不動産を所有していると、固定資産税や相続税など、さまざまな税金が発生します。しかし、これらの税金がどのように計算されているのか、意識されたことはあるでしょうか?
実は、その基準となる不動産の「評価額」は不動産鑑定士の手によって算定されています。この記事では、不動産鑑定士が税金にどのように関わっているのかについて、固定資産税にスポットを当てて解説したいと思います。
1. 固定資産税の基本 – どうやって決まるの?
固定資産税は、土地や建物(家屋)などの不動産を所有している人に課される地方税です。その計算式は以下の通りです。
固定資産税 = 課税標準額 × 税率(1.4%)
弊社が拠点としている千葉市では、税率が1.4%に設定されていますが、自治体によって異なる場合があります。では、この「課税標準額」とは何なのでしょうか?
2. 課税標準額とは?
課税標準額とは、税額を算出するための基準となる不動産の評価額です。これは、不動産の市場価格(時価)とは異なり、行政が定めた評価基準に基づいた価格で、土地や建物の種類によって異なる評価方法が採用されます。
課税標準額の決まり方(千葉市の場合)
不動産の種類 | 課税標準額の計算方法 |
---|---|
土地(商業地・宅地) | 評価額 × 70%(ただし、負担調整措置あり) |
小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額の6分の1 |
一般住宅用地(200㎡超) | 評価額の3分の1 |
家屋(建物) | 再建築価格 × 経年減点補正率 |
課税標準額は、3年ごとに見直されるため(基準年度の評価替え)、市場の動向とズレることがあります。実際の市場価格よりも高く設定されている場合は、見直しを申請することで固定資産税を軽減できる可能性があります。
3. 土地の評価と課税標準額の決まり方
(1)土地の評価方法
土地の課税標準額は、3年ごとに評価替えが行われ、その価格が固定資産課税台帳に登録されます。2024年度(令和6年度)は評価替えの年にあたり、全国各地の不動産鑑定士が鑑定評価を行い、その鑑定評価額に則って新たな価格が適用されます。
また、土地の評価には「負担調整措置」 があり、評価額の上昇・下降が一気に税額に影響を与えないように調整されます。
(2)住宅用地の特例 – 固定資産税が軽減される
住宅用地には特例が適用され、以下のように課税標準額が軽減されます。
土地の種類 | 軽減率 |
---|---|
小規模住宅用地(200㎡以下) | 価格の6分の1に軽減 |
一般住宅用地(200㎡超) | 価格の3分の1に軽減 |
✅ 例:300㎡の土地の場合
- 200㎡まで → 課税標準額 = 価格の6分の1
- 残り100㎡ → 課税標準額 = 価格の3分の1
この特例を適用することで、固定資産税の負担を大きく抑えることができます。
4. 家屋の評価と課税標準額の決まり方
(1)家屋(建物)の評価方法
建物(家屋)の評価は、「再建築価格」を基に計算されます。
家屋の評価額 = 再建築価格 × 経年減点補正率
✅ 再建築価格とは?
同じ建物を現在の建築費で新築した場合の価格を指します。
✅ 経年減点補正率とは?
建物が古くなると価値が下がるため、その減価を考慮した補正率です。
ポイント:評価額の上昇は抑えられる
評価額が前年度を超える場合、原則として引き上げられません(増改築がある場合を除く)。そのため、突然税額が大幅に上がることはありません。
5. 固定資産税の節税対策 – できることは?
(1)住宅用地の特例を適用する
住宅用地に対する6分の1、3分の1の軽減措置を適用することで、大幅に税額を抑えることができます。
✅ 申告が必要なケース
- 住宅を新築・増築した場合
- 家屋の用途を変更(事務所→住宅など)した場合
- 住宅を取り壊した場合
これらの場合、市税事務所に建物を新築した翌年の1月31日までに申告が必要です。申告を忘れると本来受けられる軽減措置が適用されず、高額な税金を支払うことになるので要注意です。
(2)固定資産税の評価額を見直す
評価額が不適切に高い場合、評価の見直しを申請することで、固定資産税を下げることができる場合があります。
✅ 見直しのポイント
- 近隣の地価が下落している
- 固定資産税評価額が市場価格よりも高い
- 土地の利用状況が変わった(農地から宅地へなど)
気になる方は、不動産鑑定士に相談し、適正な評価額を確認されてみてはいかがでしょうか。
(3)相続時の評価を適正に行う
相続した不動産の評価額が高すぎると、固定資産税だけでなく、相続税の負担も大きくなるため注意が必要です。相続税は、相続した不動産の評価額に基づいて計算されます。評価額が高く設定されていると、相続税額も増えてしまいます。
相続税の負担が大きくなる理由
相続税は、以下の計算式で求められます。
相続税 =(相続財産の合計額 − 基礎控除額)× 税率
不動産の評価額が適正でないと、本来よりも多くの相続税を支払うことになる可能性があります。
【具体例】相続税評価額の見直しで節税
✅ ケース1:市場価格と相続税評価額のズレ
例えば、ある土地の相続税路線価による評価額が1億円だったとします。しかし、不動産鑑定士が市場調査を行ったところ、実際の市場価格は8,000万円であることが判明しました。
この場合、不動産鑑定士による鑑定評価書を基に税務署に申請することで、相続税の計算基準を下げることができ、数百万円単位で節税につながる可能性があります。
✅ ケース2:土地の形状や用途の影響
例えば、同じエリア内の土地でも、
- 形がいびつな土地
- 規模が大きい土地
- 利用制限のある土地(市街化調整区域など)
このような土地は、一般的な路線価よりも実勢価格が低くなるケースもあります。気になる方は、不動産鑑定士に鑑定を依頼されてみるとよいかもしれません。
6. まとめ
固定資産税は、不動産を所有する以上、必ず支払わなければいけない税金ですが、正しい知識を持つことで納税額を適正に抑えられるケースもあります。また、相続時には適正な評価がされていないと、固定資産税だけでなく相続税の負担も過大になる可能性があります。
✅ 重要ポイントのおさらい
- 固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%(千葉市)
- 住宅用地の特例を活用すれば税額を大幅に軽減できる
- 評価額が市場価格よりも高い場合、見直しを申請できる
- 相続時には不動産鑑定士の評価を活用して適正な税額を