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複利現価率とは

複利現価率とは

複利現価率は、将来の価格を現在価値に割り引く際に使用される率のことです。

この概念は特に金融分析、投資評価、財務計画などの分野で重要とされており、時間の価値(Time Value of Money, TVM)の核心をなす概念の一つです。

時間の価値とは、同じ金額であっても、受け取る時点によって価値が異なるというのが原則です。複利現価率は、未来のキャッシュフローや収益を現在の価値に換算するために用いられます。

今回は、不動産にも関連の深い複利現価率について、分かりやすく解説します。

複利現価率の計算

複利現価率を用いた現在価値の計算式は以下の通りです。

現在価値(PV)=未来価値(FV)/ (1+r)n

●PV:現在価値
●FV:未来価値(未来のキャッシュフロー)
●r:複利現価率(割引率)
●n:未来までの期間 (年数や月)

なぜ複利現価率が必要なのか

複利現価率は、以下のような状況で使用されます。

●投資評価
投資案件の現在価値を評価するために使用されます。将来の収益を現在価値に割り引くことで、投資案件が現在の金額に比べてどれだけ価値があるかを判断することができます。具体的には、投資用不動産や債券の将来のキャッシュフロー(利息と償還金)を現在価値に割り引くことで、現在の適正価格を評価します。

●リスクの評価
複利現価率はリスクを反映しています。リスクが高い投資は、高い複利現価率を用いることで、そのリスクを現在価値計算に組み入れます。

●インフレーションの考慮
インフレーションは貨幣の価値を時間とともに減少させます。複利現価率を通じて、インフレの影響を現在価値の計算に取り入れることができます。

●財務計画
長期の財務計画において、将来のキャッシュフローの現在価値を理解することは、資金調達の必要性や投資のタイミングを決定する際に役立ちます。例えば、個人が退職金の将来価値を知りたい場合、その金額を現在価値に割り引くことで、今日必要な貯蓄額を計算できます。

複利現価率の計算方法

複利現価率の計算方法について説明します。例えば、1年後に受け取る予定の1,000円の現在価値を、複利現価率5%で計算する場合を計算してみましょう。

PV=1,000/(1+0.05)の1乗

この式を計算すると、PVは約952円となり、1年後に受け取る1,000円の現在の価値は約952円であることが分かります。

次に、0.50%の複利現価率で、期間25年の未来のキャッシュフローの現在価値を計算する場合を例に、具体的な数字を入れて計算してみます。

r=0.005 (0.50%を小数で表示)および n=25とします。この場合、ある未来のキャッシュフロー FV の現在価値を求める場合の割引因子(複利現価率を適用した後の値)は、

割引因子=1/(1+0.005)の25乗

この式を計算した結果が、0.50%の複利現価率で25年間の割引因子となります。

上記の割引因子を計算すると、約0.8771(計算結果は近似値)となります。

したがって、未来のキャッシュフローが例えば10,000円の場合、その現在価値は
10,000円×0.8771=8,771円 となります。

複利現価率を正確に設定することは、金融分析や投資判断の際に重要です。割引率が高いほど、未来のキャッシュフローの現在価値は低くなりますし、割引率が低いほど現在価値は高くなります。

複利現価率の不動産業界での活用

不動産市場においても、複利現価率は重要な役割を担います。不動産の将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで、物件の価値を算出します。具体的には、賃貸物件からの予想される家賃収入や、将来の売却から得られると予測される収益などが対象です。

例えば、あるアパートが来年に1,000万円の家賃収入を生むと予測したとしましょう。この予測収入は複利現価率を用いて今日の価値に換算する必要があります。なぜなら、時間が経過すると共に、賃貸市場の変動、物件の老朽化、経済全体のインフレなどのリスク要因が出現するからです。

不動産投資における複利現価率の適用は、(企業評価と同じく)不動産固有のリスク要因を加味することが重要です。例えば、立地の良さ、物件の状態、市場の供給と需要のバランス、地域経済の成長性などがこれに該当します。また、将来の不動産市場の予測や、法的規制の変更も大きな影響を与えます。

物件の将来のキャッシュフローを割り引いて現在価値を計算する際に、適切な複利現価率を設定することは、その物件の価値を正確に評価するうえで決定的な要因となります。リスクが高いと見なされる物件では高い複利現価率を設定し、リスクが低いと見なされる物件では低い複利現価率を設定することで、それぞれの物件のリスクに応じた現在価値が求められます。

このプロセスにより、投資家は物件を正しく評価し、適切な価格での購入や売却、そして収益性の高い賃貸運用の判断を下すことが可能になります。複利現価率は、まさに不動産投資における未来と現在を結ぶ架け橋と言えるでしょう。

まとめ(複利現価率の本質)

複利現価率は、リスク、時間、価値の三位一体の関係を表しています。将来にわたって受け取るお金の価値は、私たちが直面しているリスクや、お金を使用できるまでの時間、そして経済的環境(例えばインフレ率)によって変動します。

この現価率を決定するにあたり、市場データや経済理論に基づく客観的な分析が基本となりますが、私たち専門家の主観的判断も大きな役割を果たします。例えば、不動産の将来性をどう見るか、マクロ市場の影響をどう評価するかなど、数値には表れない「感」も複利現価率を設定する際には必要となります。

また、複利現価率を通じて、時間の価値を定量的に捉えることができます。私が特に興味深いと感じるのは、この割引率を使って未来を今に持ち込む点です。このプロセスは、将来の不確実性を計算しやすい数値に変換する手法と言え、これにより時間の価値を定量化し、投資の決断に質的な意味を与えています。

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