COLUMN コラム

AIの進化と士業

AIの進化と士業

AI(人工知能)技術が著しく進化しています。

多くの業界にとって、AIを見て見ぬ振りはもはやできないレベルにまで進化しているといっても過言ではないでしょう。

不動産業界も例外ではなく、例えば不動産鑑定で必要だった人員や専門知識の一部がAIによって置き換えられる可能性がある一方で、現時点のAIにはまだ限界があり、人間が持つ直感や判断力、倫理観などの要素はまだまだ重要な役割を果たしていることもわかってきました。

AIと士業

まず、AIに仕事が競合する代表的な士業として、以下のような分野が考えられます。

●会計士
AIによる会計処理や税務処理の自動化が非常に進んでいるため、会計士が行っていた繰り返し作業の削減が進む可能性があります。

●弁護士
AIによる法律知識の収集や分析が進んでおり、特に契約書や法令に関する作業において、AIの出力結果を利用することが増えていくと予想されます。

●不動産鑑定士
現時点で大きな影響はないものの、AIによる不動産評価モデルが開発されており、特に大量の物件評価を行う場合などはAIが効率的な解析を行えるため、従来の不動産鑑定士の役割が変化する可能性があります。

ただし、AIによって自動化される作業は限られており、現時点ではAIに置き換えられることのない人間の判断力や洞察力が必要な分野も多くあります。

また、ポジティブな要素としてAIの導入によって新たなニーズが生まれ、士業自身がAIを活用することで、より高度な業務に取り組むことが可能になるケースも考えられます。

不動産鑑定におけるAI利用のメリット・デメリット

例えば不動産鑑定におけるAIの利用には、以下のようなメリットが考えられます。

●特に大量案件では高速かつ正確な査定結果が得られるようになる可能性がある。
●膨大なデータ(価格形成要因)から傾向や特徴を抽出できるようになる可能性がある。
●人的ミスを減らし、一定の基準に従った査定ができるようになる可能性がある。

一方で、AIには以下のような課題もあります。

●査定の結果が機械的で、人間が把握できない理由によって査定結果が生まれることがある。
●過去のデータに基づいた査定結果になりがちで、将来的な市場の変動や社会情勢などの要素を考慮することができないことがある。
●査定対象となる物件の状況によっては、AIだけでは適切な査定ができない。

このように、AIにはまだまだ限界がありますが、更なる技術の進化によって、(もちろん不動産鑑定に限らず)今後ますます多くの分野で活用されることが予想されます。

不動産鑑定士とAIのどちらが優れているというわけではなく、個人的には相補的な役割を果たしていくことが重要だと”今のところは”思っています。

またAIが不動産鑑定において査定に必要な専門知識などの分野でAIが担う役割が増える(かもしれない)一方で、人間が持つ経験、直感や判断力、コミュニケーション能力などがより重要になっていくのではないでしょうか。

AIによる不動産評価モデル

ここでAIによる不動産評価モデルについて、簡単に解説させていただきますね。

不動産評価モデルには、機械学習アルゴリズムを利用したものや、ニューラルネットワークを利用したものなどがあります。以下に代表的なモデルの例を挙げておきます。

●回帰分析モデル
不動産の売買価格や賃貸価格などの市場価格を基に、物件の特徴を説明変数として回帰分析を行い、物件の価格を予測するモデルです。機械学習アルゴリズムを利用することで、より正確な予測が可能となります。

●ニューラルネットワークモデル
膨大な不動産取引データを学習し、物件の位置や広さ、周辺環境などの情報を基に、物件の価格を予測するモデルです。複数の階層から構成されるニューラルネットワークを利用することで、より高度な予測が可能となります。

K-meansクラスタリングモデル
不動産市場をいくつかのグループに分け、それぞれのグループにおける物件の価格の傾向を学習し、物件の価格を予測するモデルです。複数の物件をクラスター化することで、より正確な予測が可能となります。

これらのモデルを利用することで大量の不動産データを分析し、物件価格の予測を行うことができます。ただし、AIによる不動産評価モデルはデータの精度や適用範囲などの問題も存在するため、現時点では人間の判断力を補完するツールとして利用される程度であり、日本ではあまり浸透していない状況です。

まとめ

士業とAIにはそれぞれ得意分野がありますが、AIの進化により従来の士業業務においても、AIがその役割を担うことが増えてきています。

一方で、AIが得意とする分野と、士業が人間の感性を活かしてこなす分野とが、より鮮明に区分されたとも言えるのかも知れません。

将来的にはAIと士業が協力して、より高度な業務をこなすことが求められるようになるのは”まず”間違いなさそうですが、士業はAIの活用によって業務の効率化や精度向上を図り、AIは人間には難しい膨大な情報の処理を担当することで、お互いの強みを生かし合い、より高い成果を生み出すことができます。

あまりの短期間のAIの進化に「AIの進化によって失業するのでは?」という不安を持たれる方も少なくないと思います。私もそう思う部分もありますし、その気持ちはとても理解できます。

私は不動産鑑定士になる以前はエンジニア(プログラマー)でしたが、もはや今のプログラミング技術にはまったくついていけませんし、そもそもプログラミングこそAIの代替性が高い分野です。

ただ、AI自身が人間の手によって設計され、プログラミングされたものです。よってAIが出力した結果を人間が判断し、意思決定することが求められます。つまり、AIによる業務の自動化はあくまでも人間によって制御されるものであり、意思決定は人間側にあります。

その点を忘れないよう、士業もAIも、相互に補完し合って業務を進めていくことが求められるというのが現時点の私の結論です。

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