三井不動産と日本GLPは、2030年までに冷凍や冷蔵の物流網に合計5000億円超を投じる計画であると公表しました。その背景には、冷凍食品の需要拡大や2024年問題と呼ばれる運転手の残業規制の強化があり、物流業界では冷蔵・冷凍倉庫不足が深刻化しています。
低温物流、いわゆるコールドチェーンの整備は、日本の小売業や食品産業の競争力の要であり、物流網の維持や海外展開に向けた重要な投資とされています。
主観を交えて
日本の物流業界が直面している冷凍・冷蔵倉庫の需要拡大は、単なる倉庫の増設にとどまらない複雑な課題を含んでいます。三井不動産や日本GLPなど大手企業が2030年までに5000億円超を投じて、冷凍・冷蔵倉庫を整備する計画が進行中ですが、この分野は一般的な倉庫とは大きく異なる特殊な設備が必要です。
冷凍倉庫は、商品を一定の低温で保つために、高度な冷却設備や温度管理システムが不可欠です。これにより、冷蔵設備自体の導入コストが高くなるだけでなく、運営にかかるエネルギーコストも通常の倉庫と比べて格段に高くなります。結果として、こうした特殊な設備に対応するため、冷凍倉庫の賃料も通常の倉庫に比べて高くなる傾向にあります。
このような背景があるため、冷凍倉庫の供給不足は、単に施設数を増やせば解決する問題ではありません。コストの高い冷凍設備を持つ倉庫は、オペレーションにも高度な技術やノウハウが求められ、専門的な管理体制が不可欠です。企業側は、高賃料を支払ってでもこれらの倉庫を確保する必要があり、特に冷凍食品の取り扱いが増える中で、こうしたニッチな物流拠点はますます重要性を増しています。
また、倉庫賃料の上昇は不動産市場にも影響を与えています。都市部や交通の要所となるエリアにおいて、冷凍倉庫用地の需要が高まり、土地の価格上昇や不動産投資の活発化が見込まれます。これにより、物流施設としての冷凍倉庫は投資価値が高まると考えられ、リートを中心として今後の物流不動産市場にも波及効果をもたらすでしょう。
個人的には冷凍倉庫市場はこれからの不動産市場において非常に重要な役割を果たすと感じています。ただのインフラ整備ではなく、より高度な技術とコスト効率を求める時代に突入しており、企業の競争力にも直結する要素です。また、不動産業界としても、こうした高賃料の特殊施設は、新たな投資のチャンスを提供しており、資産価値の高い物件として注目を集める可能性があります。
この計画を別の角度から見ると、持続可能性や環境への影響を考慮した投資という側面も見逃せません。冷凍・冷蔵倉庫は、通常の物流施設と比較してエネルギー消費が高く、CO2排出量も増加しやすいと言われています。そのため、今後の物流網拡充においては、環境負荷を低減するための取り組みも重要なテーマとなっています。
例えば、最新の省エネルギー技術を導入した冷蔵設備の開発や、再生可能エネルギーの活用など。企業が競争力を保ちながら、社会的責任を果たすためには、こうした環境対応型の投資が求められています。コールドチェーンの拡大は、持続可能な物流システムの確立にも繋がり、日本だけでなく、世界全体のサプライチェーンにも影響を与える可能性があります。
私自身、不動産鑑定の現場で-30~-40度ほどの冷凍倉庫の中に入った経験がありますが(本記事にはまったく関係がありませんが)、5000億円という巨額の投資が不動産市場にも影響を与えることを考えると、不動産業界としても新たなビジネスチャンスが生まれ、地価にも好影響があるのではないかと期待しています。