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人材最適化の潮流

人材最適化の潮流

最近の日本経済新聞のニュースで、パナソニックによる1万人、日産による2万人の人員削減が発表されました。これらの動きは、単なる一過性の業績不振による対応ではなく、より根本的な経営戦略の転換を示すものと考えられます。

従来の「人員を増やして売上を拡大する」から、「人員を最適化し、利益率を高める」方向へと企業の重心が大きく移りつつあります。

ご存じのとおり、アメリカではすでに人員削減が当たり前となり、業績を改善するための常套手段として広く受け入れられています。そして、今や日本でもその動きは強まっており、人員削減のニュースを耳にする機会が増えてきました。

この背景には、AIをはじめとしたテクノロジーの進展があります。単純作業や定型業務の多くが自動化されつつあり、もはや「誰にでもできる仕事」に人員を割く意義が失われつつあります。企業経営においては、人的資源の質的転換が求められています。

不動産鑑定業界においても同様です。かつては複数名の補助者を配置し、業務量の拡大を目指すスタイルが一般的でしたが、現在では業務支援ツールが揃い、一人の鑑定士が、専門的かつ効率的に業務を遂行することができます。これは、少人数でも高い生産性が確保できる環境が整ったことが背景にあります。

私自身も一時期、スタッフを雇って事業を拡大すべきかを真剣に悩んだ時期がありました。しかし最終的には、人を雇わず、一人で事業を運営する道を選びました。最大の理由は、業務の煩雑化により、家族と過ごす時間が減ることへの懸念でした。仕事と生活に対する価値観も含めた総合的な判断です。

また、これは実際にやってみて感じたことですが、利益率を高め、事業の持続可能性を確保するという意味でも、「一人で完結できる経営体制」は大きな強みとなります。中小企業においては、必ずしも売上高の増加が最善とは限りません。むしろ、経費構造の最適化や、お客様に対する丁寧な対応による信頼の獲得により、安定した利益率を確保する戦略こそが、一人社長の経営を支える重要な柱になります。

また昨今では、スタートアップの分野においても「少人数高収益」の傾向が鮮明です。10名程度で10億円規模の事業を築く企業も珍しくなくなりつつあり、近い将来には「一人でユニコーン企業を創る」存在が現れる可能性すらあるでしょう。人的資源を多く抱えることが、必ずしも企業価値に直結しない時代が到来しています。

AIの進化は、業務の効率化にとどまらず、雇用の在り方そのものを大きく変えています。現時点では採用は売り手市場とされていますが、この状況がいつまで続くかは不透明です。今後は、企業は人材の質的選別を一層進めることとなり、「人を雇う意味」自体が根本から見直される時代がすぐそこまできています。

今後も、変化する時代の中で、「何を持たず、何に集中するか」を見極めながら、小さくても持続可能な経営を目指していきたいと考えております。

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