物流業界は供給チェーンの中核を担っており、その効率性は経済全体に影響を及ぼします。しかし、近年業界は深刻なドライバー不足に直面しており、この問題は2024年にさらに悪化すると予測されています。これを「2024年問題」と呼び、多くの物流企業がこの課題に直面しています。
このような状況を背景に、業界再編が活発に行われており、最近では企業間の合併や買収が頻繁に見られるようになっています。
- 【旧日立系ロジスティードがアルプス物流を買収】
米投資ファンドKKR傘下のロジスティード(旧日立物流)は、アルプス物流を買収する方針を固め、株式を非公開化する計画を発表しました。この動きは「2024年問題」、すなわちドライバー不足に対応するための業界再編の一環としています。 - 【セイノーホールディングスと日本郵便グループの業務提携】
セイノーホールディングスは、日本郵便グループと業務提携し、自社の物流基盤を他社に開放する戦略を加速します。2025年春には長距離輸送の共同運行を始める計画で、これも「2024年問題」を背景に運送効率の改善を図ることが目的です。
上記の買収や業務提携を進めるなど、各社は効率的な運送システムの構築を急いでいます。これらの動向は、ただ単に企業間の経営戦略に留まらず、物流業界の将来像を形作る重要な要素となっています。
感想
物流業界での労働力不足、いわゆる「2024年問題」は不動産業界にも波及しています。特に、物流施設は立地選定や建築設計の観点から、これまでよりさらに合理的なアプローチが必要とされるようになりました。例えば、アクセスが良く、広範な配送網への接続が可能な場所の選定、また環境に配慮した持続可能な建築物の設計なども求められています。
さらに、共同運送や効率的な輸送システムが広まることで、都市の物流のあり方が変わりつつあります。これまではショッピングモールなどの商業施設やオフィス、住宅などが都心部に集中して配置されるため、例えば首都圏では国道16号の内側を中心に物流施設が開発される傾向がありましたが、効率的な輸送システムの導入により、16号の外側など都市の外辺部や郊外にも物流開発が続いており、またサービスを提供する商業施設を配置することも可能になっています。
郊外に大型の物流施設を配置することで、都心への配送負担を軽減し、全体の物流コストを削減できるようになります。交通渋滞や環境への負担も軽減されるでしょう。また、小売業者は郊外にも店舗を展開しやすくなり、消費者にとっても近場でショッピングができるようになるため、生活利便性にも貢献します。このように、効率的な輸送システムは都市全体のサービスの分散を促し、中心部に集中することなく、広い範囲でのサービス提供が可能になります。
分散化に加え、最近では物流施設の開発ブームが一段落し、市場の過熱感が収束してきているとの声も聞かれます。これにより、投資家や開発者は実際の需要に基づき過剰な供給を避けるなど、より戦略的な投資判断を迫られるようになっています。