COLUMN コラム

娘に諭された話

娘に諭された話

「宿題は自分でやらないとダメだよ」
まさか自分が、この言葉を返される日が来るとは思いませんでした。

この半年くらい、仕事が立て込んでいます。
ありがたいことですが、いつも鑑定評価書の作成に追われ、現地調査や役所調査に出て、戻ってはまた資料とにらめっこ。
つい家で「パパ、最近ちょっと忙しくてさ」とこぼしたところ、娘がふとこんなことを聞いてきました。

「ねえパパ。友だちからも、仕事を頼まれるの?」

一瞬、頭の中で「友だち」「仕事」「無償」「責任」などの単語がぐるぐる回りました。たしかに、友人や鑑定士の知り合いから「ちょっと土地見てくれない?」「この仕事お願いしたいんだけど」と頼まれること…あります。

もちろん、鑑定評価書じゃなく雑談レベルもありますが、それでも気軽に答えるには結構ハードな内容だったりするんですよね。鑑定士って、“責任もって判断する仕事”であるのに、頼まれると、つい自分事として頭の中でシュミレーションが始まります。鑑定士に「ちょっとだけ見て」は存在しません。

ですから、正直に「そういうケースもあるね」と答えました。

すると娘は、少し考えたあと、こんな一言を放ってきました。

「じゃあさ、宿題は自分でやらないといけないよ、って言ってあげたら?」

……一瞬、意味がわからず固まりました。

「え? どういうこと?」と聞き返すと、

「パパも、いつも言ってるでしょ。 “宿題は自分でやらないと意味がない”って」

……言ってます。

たしかに私は、
・親に答えを聞いて終わらせようとする宿題
・親にやってもらおうとする自由研究
そういうものに、いつもダメ出しをしています。

「それは“やったこと”にはならないよ」
「自分で考えることに意味があるんだよ」

その理屈を、そのまま大人の世界に持ち込まれてしまいました。

――友だちだから、頼まれる。
――忙しいから、手伝ってあげる。

それ自体は悪くない。
でも「その人が本来やるべき仕事」を、安易に引き受けるのは、宿題を代わりにやってあげるのと同じなのかもしれません。

娘は仕事の請負契約も、委任契約も、責任の所在も知りません。
でも、「自分の課題は自分でやる」という原理原則だけは理解していました。

思えば、子どもに言い聞かせている言葉ほど、自分が一番守れていなかったりします。

忙しいのに、「まあ、自分ががんばればいいか」と自分や家族の時間を犠牲にしてまで引き受けてしまう仕事。
でもそれは、相手の成長の機会を奪っているのかもしれないし、自分の首を静かに絞めているだけかもしれません。

その日以来、仕事を頼まれたとき、ふと「宿題は自分でやらないとダメだよ」という娘の顔が浮かぶようになりました。

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