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令和6年地価公示が公表される

令和6年地価公示が公表される

国土交通省が公表した令和6年1月1日時点の公示地価は、全用途の全国平均が前年比2.3%上昇し、バブル崩壊以降で最大の上昇幅を記録しました。この上昇は3年連続で、コロナ禍の影響で下落した後、コロナ前の水準に回復したとされています。

主要都市だけでなく、地方でも住宅需要が高まり、地価上昇地域が広がっています。特に、住宅地の全国平均上昇率は2.0%で、92年以降最大。商業地も全国平均上昇率が1.8%から3.1%へと拡大しました。

地価の上昇は、住宅地で29都道府県、商業地でも29都道府県で見られ、新たに上昇に転じた県もあります。上昇率トップは、住宅地で北海道富良野市の27.9%、商業地では熊本県大津町の33.2%でした。一方、最高価格は商業地で東京都中央区銀座4の「山野楽器銀座本店」で5,570万円/㎡、住宅地は東京都港区赤坂1の535万円/㎡でした。

ここからは私見を交えた感想ですが、日本の地価が、コロナ禍の影響を乗り越えて、バブル崩壊以降で最大の上昇幅を記録したというニュースは、不動産市場にとって明るい兆しとも言えます。個人的に注目したのは、地方の地価も上昇している点です。これまで日本の不動産市場は、首都圏や大都市圏に人口や資本が集中し、地方は過疎化や経済活動の縮小といった問題に直面していました。しかし、この地価の上昇には、地方都市における住宅需要の高まりや、地方経済の活性化の兆しがうかがえます。

また、商業地の地価上昇は、訪日外国人客の回復や都市部での店舗需要の増加を反映していると考えられます。これは、コロナ禍からの経済復興が進んでいる証拠とも言えるでしょう。特に、熊本県大津町の商業地が上昇率トップになったのは、本コラムでも度々書いている台湾積体電路製造(TSMC)の日本初の生産拠点設置が大きく影響しており、地域経済に与える外国企業の影響の大きさを物語っています。

日本全国で見られる地価の上昇は、一見すると経済の好循環を示唆しているように見えます。特に地方都市における地価上昇は、長らく悩まされてきた地域格差の是正や地方創生に向けた一歩と捉えることもできるでしょう。新たな住宅需要の高まりや商業活動の活性化は、地方における雇用機会の増加や人口流入に繋がり、地方経済全体の活性化へと寄与する可能性があります。また、熊本県大津町で見られたような外資の流入は、地域産業の多様化や技術革新の促進に役立つかもしれません。

しかしながら、この地価上昇がすべての人々にとってポジティブな影響を及ぼしているわけではありません。住宅市場における価格の上昇は、特に初めての家を購入しようとする若者や中間取得者層にとって、大きな障壁となり得ます。地価上昇に伴い、住宅ローンの負担が増加し、生活コストの上昇につながる可能性があるからです。さらに、今は利上げによる住宅ローン金利の上昇の懸念、円安の進行で建築費が高騰していることも懸念されます。

また、地価上昇の背景には、不動産市場への投機的な投資や外資による土地取得など、持続可能な成長とは異なる動きも存在します。これらの動きが長期的な地域経済にどのような影響を与えるかは、我々不動産鑑定士が地価を把握するにあたって慎重に判断する必要があります。加えて、過度な地価上昇は将来的に不動産バブルのリスクを高めることもあり得るため、市場参加者は投機的取引を行わないことも求められます。

地価の上昇が示す経済的な兆候をどのように解釈し、活用するかは、日本経済の持続可能な成長を目指す上で重要な課題となっています。

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