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路線価の上昇と、これからの地価を見る難しさ

路線価の上昇と、これからの地価を見る難しさ

令和8年分の相続税路線価が公表されました。

全国平均では5年連続の上昇となり、地価の上昇基調が続いています。相続税路線価は、地価公示等を基に、その80%程度を目途に定められていますので、今回の上昇も、地価公示等で見られた地価上昇の流れを受けたものとなっています。

この路線価の評価には、全国の不動産鑑定士が関わっています。もちろん、私もその一人として担当しています。そのうえで、今年は特に、あらためて感じることがあります。それは、不動産の価格は、過去の数字だけを見ても分からないということです。

鑑定評価では、実際の取引事例を重視します。どのような土地が、どのような時期に、いくらで売れたのか。これは価格を判断するうえで欠かせない資料です。

ただし、事例はあくまで「過去」のものです。一方で、私たちが見ようとしている価格は、「将来」、これからの市場参加者の判断も含んだものです。

つまり、事例は過去を見るもの。
価格は将来を見るもの。

今年は、この当たり前のようで難しいことを、例年以上に強く感じています。

公的評価にはどうしても時間差があります。不動産鑑定士による価格の査定作業は、価格時点の数か月前から始まります。そして、実際に価格が公表されるのは、そのさらに後になります。

そのため、公表された価格を見る時点では、実際の査定時期との間に半年以上のタイムラグがあります。

この時間差は、普段はそれほど大きく意識されないかもしれませんが、今のように金利や景気、企業の投資姿勢が動いている局面では、かなり重要な意味を持つと感じています。

今のような時代の転換期には、過去の事例をそのまま延長するだけでは判断が難しくなります。少し前まで強かった地域が、足もとでは慎重に見られていることもあります。反対に、これまで目立たなかった地域に、インバウンド観光による実需や企業需要が入ってきていることもあるでしょう。

また、今回の令和8年分路線価は令和8年1月1日時点の価格ですので、足もとの6月の利上げの影響は直接的には反映されていません。金利上昇は、特に投資用不動産には無視できない要素です。借入コストが上がれば、投資採算にも影響が出てきます。

一方で、日銀短観では製造業の景況感が改善しているという材料もあります。景況感は、経済の「体温計」のようなものだと思っています。企業が今の状況をどう感じているか。その温度感は、工業地や商業地、さらには雇用や住宅需要にも少しずつ影響していきます。

「上がっているから、次も上がるだろう。」

今年は特に、そう単純には言い切れない空気を感じています。今の地価を読むのは簡単ではありません。

不動産の価格は、金利、景気、建築費、人口動態、地域の利便性、企業の投資姿勢、そして人の心理まで、さまざまな要素が重なって決まります。私自身も、毎回悩みながら、それでもできるだけ「正しいとされる価格」と向き合うようにしています。

ちょうど今は、不動産鑑定士の令和8年7月時点の地価調査が終わる時期です。そして次に来る令和9年1月時点の地価公示は、非常に重要な節目になると思います。

令和8年分路線価は、これまでの地価上昇の流れを映したものです。一方、次の地価公示を考えるうえでは、そこから先の変化をどれだけ反映できるかが求められることから、現場の空気を見落とさないようにしたいと思います。

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