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不動産鑑定士版「マーフィーの法則」

不動産鑑定士版「マーフィーの法則」

「なぜ、よりによって今なのか」

仕事をしていると、そう思うことがよくあります。

少し予定に余裕がある時には、不思議なくらい電話もメールも静かです。ところが、地価公示や固定資産税評価の締切が近づき、一般の鑑定案件も重なって、机の上に資料が積み上がっている時に限って、

「少し急ぎでお願いしたいのですが」

というご依頼が続きます。

しかも、急ぎの案件は一つずつ来るわけではありません。まるで事前に打ち合わせをしていたかのように、同じ日に集中します。

不動産鑑定士版マーフィーの法則、その一。

忙しい時に限って、案件はさらに増える。

現地調査の日にも、似たようなことがあります。

朝、天気予報のアプリを見ると、降水確率は0%。空も晴れています。「今日は大丈夫だろう」そう思って洗濯物をベランダに干し、安心して実査に出かけます。

ところが、対象不動産に到着した頃から、なぜか空が暗くなってくる。写真を撮り始めたところで、ぽつぽつと雨が降ってきます。

雨の中で道路幅員や建物の外観を確認しながら、頭の中にあるのは対象不動産のことだけではありません。「洗濯物、終わったな」という思いが、ずっと離れません。

不動産鑑定士版マーフィーの法則、その二。

洗濯物を干して実査に出ると、降水確率0%でも雨が降る。

反対に、雨を警戒して部屋干しにした日は、一日中よく晴れます。

現地調査では、ほかにもあります。

普段はほとんど車が通らない静かな道路なのに、道路の写真を撮ろうとした瞬間に限って車が来る。

通り過ぎるのを待ち、もう一度カメラを構えると、今度は自転車が来る。さらに待って撮ろうとすると、近所の方が道路脇で立ち話を始めます。

静かな道路は、写真を撮る時だけ交通量が増える。

これも、よくできた法則です。

また、現地で住宅地図を広げていると、かなりの確率で近所の方から、「何か建つんですか?」と声をかけられます。

地図を開き、周囲を見回している姿は、何か新しい計画を調べている人に見えるようです。「いえ、不動産の調査です」とお答えすると、今度は、「この辺の土地、高くなっているんですか?」と、さらに一歩踏み込んだ質問が返ってきます。

こちらはその地域を調べに来たはずなのですが、気がつけば近隣の方に市況を説明する側になっています。

現地を歩かなければ分からない話を聞けるのはありがたい一方で、どこまでお答えするかには少し気を遣います。

不動産鑑定士版マーフィーの法則として言えば、

こちらが質問したい時ほど、先に質問される。

役所調査でも似たようなことがあります。

確認事項を整理し、必要な資料もそろえて窓口を訪れた日に限って、担当者が不在です。「本日は現地に出ております」と案内されると、担当者がきちんと仕事をされていることは分かるのですが、こちらの段取りだけが静かに崩れていきます。

そこは何事もなかったように名刺を置き、後日あらためて電話をします。

準備を整えて出向いた時ほど、一度では終わらない。

これもまた、不思議なくらいよく当たります。

鑑定評価書にも法則があります。

何度も確認したはずの鑑定評価書なのに、印刷して製本した後で誤字に気づく。画面上ではあれほど目立たなかった文字が、紙になった途端、急に強い存在感を放ち始めます。

誤字は、製本が終わってから見つかる。

しかも、修正して印刷し直すと、今度は別の箇所が気になります。

鑑定評価書というものは、見れば見るほど直したくなるので、どこかで区切りをつけなければ、いつまでたっても完成しません。

パソコンやプリンターも、こちらの忙しさを察知しているように感じることがあります。

提出期限まで余裕がある日は、何の問題もなく動きます。ところが、締切直前になると急に動作が遅くなり、保存にも時間がかかる。オンライン会議では、自分が話す番になった途端に画面が固まる。プリンターも、急いでいる時に限って紙詰まりを起こします。

機械にも気持ちがあるとすれば、少し性格が悪いと思います。

そして、株も同じです。

いろいろ調べ、決算も確認し、チャートも見て、「今なら大丈夫だろう」と考えて買った瞬間に株価が下がる。

少し下がるくらいならまだいいのですが、買った直後から勢いよく下がると、「私が買ったという情報が、市場全体に流れたのではないか」と思いたくなります。

反対に、もう少し下がってから買おうと待っていると、そのまま上がっていく。そして、しびれを切らして買うと、そこが短期的な天井だったりします。

株は、買うと下がり、待つと上がる。

ここまで何度も起きるのであれば、もはや想定外ではなく、想定内なのかもしれません。

人生とは、だいたいこういうものです。

予定どおりにいかないことも含めて、予定どおり。想定外が起きることは、ある意味では予想どおりです。

いろいろありながらも、何とか仕事を終え、家に帰り、雨に濡れた洗濯物をもう一度洗う。それで一日が終われば、ある意味、これで順調です。

今日もきっと、何かしら予定外のことが起こります。でも、それも予定のうち。まあ、ぼちぼちやっていこうと思います。

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