COLUMN コラム

住宅着工数が3年ぶりに増加

住宅着工数が3年ぶりに増加

国土交通省が発表した2024年度の新設住宅着工戸数は、全国で 81万6,018戸(前年比+2.0%) と、3年ぶりに増加に転じました。

不動産鑑定士や宅建士として日々、現場で不動産の動きを見ていると、「あれ?最近賃貸マンションの新築現場が少し増えたな」、「郊外の戸建ての引き合いは落ち着いているな」と感じていたところです。今回の統計を見て、その肌感覚が数字でも裏付けられたように思います。

着工戸数の内訳と注目ポイント

利用関係別着工戸数前年比
持家22.3万戸+1.6%
貸家(賃貸)35.6万戸+4.8%
分譲住宅22.9万戸-2.4%
└マンション10.5万戸+5.0%
└一戸建て12.2万戸-8.5%
着工戸数の内訳と変動率

今回、特に目を引くのが「貸家」と「マンション」の伸びです。賃貸アパートや都市部のマンション需要が底堅く、住宅供給も回復してきたことがうかがえます。

一方で、分譲の一戸建ては減少。これは金利上昇や物価高が重なり、郊外のマイホーム購入を控える動きが影響しているかもしれません。実際、私の知る限りでは千葉市や柏市などの主要都市でも、郊外の戸建て用地の流動性が、以前より鈍くなったと感じます。

地域別に見る動き

地域総戸数前年比
首都圏29.1万戸+1.6%
中部圏9.1万戸-2.7%
近畿圏13.8万戸+8.6%
地域別総戸数及び変動率

近畿圏の伸びが特に顕著です。大阪・京都など関西エリアで再開発や賃貸住宅の新設が増え、関西の不動産投資家の動きが活発化していると考えられます。

不動産市場の今

今回の調査結果から、以下のような考察ができます。

  • 賃貸アパートの建築が増えている背景には、「相続対策」や「インフレへの資産防衛」としての需要もありそうです。私自身、昨年は地方での貸家鑑定が続いた月がありました。
  • マンション市場の回復は、都心の利便性や二拠点生活の需要増も関係しています。リモートワークとリアル出社の両立を見越して、都市部に小さな部屋を買う人も増えています。
  • 一戸建て着工の減少は、資材高騰や建設人員の不足によるコスト増も影響しています。これは現場の工務店さんとも話していて、よく聞く実感です。

今後の展望と実務へのヒント

今後も注視すべきは「金利の動向」です。昨日、大手5行の住宅ローンの固定金利引き下げられましたが、今後、変動金利も含めて上昇に転じれば、住宅取得層の動きに大きな影響を与えるでしょう。また、投資用アパート建築が過熱すれば、空室リスクも無視できません。

不動産鑑定では、物件の「収益力」や「立地の競争力」を冷静に見極め、お客様にとっての適切な判断材料を提供していく姿勢がますます重要だと感じます。

最後に

今回の住宅着工の増加は、単なる統計の話にとどまらず、「私たちの暮らしがどう変わっていくのか」を考えるきっかけにもなります。

不動産の世界は、数字の裏に「人の生活」や「地域の変化」が隠れています。これからも、現場で得た感覚とデータを照らし合わせながら、実務に向き合っていきたいと思います。

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