COLUMN コラム

「LOGI’Q 市原」市原に物流の波

「LOGI’Q 市原」市原に物流の波

これまで千葉県内の大型物流施設といえば、東京港湾部に近接する浦安・市川・船橋・習志野などの「湾岸エリア」か、柏・流山・野田など「内陸北西部」が中心でした。

それが、いよいよ「市原」にまで物流開発の波が押し寄せています。東急不動産による「LOGI’Q 市原」の着工は、市原エリアが物流適地として本格的に認知され始めた象徴的な出来事だと感じています。

物件概要

項目内容
名称LOGI’Q 市原
所在地千葉県市原市八幡海岸通1969番1
竣工2026年4月(予定)
敷地面積4,399.99坪
延床面積35,131.95㎡(10,627.41坪)
規模鉄骨造・地上5階(倉庫4層)
特徴マルチテナント(最大4区画)、1・2階接車スロープ、環境配慮(屋上PV自家消費 ほか)
交通京葉道「蘇我IC」約5.3km、館山道「市原IC」約5.8km、JR内房線「八幡宿」駅徒歩約17分
出典:東急不動産・LOGI’Q公式、JR西日本プロパティーズ、ニュースリリース等

同施設は2t/㎡の全フロア耐荷重、2階低床、1・2階スロープ接車など“臨海工業地帯の実需”に合わせた仕様。京葉臨海の石油・素材系物流に適合する企画で、“湾岸の逼迫×分散ニーズ”の受け皿として機能する見込です。

なぜ「今、 市原」なのか

千葉を含む首都圏LMT(大型マルチ)市場は新規供給の波を消化しつつあり、新興サブマーケット(市原等)への進出に合理性が出ています(コストと可用面積の両面で)。

  1. 【湾岸・内陸北西の成熟と地価・地代の上昇】
     浦安・市川・船橋の湾岸は供給・用地ともにひっ迫。内陸北西(柏・流山・野田)は巨大クラスター化(GLP ALFALINK・DPL群)で賃料・人材競合が顕著。“もう1枚”の選択肢として市原の相対優位が浮上。
  2. 【“臨海工業×汎用物流”の結節点】
     京葉道路・館山道の二面アクセスで首都圏〜関東広域に展開可能。臨海の素材・化学系と汎用EC/小売のハイブリッド需要に応えやすい。
  3. 【供給吸収の地合い改善】
     首都圏LMTの空室率はやや拡大。一方、賃料は概ね横ばいで、市原のような“次点サブマーケット”での大型一括/分割需要が現実的になっている。

スペックが示す“狙い”

  • 【全フロア2t/㎡ & 2階低床】
     1tフレコン三段積み等の重量物保管・フォーク横付け運用を想定。臨海化学・資材系の荷姿を強く意識したプロダクト。
  • 【1・2階スロープ接車 × マルチテナント】
     BTS/専用化一辺倒ではない“柔らかい”需要に対応。季節波動の大きいEC・3PLとも相性良し。
  • 【環境配慮(屋上PV自家消費、認証計画)】
     ESG要件の充足は、賃料プレミアと出口(売却)での評価安定に寄与すると考えられる。

サブマーケット比較(私見)

観点湾岸(浦安・市川・船橋・習志野)内陸北西(柏・流山・野田)市原・臨海
用地取得容易性△(枯渇気味)△〜○
首都圏広域アクセス○〜◎○(京葉道/館山道で補完)
港湾・臨海連動
雇用確保○(通勤圏の設計がカギ)
コスト(地代・賃料)×(高め)△〜○○(相対優位)
テナント構成の多様性○(今後の積み上げ次第)

“不動産”としての見立て

【最有効使用】:計画どおりのマルチテナント型物流施設が合理的。重量物にも耐える仕様を備えた“汎用×臨海連動”が差別化要因だと思います。

【賃料・利回りの捉え方】:個別仕様(床耐荷・梁下・バース数)と雇用設計(送迎・自転車通勤導線等)で賃料許容が変動。湾岸対比のディスカウントを武器に、吸収は現実味があると見ています。

【リスクと対策】:①臨海特有の水関連リスクはハザードと床高さ・非常電源計画で緩和、②大型車動線・待機場の近隣合意、③人材確保は八幡宿からの送迎/シャトル・駐輪整備が鍵か。

【資産性(出口)】:ESG対応と汎用性はテナント更新のしやすさと売却時の目減り耐性に寄与。新たな物流用地としての先行ポジションは、将来のプレミア要因になり得ます。

まとめ

浦安・市川・船橋の湾岸、柏・流山・野田の内陸北西などに続き、市原・臨海が物流地図に書き込まれつつあります。
「LOGI’Q 市原」は、その変化を立地(京葉道/館山道×八幡宿)で可視化した象徴的な案件だと感じています。

個人的には、市原=臨海工業×汎用物流の結節点という新しい評価軸が、今後の不動産市場や鑑定評価の分野でも有効になると考えています。

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