2025年7月、ローソンが千葉県内6店舗で新たに始める「車中泊サービス」。この一見ユニークな取り組みが、今後の不動産活用に与えるインパクトは小さくありません。
特に千葉県という立地に注目すると、この動きが単なる新サービスにとどまらず、地域資産の活性化モデルとしての可能性を秘めていることが見えてきます。
なお、私自身も普段からAmazonプライムなどで車中泊をテーマにした番組を目にする機会があり、一視聴者としても、その自由な旅のスタイルや土地との新しい関わり方に関心を持ってきました。
◆ なぜ今「コンビニ×宿泊」なのか?
物価高と宿泊費の上昇により、安価で柔軟な宿泊形態=「車中泊」へのニーズが急増しています。特に若年層やアウトドア志向層、節約志向の旅行者からの支持が高まっています。
これを捉え、ローソンは自社の駐車場という遊休不動産に着目し、マイクロ宿泊機能を付加することで、新たな土地収益モデルを構築しました。
項目 | 内容 |
---|---|
サービス開始日 | 2025年7月14日 |
対象店舗 | 千葉県内の6店舗 |
利用料金 | 2,500~3,000円/泊 |
提供設備 | 電源、トイレ、ゴミ袋等 |
想定ターゲット | 若年層、車中泊ユーザー、節約層 |
展開ブランド | RVパーク(日本RV協会認定) |
◆ 不動産視点1:「半遊休地」の再定義
コンビニの駐車場は一見、常に稼働しているように見えますが、深夜帯や郊外型店舗では稼働率が低く、実質的には“半遊休状態”となっています。
千葉県のように都市と郊外が混在する地域では、このような稼働率にムラのある土地(コンビニ駐車場、工場跡地、郊外型空きテナントなど)が多く存在します。
ローソンの今回の取り組みは、ミニマムな設備投資で収益を生み出す低リスク型土地活用モデルとして、優れた実践例です。
不動産タイプ | 従来の用途 | 今後の活用可能性 |
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コンビニ駐車場 | 客用駐車スペース | 車中泊、フードトラック拠点(※1)、EVステーションなど |
工場跡地 | 駐車場、一時貸し | キャンピングカー宿泊地、物流ステーション |
郊外型空きテナント | 貸店舗 | RVパーク併設コワーキング施設(※2) |
(※1)移動販売車(キッチンカー・フードトラック)が定期的または常設で集まる営業・待機・営業準備のベースとなる場所のこと。
(※2)車中泊が可能なRVパーク(Recreational Vehicle Park)と、リモートワークやテレワークができるコワーキングスペースが一体となった施設のこと。
◆ 不動産視点2:千葉県×観光×インバウンドの交点
千葉県は成田空港を抱える国際的な玄関口である一方、南房総や外房などアウトドアや車移動と親和性の高い観光地も多く、東京からも比較的近いため、車中泊仕様車やキャンピングカーとの相性が良好です。
さらに、インバウンド客の地方分散を国が進める中で、「泊まれる駐車場の整備=観光受け入れインフラ」と位置付けられれば、土地そのものの評価額や周辺不動産価値にも好影響を与える可能性があります。
観点 | 都市部 | 千葉県郊外 |
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車中泊ニーズ | 渋滞・規制のため限定的 | 高いニーズ。広く静かな環境が好まれる |
土地コスト | 高額、転用困難 | 安価で柔軟な活用が可能 |
投資回収 | 長期 | 中短期で収益化可能 |
◆ 不動産視点3:「宿泊施設」ではなく「駐車場」としての設計
車中泊サービスは旅館業法の規制対象外であることが多く、駐車場貸与という形での運用が可能です。
この仕組みにより、消防・衛生・人員配置等の重い負担を避けつつ、宿泊に近いサービスを提供できるのが最大のポイントです。
ただし、今後法整備が進めば、最低限の衛生基準や騒音管理などが課題となる可能性もあり、継続的な制度チェックが必要となると考えられます。
◆ まとめ
ローソンの車中泊事業は、「遊休地=放置」ではなく「資産としての活用」を再定義する事例です。
千葉県という地理的ポテンシャルを背景に、全国の郊外エリアにも波及し得る先進的な土地活用モデルといえるでしょう。
● 遊休地も工夫次第で高収益を生む時代へ
● 千葉のような都市近郊エリアは先行事例の宝庫に
● 法制度と社会ニーズの“すき間”を読むことが重要
Amazonプライムの番組では、「何もない場所」が旅人にとっては「最高の自由空間」になる様子が描かれますが、不動産の視点から見れば、それはまさに「価値の再発見」となります。
今後、これが一過性の話題にとどまるのか、持続可能な土地ビジネスへと昇華するのか──その行方を注視していきたいと思います。