日本経済新聞によると、近年、中古マンション市場では築1年以内の「超築浅」物件の転売が急増しており、その数は10年前の3倍以上にも上っているとのことです。この現象には、投資家心理や市場の背景に目を向ける必要があり、本記事では以下の観点から分析してみます。
転売増加の背景
まず、転売が増加している大きな要因として、次の3点が挙げられます。
- 【短期的な転売益の狙い】 投資家が築浅物件に目を付ける理由は、その資産価値の安定性と流動性にあります。築年数がほとんど経過していない物件は、内装や設備が新築同様であるため、高値で売却しやすい傾向にあります。特に昨今の不動産価格の上昇局面では、短期間での転売益を得る目的で購入するケースが増えています。
- 【新築物件の供給不足】 新築マンションの供給が不足していることも、この現象を後押ししています。施工コストの上昇や土地取得の困難さが新築物件の減少につながり、需要が中古市場にシフトしているのです。結果として、築浅物件が高い注目を集めています。
- 【中古マンション価格の上昇】 中古市場全体の価格上昇も、投資家にとって魅力的となっています。特に都市部では、中古マンションの価格が新築マンションと同等、あるいはそれ以上になるケースも見られ、築浅物件が希少性を持つ資産として価値を高めています。
転売を制限する動きの是非
一部の不動産会社が転売目的の購入を制限する動きを見せていることは、市場全体にどのような影響を与えるのでしょうか。
転売を制限することは、短期的な価格変動を抑える効果が期待できます。これにより、実需層が安心して物件を購入できる環境が整う可能性があります。しかし、この動きにはいくつかの課題もあります。まず、投資家が市場から撤退することで、結果的に市場の流動性が低下し、価格調整がスムーズに進まなくなるリスクが考えられます。また、転売規制が過剰になると、不動産市場全体の活力が損なわれる可能性も否定できません。
さらに、不動産会社の中には規制を利用して実需層への販売を優先する一方で、高値売却を前提とした営業方針を隠れ蓑にするケースもあるかもしれません。
主観を含めて
築浅物件の転売増加は、不動産市場の構造的な課題を映し出す現象だ感じます。まず注目すべきは、新築マンションの供給不足という根本的な問題です。これは土地取得の難しさや建築費の高騰が主な原因です。
一方で、投資家に対する規制は、実需層を保護する目的では必要ですが、規制が行き過ぎると、投資家の意欲を削ぎ、市場全体の均衡を崩す可能性もあります。例えば、転売目的の購入履歴を明確にし、購入者がより適切な判断を下せるよう情報を公開するなど、市場の透明性を高めることも重要だと思います。
築浅物件の転売増加は、投資目的の利益追求と市場の供給不足という二面性を持つ課題です。各市場参加者が自己利益のみに走るのではなく、長期的な視野を持つ必要もあるでしょう。
例えば、投資家に対しては、短期的な転売益だけでなく、物件の長期的な保有を促すインセンティブを提供するなど。一方、実需層が適切に物件を取得できるよう、資金計画やローン支援を充実させる取り組みも考えられます。
最実需層と投資家が共存できる市場が理想ですが、これからも市場動向を注視していきたいと思います。