違えど目的を同じくする優しい鑑定士に囲まれ、私は幸せだな、と感じました。

また、今日から、不動産鑑定業界の発展のため、自分にできることからがんばっていこうと思います。

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