COLUMN コラム

都心5区のマンション価格と賃料を見て思ったこと

都心5区のマンション価格と賃料を見て思ったこと

(一財)日本不動産研究所が発表した2024年下期の「住宅マーケットインデックス」によると、東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)における小型マンション(40㎡未満)の賃料と価格が過去最高を更新しました。

(一財)日本不動産研究所「住宅マーケットインデックス2024年下期」の調査結果

主観を交えて

港区・中央区の湾岸エリアでは、ワンルームや1LDKでも月額賃料が20万円を超える事例が珍しくありません。「眺望」「設備」などの付加価値が評価される物件では、単身者やDINKs層からの人気が集中しています。

本コラムでは、以下のデータに注目してみます。

  • 都心5区 新築小型マンション価格:239.5万円/㎡(前期比34.6%上昇)
  • 都心5区 既存小型マンション価格:145.4万円/㎡(同1.5%上昇)
  • 新築小型マンション賃料:4,875円/㎡(同0.7%上昇)
  • 既存小型マンション賃料:4,585円/㎡(同1.0%上昇)

新築小型マンション価格の大幅上昇は投資家の買い需要が背景にあると推察されます。短期転売を視野に入れた“リノベ済みワンルーム”の売買が活発化しており、収益性を重視する動きが相場を押し上げているように見えます。

一方で、不安要素もありますので、以下に①~③をピックアップしておきます。

❶ 賃料上昇の“頭打ち感”

今回の調査で、小型タイプの賃料は確かに上昇していますが、その伸び率は0.7〜1.0%程度とわずかです。一方で、新築小型マンションの価格は34.6%も上昇しており、価格と賃料の上昇幅に大きなギャップがあります。

たとえば、仮に昨期の物件価格が100だったとすると、今期は134.6になります。しかし賃料がほぼ横ばいなら、同じ家賃収入でも物件の購入コストは大幅に上がっているため、投資利回り(収益性)は下がってしまいます。

このことは、「価格の高騰が賃料という実需の裏付けを伴っていない」=「投資家の期待や将来性への先行投資的な動きが主導している可能性が高い」と考えられます。つまり、市場が少し“熱くなりすぎている”兆候とも言えます。

❷ 購入者層の偏りと“需給のゆがみ”

小型新築マンション価格が、特に高い上昇率を示していますが、その購入者は投資目的が多いとみられます。特に海外富裕層や国内投資法人が主力であり、実需のシェアは低い。このような外部資金依存型のマーケットは、金利変動や為替リスクに脆弱です。

❸ 実需視点での不満点

実際に住む人間として見ると、「狭すぎる」「家具が入らない」「在宅勤務に向かない」といった生活上の制約も無視できません。とくに都心部で長期居住を考えるファミリーや高齢層にとっては、小型マンションの居住性はむしろマイナス評価になりがちです。

鑑定の目線から

小型マンションの鑑定評価を行う上では、賃料水準の上限、いわゆる“賃料キャップ”の存在を意識する必要があります。価格が大きく上昇していたとしても、賃料がそれに比例して伸びなければ、収益還元の観点から導き出される評価額には自ずと限界があります。

さらに、購入後の再販を見据えた市場性や流動性についても注意が必要です。価格や賃料の高止まりが続いている状況下では、景気の動向や税制改正によって、市場が不安定になる可能性も否定できません。

実際の需要構造を見ても、小型マンションの購入者は単身者や投資家が中心であり、今後も安定的に支持され続けるかどうかには慎重な見極めが求められます。また、現時点では賃料の伸びが限定的であることから、価格とのバランスが崩れつつある点には警戒が必要だと思います。

小型化が合理的な選択肢であるという見方もできますが、その裏側に潜む過熱感については、不動産鑑定士として冷静な視点で捉えるべきだと感じています。

CONTACT
お問い合わせ

相談のご予約や当社へのお問い合わせは、
以下よりお気軽にご連絡ください。