COLUMN コラム

2024年の首都圏新築マンション市場を振り返る

2024年の首都圏新築マンション市場を振り返る

2024年の首都圏新築マンション市場は、供給減少と価格高止まりという二重の課題に直面しました。需要は一定の水準を維持するものの、供給不足が深刻化しており、購入希望者にとっては厳しい年となりました。一方で、エリア別の動きや2025年の展望には期待が持てる要素も見られます。

今回は、不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2024 年のまとめ」を参考に、2024年の首都圏新築マンション市場を振り返ります。

不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2024年のまとめ」

供給は大幅減少、契約率も4年ぶりに70%を割る

2024年の新築マンション発売戸数は23,003戸と、前年比14.4%の減少を記録しました。これは1973年以降で最も少ない数字です。以下はエリア別の供給戸数と初月契約率の比較です。

地域発売戸数シェア (%)初月契約率 (%)前年比(契約率)
東京23区8,27536.068.8-2.2ポイント
東京都下2,0418.961.0-10.8ポイント
神奈川県4,91721.468.0-0.5ポイント
埼玉県3,31314.461.8+0.8ポイント
千葉県4,45719.468.7-9.0ポイント
総計23,003100.066.9-3.4ポイント
不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2024 年のまとめ」より引用

供給減少の背景

2024年の首都圏新築マンション市場で供給が減少した最大の要因は、東京都における着工数の減少です。特に、都心部では土地の取得が困難化しており、開発が停滞しています。これに加えて、建設コストの高騰が開発業者の負担を増大させている状況です。特に都心部の再開発プロジェクトにおいて採算性が課題となっています。

この供給減少は、契約率の低下にもつながりました。限られた物件の中で価格が高止まりすることで、購入希望者が「購入をためらう」状況が増えたためです。一方で、需要そのものは底堅く、供給が増加すれば市場の回復が見込まれるとも考えられます。

価格は依然として高水準を維持

2024年の首都圏新築マンションの平均価格は7,820万円、1㎡あたり単価は 117.7万円でした。いずれも前年比で下落しましたが、それでも高水準を保っています。

エリア別価格動向

地域平均価格 (万円)前年比 (%)1㎡単価 (万円)前年比 (%)
東京23区11,181-2.6171.0-1.0
東京都下5,890+8.989.0+9.5
神奈川県6,432+6.098.1+5.3
埼玉県5,542+13.884.9+10.7
千葉県5,689+18.980.9+15.2
首都圏平均7,820-3.5117.7-4.0
不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2024 年のまとめ」より引用

東京23区では、2024年の平均価格が1億1,181万円 と、2年連続で1億円を超える高値を記録しました。特に都心の人気エリアでは、交通利便性や周辺環境の充実度から高価格帯物件の需要が堅調に推移しています。一方で、購入者層が高額物件を避ける動きも見られ、価格上昇の勢いはやや鈍化している状況です。

一方で、東京都下や埼玉、千葉といった郊外エリアでは、価格の上昇傾向が顕著です。例えば、埼玉県の平均価格は前年比13.8%増の5,542万円、千葉県は18.9%増の5,689万円に達しています。この背景には、都心の高価格帯物件から移行する形で、比較的手ごろな価格帯の物件がある郊外エリアへ需要が波及していることが挙げられます。

さらに、郊外エリアでは、鉄道アクセスの良い駅近物件や、新規開発された住宅地への注目度が高まっています。特に埼玉県や千葉県では、通勤圏内としての利便性に加え、コロナ以降は子育て世代が求める広い住空間が提供できることが魅力となっています。価格上昇が見られるものの、総額ベースでの手ごろ感が、購入層を引きつけていると考えられます。

2024年のトピック

  1. 【億ションの減少】
    2024年の億ション(1億円以上の物件)供給戸数は3,648戸 と、前年比で12.6%減少しました。この減少の背景には、高価格帯物件の開発が抑制されたことや、都心部の土地取得コストの増加が影響しています。それにもかかわらず、富裕層を中心とした高価格帯物件の需要は引き続き堅調です。特に、立地やブランド価値の高い物件には多くの注目が集まっており、一部の億ションでは即日完売するケースも見られました。
  2. 【定期借地権付き物件の増加】
    2024年の定期借地権付き物件の供給数は547戸に達し、前年比で増加しました。これは、価格高騰の中で手の届きやすい選択肢を求める購入層のニーズに対応するための供給拡大です。都心部や駅近といった立地の良い場所に供給されることが多く、特に若年層や子育て世代にとって魅力的な選択肢となっています。2025年以降も供給が増える見込みで、土地所有にこだわらない層の需要が強いと予測されています。一方で、契約期間の満了後に土地を返却しなければならないという制約があるため、長期的な資産形成を重視する購入者には慎重な検討が求められます。
  3. 【最高額物件は20億円】
    2024年に最も注目を集めた物件の一つが、最高価格 20億円 を記録した「クラッシィタワー新宿御苑」です。専有面積 210.90㎡ の広さで、ラグジュアリーな内装や新宿御苑を望む圧巻の眺望が話題となりました。この物件は、富裕層をターゲットにした超高級マンション市場の象徴的存在として、2024年の市場動向を象徴する一例です。設備やサービスの充実度も高く、資産価値の維持を求める富裕層から支持を集めました。

2025年の市場展望

2025年には、新築マンション市場の供給が回復に向かい、26,000戸(前年比+13%)が見込まれています。この増加は、2024年に供給が大幅に減少した反動もあり、特に東京23区での供給回復が期待されています。具体的には、大規模再開発プロジェクトや再整備されたエリアを中心に、需要の高い物件が供給される見通しです。

また、埼玉県や千葉県などの郊外エリアでも、新たな交通インフラ整備や利便性の向上により、供給数の増加が見込まれています。これらのエリアでは、都心からの価格転換需要を吸収しつつ、広い住空間を提供することでファミリー層のニーズに応える形になると考えられます。

市場全体として、適材適所で多様化するニーズに応じた物件の供給が進むことで、2025年のマンション市場も安定的に推移すると予想されます。

まとめ

2024年の首都圏新築マンション市場は、供給減少により選択肢が限られる一方で、価格の高さが引き続き市場の大きな壁となりました。ただし、郊外エリアや定借物件への関心が高まっている点はポジティブな要素でしょう。

2025年は供給回復と市場の正常化が期待されますが、高価格帯物件の需要が引き続き強い状況が続くと考えられます。新築マンションの購入を検討されている方にとっては、今後の市場動向を慎重に見極めながら、資金計画を立てることが大切です。

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