住信SBIネット銀行や楽天銀行などの金融機関が50年住宅ローンを提供しています。このローンは、主に若年層をターゲットとしており、借入時の年齢制限や完済時の年齢制限が設定されています。
長期間にわたる返済が可能なため、毎月の負担が抑えられるというメリットがありますが、当然デメリットもあります。今回は50年住宅ローンについて、主観を交えながら掘り下げてみたいと思います。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
毎月の返済額 | 毎月の返済額が短期ローンに比べて少なく抑えられる | 返済期間が長いため、総返済額が大幅に増える |
ライフプラン | 長期的な返済スケジュールにより、短期的な家計負担が軽減する | 50年間の返済を続ける必要があり、生活の自由度が減る |
資産形成 | 早期に家を購入し住むことができる | 50年後には建物の価値が大幅に下がり、ボロボロに。老朽化が進んでいる可能性が高い |
金利リスク | 一定の金利であれば返済計画が立てやすい | 長期にわたる金利の変動リスクが大きく、総支払額が予測しづらい |
家族への影響 | 子供や孫に住宅を残せる可能性がある | 自分の高齢期に住宅ローンが残るため、家族に負担をかけるリスクがある |
他の投資機会 | 不動産所有が早期に実現できる | 住宅ローンの返済が長期間続くため、他の投資(株や不動産)に資金を回せない |
50年住宅ローンは避けるべき?
私は、50年ローンは慎重になるべきだ(控えた方がいい)と考えています。特に、42歳で現金で自宅として戸建住宅を購入するまでは、24年間賃貸暮らしだったという私自身の経験からも、若いうちにローンを抱えないことがいかに経済的な自由をもたらすかを実感しています。
1. 建物の老朽化
50年という長い期間でローンを返済している間、建物の状態は確実に変わっていきます。特に日本の住宅は、築20〜30年を過ぎると価値が急速に低下する傾向があり、資産としての魅力が薄れていきます。仮に50年間返済を続けたとしても、その時点で建物自体の価値はほとんど残っていない可能性が高くなります。つまり、ローン返済が終わる頃には、実際に手元に残る資産がほぼ土地の価値だけになってしまうため、長期間のローンを選択することの意味が薄れてしまうと感じます。
2. 投資機会の損失
50年ローンを抱えることで、株式や債権、不動産投資などの投資に資金を回す余裕がなくなってしまうリスクもあります。生活が安定するまで、できるだけ賃貸生活を続け、お金を貯めてから現金で家を購入すれば、ローン返済が無い分、他の投資に資金を自由に回せるようになります。あくまで一例ですが、このような経済的自由を得る選択肢も考慮した方がよいと思います。
3. 柔軟な選択肢の存在
例えば、1階に自分が住み、2階を賃貸に出すことで収入を得るなど、住宅を活用する他の方法もあります。このように収入を得ながら資産を形成し、短期的にローンを返済する方が長期のローンよりもリスクが少なく、資産形成の選択肢も広がるでしょう。
家賃を払うくらいなら買った方がいい?
「家賃を払うくらいなら、自宅を買ってローンを返した方がいい」という不動産販売員の決まり文句があります。確かに、一見するとローンの返済が家賃に代わるだけで、いずれは自分の資産になるというメリットが強調されがちです。しかし、以下の理由から、この主張には注意が必要です。
1. 資産価値の低下リスク
自宅を購入することは、家賃に代わって資産形成をしていると捉えられますが、上記のとおり日本の住宅は年数が経つにつれて価値が下がっていきます。特に新築の場合、築20年〜30年も経てば建物の価値は大幅に減少し、50年も経つと建物の価値はほとんど残りません。そのため、ローンを返し終えた頃には「資産」としての家が実際には大きく減価している可能性が高く、期待していたほどの資産価値が残らないケースも少なくありません。
2. ライフスタイルの柔軟性が失われる
家を購入すると、その土地に長期間縛られることになります。転勤や家族構成の変化、子供の成長や職場の変化に伴って引越しを考える場合でも、住宅ローンが残っていると簡単に売却できないケースもあります。賃貸であればこうしたライフスタイルの変化に柔軟に対応できるため、特に将来の不確定要素が多い若年層にとっては、賃貸の方が身軽で安心感があるとも言えます。
3. 固定費用の負担
住宅を購入すると、ローンの返済以外にも、固定資産税や修繕費、管理費など、毎年発生するコストがかかります。賃貸物件であれば、これらの費用は基本的に家賃に含まれるか、大家が負担してくれるため、月々の支出が見えやすいです。一方で持ち家の場合、これらの費用が予期せぬタイミングで大きく膨らむこともあり、結果的に家計に大きな負担を与えることも考えられます。
4. 他の投資機会を逃すリスク
家を購入すると、毎月のローン返済に大きな資金が固定されるため、他の投資に回せる資金が減ってしまいます。不動産投資をしたくても銀行からの借り入れが難しくもなるでしょう。賃貸であれば、余裕のある資金を株式や不動産投資に回し、複利の力も借りつつ資産を分散して増やすことが可能です。家の購入は大きな資金を一つの資産に集中させる行為であり、それが将来の資産形成の自由を制限するリスクがあります。
まとめ
50年住宅ローンは一見すると、毎月の返済額が少なく抑えられるため、若い人にとっては魅力的に映るかもしれません。しかし、長期的に見ると、建物の老朽化や投資機会の損失、そして高齢期までローンを払い続けるリスクがあるため、慎重に検討する必要があると思います。
また、家を購入してローンを返す方が得だという主張には確かに一理ありますが、それは個人のライフスタイルや将来の計画によって大きく変わってきます。賃貸生活には柔軟性があり、他の資産形成の可能性を広げる選択肢もあります。すべての人が一律に「家を早く買った方が良い」というわけではないことをしっかり理解することが重要だと思います。
マンションを初め不動産価格が高騰している現代。それぞれのライフプランや状況によって最適な選択肢は異なると思いますが、未来ある若い人は、自宅を買うために50年ローンなど組んだりせず、賃貸に住んでお金を貯めて現金での一括購入、賃貸併用住宅を建てて可能な限り短期返済することなども検討し、将来的な資産形成の道を模索することも検討してほしいと思います。