COLUMN コラム

仕事を優先するか、家庭を優先するか

仕事を優先するか、家庭を優先するか

内閣府の「男女共同参画社会に関する世論調査」(令和元年9月調査)で、生活の中での「仕事」や「家庭生活」などの優先度について、希望に最も近いものを聞いたデータがあります。

これによると、「仕事を優先したい」と答えた割合が9.9%、「家庭生活を優先したい」と答えた割合が28.4%となっていて、希望としては仕事よりも家庭生活を優先したい割合が高くなっています。

内閣府「仕事」、「家庭生活」、「地域・個人生活」の関わり方 ~希望優先度(令和元年9月調査)

前回の調査結果と比較してみると、「家庭生活を優先したい」(25.5%→28.4%)と答えた割合が上昇しています。また、性別に見ると「家庭生活を優先したい」と答えた割合は女性が35.1%と高く、男性は20.7%となっています。

一方、”希望”ではなく”現実”に最も近いものを聞いたところ、「仕事を優先している」と答えた割合が25.9%、「家庭生活を優先している」と答えた割合が30.3%となっています。

性別に見ると、「仕事を優先している」と答えた割合は男性で、「家庭生活を優先している」と答えた割合は女性で、それぞれ高くなっています。 

内閣府「仕事」、「家庭生活」、「地域・個人生活」の関わり方 ~現実(現状)(令和元年9月調査)

希望と現実の2つの表を比較してみると、「仕事を優先したい」という”希望”は9.9%であるにもかかわらず、”現実”には「仕事を優先している」割合が25.9%と大きくなっており、希望と現実に乖離があることが分かります。

また、性別に見ると男性より女性の方が「家庭生活を優先している」割合が約2倍高くなっています。

男性よりも女性の方が家庭生活を優先している状況は「育児休業取得率」にも表れています。下記は厚生労働省による女性と男性の育児休業取得率の推移です(上のグラフが女性、下のグラフが男性)。

育児休業取得率は、女性は8割台で推移している一方、男性は国策等(※)により上昇傾向にあるものの、女性に比べ低い水準となっています(令和3年度:13.97%)。

(※)男性も育児休暇を取りやすくするための「改正育児・介護休業法」が成立しました(令和4年4月施行)。これにより、男性版「産休」を新設、生後8週間以内に4週間まで利用可となったほか、企業に産休や育休の取得意向の確認、従業員1000人超の企業に取得状況の公表などが義務づけられました。

厚生労働省「女性の育児休業取得率」(令和3年度)
厚生労働省「男性の育児休業取得率」(令和3年度)

しかも、育児休業の取得期間を見ると、女性は9割以上が6か月以上となっている一方、男性は約5割が2週間未満となっていますから、依然として男性は短期間の取得が中心となっているが現状です。

厚生労働省「育児休業の取得期間」(令和3年度)

かくゆう私は第1子が生まれた平成28年にはサラリーマンでしたが2ヶ月間の育児休暇を取得し、第2子が生まれた平成31年(令和元年)には独立していたため仕事と家庭の時間配分に融通が効いたことから、仕事を抑えて育児を優先しました。

実際に私が育休を取って役に立っていたかどうかは妻に聞いてみないと分かりませんが、まあ、夫である私もなかなか大変でした。妻はその比ではないでしょうね。ちなみに妻は育休明け後もフルタイムで働いています。

我が家の経験則から書かせていただくと、今の日本で夫婦がフルタイムで働きながら未就学児の子育てをすることは毎日が自転車操業のような日々です。

子供が熱を出せば預けるのを断られる保育園も多く(病児保育もありますが)、ましてや今は新型コロナが蔓延していますから保育園を休む機会も多くなり、そうなれば夫婦どちらかの仕事はアウト、という土俵際の状態です。

それに毎日食事の準備や後片付け、掃除や洗濯などもありますから、仕事における不規則な残業などはまずできません(今は社会全体でも労働時間短縮の流れにありますが)。残業するとお迎えにいけませんから。

夫も家事育児に参加しないと、我が家では普通に家庭が破綻してしまうのですが・・・。

少子化の切迫感から子育てを奨励する一方で、都市部では待機児童問題が延々と解決せず、働く女性の再就職も難しく、核家族化が進行し親に寄りかかることも難しくなった矛盾した社会で、夫婦共に働きながら子供を育てることがどれほど大変なことか、(実際に子を産む女性ほどではないにせよ)身にしみて分かっているつもりです。

このような社会ですから、子供が生まれたら専業主婦(主夫)になる(またはなりたい)という心理状態も理解できます。

世間では「イクメン」というスマートな響きの言葉がありますが(現実の家事育児はすこぶる蕪雑で、そんなにスマートな言葉で表せるものではありませんが)、データでみると男性が家事や子育てに参加している家庭は(実際に役立っているかはまた別問題として)、まだまだ珍しいケースであることが分かります。

また、実際に私の身の回りのご家庭の話を聞いていても、我々世代(30~40歳台)は「女性によるワンオペ育児」を行っている家庭の割合がまだまだ少なくないようです。

子持ちで働くことの厳酷な現実を実際に経験した者として、ワンオペ育児は(実際にやられている人もいるので)絶対に無理とまではいいませんが、命を削るという表現が誇張ではないほど大変なものだろうと想像します。

私が言ったところで世の中は何も変わりませんが、働く女性の負担を減らすためにも、自分達にはとても無理だと子供を産むことを諦めてしまう若い夫婦のためにも、まずは身近な対策として、男性が家事や子育てに本当に参加できないのかどうか、もう少し真剣に考える必要があるのかもしれません。

※誤解の無いようにお断りしておきますが、生きてきた時代やそれぞれのおかれている環境により、様々な事情があるでしょうから、一律に男性の家事育児参加が良い悪いと言っているわけではありません。夫婦間でよく話し合い、最適解を見つければよいと思います。

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