2025年に入り、不動産市場は引き続き大きな転換期を迎えています。2025年1月に行われた「ノムコム」の住宅購入意識調査によると、多くの人が「今が買い時」と考える一方で、売却を検討する動きも強まっています。
金利上昇の懸念、不動産価格の高騰、そして市場の先行き不透明感が交錯する中、果たして私たちはどのように行動すべきなのでしょうか?
ここでは、最新の市場データをもとに、現状を分析していきます。
1. 住宅購入、今が本当に「買い時」なのか?
調査結果によると、「今が買い時」と考える人の最大の理由は 「住宅ローン金利が上がると思われる」(59.9%)でした。確かに、日本銀行の金融政策によっては、固定金利の住宅ローンが今後上昇する可能性があり、現在の低金利のうちに借り入れたいと考えるのは自然な流れです。
また、「今後、不動産価格が上昇すると思われる」(51.4%)という理由も挙げられています。円安による建築資材の高騰、人件費の増加、そして都心部の需要の高さなどを考慮すると、特に都市部では価格上昇の傾向が続くと予測されます。
ただ、ここで一歩立ち止まって考えてみましょう。「今買わないと損をする」という心理が働くと、冷静な判断ができなくなることがあります。住宅購入は数千万円単位の投資です。焦って飛びつくのではなく、「本当に今買うのが得策なのか?」 をじっくり考えましょう。「市場がどう動くか」よりも 「自分のライフプランに合っているか」 を最優先に考えることが大切です。
今は賃貸の方が生活コストを抑えられる状況なのか、将来的に転勤やライフスタイルの変化があるのか、といった個別の事情をよく検討し、購入するのであれば、焦らず「本当に自分にとって価値のある物件か」を十分検討することが必要です。
2. 今後の不動産価格の見通し
調査結果によると、今後の不動産価格についての見通しは以下のように分かれました。
- 「上がると思う」:43.5%(前回比1.4pt減少)
- 「横ばいで推移すると思う」:29.2%(前回比0.8pt増加)
- 「下がると思う」:18.6%(前回比0.9pt増加)
「上がる」と考える人の主な理由は、建築コストの上昇や円安による外国人投資の増加、都市部の不動産需要の高さです。確かに東京都心のタワーマンションなどは、投資対象として今後も高値を維持する可能性が高いでしょう。
しかし、一方で「下がる」と考える人の意見には注目すべき点があります。
- 金利が今後さらに上がることで、住宅ローンを利用する層の購買力が落ちる
- これ以上価格が上がると、実需層(実際に住むために購入する人)がついてこられない
- 首都圏でも空き家が増えており、地方ではさらに深刻な状況になっている
- 人口減少や世帯数の減少が長期的には市場を縮小させる可能性がある
特に、地方や郊外の物件はこの先厳しくなる可能性が高くなります。都心部のタワーマンションなどは投資需要もありますが、駅から遠い郊外の戸建て住宅などは、これから買い手がどんどん減るケースも見られると予想されます。
また、住宅ローン金利が上がれば、多くの人にとって「買える価格の上限」が下がります。結果的に、高額な物件は売れにくくなり、一部の市場では価格調整が起こる可能性もあります。
3. 不動産の「売り時」は今なのか?
今回の調査では、「売り時だと思う」と回答した人も多かったようです。その理由として考えられるのは、
- 現在の高騰した価格で売却できるうちに売りたい
- 今後の金利上昇で買い手が減り、市場が冷え込む可能性がある
- すでにピークに近い価格であり、これ以上の上昇を期待するのはリスクが高い
確かに、これまでの価格上昇を考えると、今売れば利益が出るケースも多いでしょう。しかし、売却を急ぐべきかどうかは、物件のエリアや種類によります。例えば、東京都心の一等地や駅近の優良物件であれば、今後も値上がりが期待できる可能性があるため、無理に手放す必要はないかもしれません。
すでに価格が頭打ちになっているエリアや、人口減少が進んでいる地方の物件を持っている場合は、今のうちに売却を検討するのも一つの選択肢ですが、売るべきかどうかは、物件の立地や特性次第です。
「不動産は持っているだけで価値が上がる」という時代は終わりつつあります。特に、築年数が古くなると売却が難しくなるため、「今売るべきか、もう少し待つべきか」を冷静に判断することが重要です。
まとめ
今回の調査結果から、不動産市場は「金利上昇への警戒」と「価格高騰の継続」という相反する要素が絡み合い、今後の動向が読みにくい状況であることがわかります。
しかし、住宅購入も売却も、市場の動きだけで決めるものではありません。「買い時かどうか」「売り時かどうか」は、市場のタイミングではなく、自分のライフプランや経済状況に合っているかどうかで決めた方が後悔が残りません。不動産の決断は、「自分のタイミング」を大切にすることが最優先です。
たとえば、住宅を購入する場合、市場が「買い時」だからといって、収入やライフスタイルに合わなければ、無理に決断する必要はありません。また、売却についても、「市場が高騰しているから」と焦るのではなく、将来的な住み替え計画や資産価値を慎重に検討することが望ましいでしょう。
市場は常に変化しており、その動きを完全に予測することは難しいです。だからこそ、「市場がどう動くか」よりも、「自分にとって最適なタイミングはいつか」を冷静に考える姿勢が求められます。
市場の波に流されるのではなく、自分のペースで慎重に判断し、納得のいく決断をすることが、後悔しない不動産選びにつながるのではないでしょうか。