千葉県不動産鑑定士協会の調査研究委員会では、現在、千葉県内の地代調査(※)を行っています。その際、地域ごとの特徴を反映させた区分けが必要であるという課題に直面しています。
(※)地代とは土地を借りるときに支払う賃借料のことです。
特に、地価や人口、交通利便性などを考慮した適切な区分けがなければ、せっかく多くの不動産鑑定士が時間をかけて調査した地代調査結果の輪郭がぼやける可能性があり、地域の特性に基づいた検討が不可欠となっています。
本記事では、(まだ検討段階ですが)千葉県の区分けに関する個人的な考察をまとめ、明日の調査研究委員会の会議に備えた備忘録として記録しておきたいと思います。
1. 地理的・経済的な区分
千葉県を地理的および経済的観点から区分する方法では、地域の地理的特徴と経済活動の違いを反映した区分が可能となります。
経済圏に基づく区分案
- 東葛地域: 松戸市、柏市、流山市、野田市、我孫子市など。東京都心への通勤圏であり、住宅地や商業施設が発展しています。
- 南葛地域: 市川市、船橋市、浦安市、習志野市、八千代市、千葉市。交通利便性が高く、都心への通勤が容易な地域です。
- 千葉市: 千葉市全域。県の中心都市として、商業、行政の中心地となっています。
- 内房地域: 木更津市、君津市、袖ケ浦市、富津市、館山市、南房総市、鴨川市、鋸南町。工業地域と観光地域が混在しており、房総半島西側の地域です。
- 外房地域: 茂原市、勝浦市、いすみ市、大網白里市、長柄町、御宿町など。主に房総半島東側の地域で自然が豊かで比較的観光業が発展している地域です。
この経済圏に基づく区分は、地域ごとの産業や生活圏の違いを反映しており、特に地価や不動産市場の分析に役立つと考えています。
2. 人口に基づく区分
人口規模に基づいて地域を区分けする方法では、地価に大きな影響を与える人口密度を考慮しています。人口が多い地域は商業地や住宅地として発展しており、地価も高い傾向があります。
人口規模による区分案
区分 | 市町村一覧 |
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大都市 | 千葉市、船橋市、松戸市、市川市、柏市 |
中都市 | 浦安市、八千代市、習志野市、野田市、成田市、佐倉市、木更津市 |
小都市 | 茂原市、君津市、銚子市、四街道市 |
町村 | 館山市、鴨川市、南房総市、いすみ市、大多喜町、御宿町、鋸南町、九十九里町 |
この区分は人口規模に基づいており、都市部では地価が高く、地方では観光資源や自然の豊かさが価値となる地域が多いことがわかります。
3. 地価に基づく区分
地価に基づいて地域を区分する方法では、地域ごとの地価の差異を反映させることで、地代調査における精度を高めることができると考えます。
地価による区分案
区分 | 市町村一覧 |
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高地価地域 | 千葉市、市川市、船橋市、浦安市、松戸市、柏市 |
中地価地域 | 八千代市、習志野市、鎌ケ谷市、野田市、成田市、佐倉市、木更津市 |
低地価地域 | 館山市、南房総市、鴨川市、いすみ市、勝浦市、御宿町、鋸南町 |
地価の高い地域は住宅地や商業地としての需要が高く、地価の低い地域は観光や自然を活かした開発が進む傾向にあります。
4. 交通利便性による区分
千葉県内の鉄道網や道路網に基づく区分は、地域ごとの交通アクセスの違いを反映させることができ、通勤や商業施設へのアクセスの違いが地価に影響を与えます。
交通利便性による区分案
区分 | 市町村一覧 |
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鉄道利便性が高い地域 | 千葉市、市川市、船橋市、浦安市、習志野市、松戸市、柏市、流山市、成田市、佐倉市、木更津市 |
鉄道利便性が低い地域(バス・車交通圏) | 多古町、横芝光町、九十九里町、南房総市、鋸南町、長柄町、御宿町、いすみ市、館山市、鴨川市 |
鉄道利便性が高い地域では、住宅や商業施設が発展しやすく、地価も高くなります。一方、交通が不便な地域では、観光業や自然環境を重視した地域開発が進んでいます。
5. 文化・歴史に基づく区分
千葉県は歴史的に「下総」「上総」「安房」という3つの旧国に分かれており、この歴史的背景に基づいた区分も有効です。
文化・歴史による区分案
- 下総地域: 松戸市、柏市、市川市、船橋市、習志野市、成田市、佐倉市など。東京都に近い北西部の地域で、古くから栄えた商業地。
- 上総地域: 千葉市、木更津市、茂原市、君津市、袖ケ浦市など。房総半島の中部で、工業や農業が発展しています。
- 安房地域: 館山市、南房総市、鴨川市、鋸南町など。房総半島の南部で、観光業や漁業が中心となっている地域です。
歴史的な背景に基づく区分は、文化的な特徴や地域ごとの伝統を反映した地代の区分け役立ちます。
6. その他の観点による区分
この他にも、観光資源や災害リスク、産業構造などの視点を取り入れた区分も考えられます。観光資源が豊富な地域は観光業が経済の中心となっており、災害リスクの高い地域では防災計画が重要な施策となります。
まとめ
千葉県の地域区分を検討してみると、交通利便性、人口、地価、歴史的背景など、さまざまな観点から地域を区分けする方法が存在することを改めて認識しました。
これらの区分けは、地域の特性を反映し、地代調査において多角的な切り口となります。
調査研究委員会では、今後もこれらの区分けを活用し、千葉県の地代調査をなるべく正確に行い、地域ごとの特徴を踏まえた成果物を作成したいと考えています。今後も千葉県の不動産市場の発展に寄与できるよう努力していきたいと思います。