「今月も…社会保険料、恐ろしく高いな…」
毎月、社会保険料の明細を眺めては、小さくため息をつくのが習慣になってしまいました。未曾有宇の超高齢化によって日本財政は逼迫し、社会保険料の負担は大幅に増加しました(社会保険料率の引き上げは厚生労働省の一存でできる)。
私は不動産鑑定士として独立して7年目、自営業者として日々働きながらも、年々重くなる社会保険料の負担を肌で感じています。一人二役の自営業者は自己負担だけではなく、会社負担の保険料も支払わなければなりませんから、保険料は2倍になります。
特に2025年度の健保組合の保険料率9.34%という数字は、過去最高を記録。これは決して“対岸の火事”ではなく、私たち現役世代の家計や将来設計、不動産市場の動きにまでじわじわと影響を与えていると実感しています。
📊 データで見る「健康保険の構造問題」
項目 | 内容 |
---|---|
健保組合の平均保険料率 | 9.34%(過去最高) |
赤字経営の健保組合 | 76% |
保険料の使い道 | 約半分:本人医療費 約4割:高齢者医療への拠出金 |
医療費の伸び | 年2.9% |
雇用者報酬の伸び | 年1.8% |
保険料の多くは高齢者医療に使われており、特に団塊世代の後期高齢者入りにより、その拠出負担は今後も拡大が予想されます。現役世代が負担する構図は、制度的に仕方がないとはいえ、重さを増すばかりです。
🏠 不動産鑑定士として感じる「間接的な影響」
私は日々、不動産という資産の価値を客観的に評価していますが、こうした社会保障コストの上昇は、不動産市場や個人の投資判断にも少なからず影響を与えていると実感しています。
たとえば――
- ✅ 可処分所得の減少:月数万円単位で社会保険料が増えれば、家計に占める住居費の割合も圧迫され、賃料相場や住宅購入意欲に影響。
- ✅ 将来不安からの投資マインド低下:保険料の上昇と金利上昇、老後不安のトリプルパンチで、長期投資に慎重になる層が増加。
- ✅ 中小企業の財務負担増:法人契約の健保に加入する会社では、従業員の報酬アップよりも社会保険料増加への備えが優先され、成長投資が後回しになる懸念。
💡 家計から考える“制度疲労”
私は仕事柄、資産価値や収益性を数値で読み解きますが、同じように社会保障制度も「財源の収支バランス」という視点で見直す必要があると感じています。
たとえば下記のように考えると、状況がよりクリアになります:
年間報酬(例) | 健保料(9.34%) | 自身に使われる医療費 | 拠出金(高齢者向け) |
---|---|---|---|
800万円 | 約74.7万円 | 約37.3万円(50%) | 約29.9万円(40%) |
ここで気づくのは、自分が払った保険料の半分以上が自分以外の人のために使われているという点です。それ自体が悪ではありませんが、制度が既にいびつな構造になっているのは事実です。
🧠 今後の焦点と私たちが問われる視点
今後の議論は「高齢者医療の公平性」や「財源再設計」に移っていくでしょうが、現役世代の生活や将来の成長戦略をどう守るかが根幹にあります。
現役世代が「負担される世代」から「未来をつくる世代」へと再定義されるような制度設計が急務だと感じます。
社会保障制度の仕組みそのものを個人が変えることは難しいですが、数字に向き合うこと、制度の歪みに気づくことは可能です。
私たち不動産鑑定士の仕事もまた、「見えづらい価値を見える化する」仕事です。
同じように、社会の構造的な負担や制度疲労にも、決して他人事ではなく自分事として、「可視化」された視点が必要だと感じています。