今回、沖縄県那覇市内の商業地(泉崎橋通り、公示地那覇5-8周辺、国際通り、サンシャイン通り、壺川通りなど)に加え、住宅地や首里城改修の状況も視察しました。
率直に言うと、那覇の不動産は、単に「観光地だから高い」という説明では足らず、観光需要・地元需要・交通利便性が、エリアごとに濃淡を持って価格形成に反映されている――そんな印象でした。
1. 全体感として
令和7年の地価公示では、全国的にも全用途平均・住宅地・商業地の上昇が続き、地方圏でも上昇傾向が継続しています。
那覇市についても、令和7年公示地価の平均変動率は上昇(住宅地・商業地ともプラス)で、商業地の伸びが目立つ構図です。

さらに、沖縄県の令和7年(2025年)入域観光客数(速報)は1,075万5,800人で過去最高を更新しており、観光地・宿泊地・飲食集積地の不動産需要を下支えする材料として非常に強いです。
感覚としては、那覇の中心部は「期待先行の相場」というより、実需(人の流れ)を伴った相場に見えました。
2. 商業地視察① 泉崎橋通り(公示地那覇5-8周辺)
公示地那覇5-8(久茂地1-4-8)は、令和7年に715,000円/㎡、前年比+8.2%とされています。
上昇率の大きさ自体も印象的ですが、現地を歩くと、観光客向け機能だけでなく、オフィス・飲食・宿泊・生活動線が重なっており、需要の裾野が広いエリアでした。

こうしたエリアは収益還元で見ても、取引事例比較で見ても説明しやすい強さがあります。特に泉崎橋通り周辺は、国際通りのような“観光の象徴性”とは少し違い、
- 交通結節点への近さ
- 就業者動線
- 宿泊・飲食の受け皿
- 日中・夜間の利用の厚み
が重なっており、稼働の安定感を想起しやすい商業地だと感じました。「派手さ」よりも「底堅い地価」を作るタイプのエリア、という印象です。
3. 商業地視察② 国際通り
国際通りは那覇の代表的な観光地ですが、今回視察して感じたのは、単なる観光名所というより、買い物や飲食といった消費が途切れずに循環しているように見える通りだという点でした。

観光地の商業地は、「人通りは多いが、実際の購買や滞在につながりにくい」ケースもあり得ます。私自身、そうした先入観を持たないように注意しつつ見ましたが、国際通り周辺は、店舗の入替や業態の幅、時間帯による使われ方に一定の厚みがあり、結果として地価の背景を想像しやすい印象でした。
(もっとも、通りの中でも立地や間口、視認性、建物の状態などで差は大きく、個別に見る必要がある点は言うまでもありませんが。)
沖縄県の基準地価では、那覇市の商業地上位地点として久茂地・松山・天久などが並び、那覇(県)5-8(久茂地3-9-8)は令和7年に763,000円/㎡(前年比+9.0%)で、県内商業地の価格上位に位置しています。
このあたりの高位価格帯は、国際通り周辺を含む都心商業地の活況と無関係ではないと思います。
国際通りを歩いていると、地価の説明として「観光客数」だけではなく、実際には
- テナント回転力
- ブランド・チェーンの出店余地
- 近接エリア(久茂地・松尾・牧志等)との連動
を合わせて見る必要があると感じました。“線(通り)”ではなく“面(周辺街区)”で評価する感覚が大事なエリアという印象です。
4. 商業地視察③ サンシャイン通り・壺川通り
今回の視察で個人的に面白かったのは、メイン通りから少し外れた通りの方が、むしろ個性が見えやすかったことです。サンシャイン通りや壺川通りは、国際通りのような象徴性とは異なる一方で、
- 生活者動線
- 通勤・通学動線
- 近隣商業の継続性
- 地場需要と観光需要の混ざり方
が現れやすい印象でした。


鑑定実務でもそうですが、都心商業地は「一等地」だけ見るのではなく、むしろ、こうした準中心の通りにある物件の動きや空室状況、店舗の入替テンポを見ると、景気の実感値がつかみやすいです。
個人的には、那覇都心の商業地は今、
- 超一等地=価格の絶対水準が高い市場
- 準中心地=需要の実態が価格に反映されやすい市場
という二層構造で見ると理解しやすいと感じました。
5. 住宅地視察(基準地那覇-20)
沖縄県の令和7年地価調査の一覧では、那覇(県)-7(※)が公示地那覇-20に対応する地点として整理されており、価格は
- 地価調査(令和7年7月1日):180,000円/㎡
- 地価公示(令和7年1月1日):175,000円/㎡
となっています。
(※)所在地は寄宮1丁目29-17、地積135㎡、最寄りは小禄駅、前面道路は南東4.5m市道、周辺は一般住宅のほか共同住宅も見られる住宅地域。

こうした住宅地は、首都圏のような“極端な投資マネー主導”というより、自用需要・実需ベースの強さがまだ残っている印象です。もちろん建築費上昇や金利環境の変化は無視できませんが、那覇市内で生活利便性が確保される住宅地は、需要が急に細る感じではありません。
この種の住宅地は、交通利便性、生活利便性、画地条件・幅員条件などをもとに、比較事例の説得力を組み立てやすいエリアだと感じました。

6. 首里城改修(復元工事)視察
首里城正殿の復元工事は、首里城公園の公式案内でも2026年秋完成予定とされており、復元の見せ方も次の段階に入っています。

首里城は「観光施設」というだけではなく、那覇という都市のブランド、滞在動機、再訪動機、文化的厚みを支える存在です。
地価は目の前の賃料や利回りだけで決まるわけではなく、長い目で見れば、都市に対する選好(住みたい・訪れたい・事業をしたい)の蓄積が効いてきます。
首里城の復興は、その意味で、那覇の不動産市場にとっても中長期でプラスに働く要素だと感じました。
7. 需給動向のまとめ
今回の視察を通じて、那覇の需給動向は大きく次のように見えました。
商業地
- 観光回復・拡大が追い風(2025年入域観光客は過去最高)
- ただし、地価の強さは「観光客数」だけでなく、都心機能の重なり(業務・宿泊・飲食・交通)で説明する方が実態に近い
- 通りごとの差、街区ごとの差が大きく、一括りにすることはできない
住宅地
- 都心近接・生活利便性の高い住宅地は底堅い
- 建築費や金利の影響はあるが、公示価格を見ても那覇市内の実需は比較的厚い印象
- 住宅地でも、道路条件・画地条件・生活導線で価格差が出やすい
8. 最後に
地価公示や地価調査の数値は、市場を把握するうえで重要な手がかりです。
一方で、現地で歩行者の動きや店舗の入替状況、通りごとの雰囲気、住宅地の落ち着き方を見ていくと、数値の背景にある需給の実感が少し見えやすくなるように思います。
私自身、短時間の視察だけで断定的なことを言える立場ではありませんが、今回の視察を通じて、那覇を中心とした沖縄の不動産市場は、観光需要だけでなく、生活・業務・交通といった日常的な都市機能の積み重ねによって支えられている面が大きいと感じました。
今後も、こうした現地での感覚を大切にしながら、数字とあわせて丁寧に見ていきたいと思います。