COLUMN コラム

令和7年・千葉県地価調査

令和7年・千葉県地価調査

令和7年の千葉県地価調査では、住宅=東葛~千葉市の“駅力帯”が牽引、商業=拠点駅前の磨き上げ、工業=湾岸と内陸ロジの二極強化という、ここ数年の潮流をよりくっきりと映しました。

県全体でも住宅・商業・工業・全用途のすべてが上昇。継続地点864のうち上昇592/横ばい114/下落158という内訳からも、面としての回復が読み取れます。

数字を追えば上昇は面で広がっていますが、実務の肌感で言えば「強い理由のある場所が、順当に強い」。一方で、人口・雇用・生活利便の回帰が弱い沿岸・外房の一部では、依然として慎重な見立てが必要だと感じます。

市区町村ヒートマップ

  • 住宅地:流山・松戸・千葉市(中央/美浜)など、通勤利便と生活利便が重なる帯が濃色。
  • 商業地:船橋・流山・千葉都心・柏・市川・習志野など、駅前再整備や人流回復の波が届く拠点が強い。
  • 工業地:浦安・市川・船橋・習志野・流山・柏・松戸・印西ほか、湾岸×内陸ロジ/冷凍倉庫/データセンター系の集積が押し上げ。

主観メモ:ヒートマップの“濃さ”は、結局のところ賃料の説明可能性と将来の選好をどれだけ言語化できるかに比例します。TX(つくばエクスプレス)や総武・常磐の直結性、駅前の歩行者回遊、工業系のサプライチェーン接続など、“なぜ強いのか”を一言で説明できるかが鑑定評価の肝でした。

市区町村「平均変動率」ランキング

住宅地・上位

流山市+12.5(+10.6)、松戸市+8.1(+4.0)、白井市+6.9(+5.4)、鎌ケ谷市+6.6(+3.2)、千葉市中央区+6.4(+5.2)
— TX・常磐・東武野田線の利便と、新陳代謝の早い住宅ストックが強み。

※%:対前年、カッコ内は令和6年。端数処理は県表記に準拠。以下同じ。

住宅地・下位

銚子市−3.1(−2.7)、東庄町−1.1(−0.8)、長柄町−1.0(−1.0)、九十九里町−1.0(−1.0)、御宿町−1.0(−1.0)
— 交通接近性・利便性が弱いエリアは、反転にも時間がかかる。

商業地・上位

船橋市+9.5(+11.6)、流山市+8.6(+8.6)、千葉市中央区+8.4(+7.5)、鎌ケ谷市+8.1(+7.2)、習志野市+8.1(+9.5)
— 駅前再整備・商業集積の磨き上げが効く。人流×テナントの質で説明可能。

商業地・下位

銚子市−2.1(−1.2)、いすみ市−1.9(−1.8)、横芝光町−1.4(−0.7)、勝浦市−1.0(−1.1)、南房総市−0.5(−0.9)
— 観光・域内消費の季節性に左右されやすく、賃料上昇の継続性に課題。

工業地・上位

習志野市+16.7(+27.1)、千葉市美浜区+15.5(+10.6)、流山市+15.3(-)、松戸市+14.9(+11.3)、印西市+13.1(+13.3)(ほか市原・袖ケ浦等)
— 湾岸の基盤+内陸ロジの新陳代謝。もっとも、造成費・電力・金利の“三重コスト”は過熱抑制に。

主観メモ:住宅・商業の上位常連に流山・船橋・千葉都心が並ぶのは、この数年の街づくりの“手触り”と合致します。工業地は立地×送電×スケジュールの3点が揃って初めて“地価の高さに理由”を与えます。土地だけを見て踏み出すと足元をすくわれがちです。

基準地「変動率」ランキング

住宅地(上位5)

順位市区町村・所在地変動率価格(円/㎡)
1流山市 東初石3丁目103番82+17.9%171,000
2流山市 おおたかの森南1丁目27番3+15.9%430,000
3流山市 おおたかの森西1丁目28番4外+15.9%402,000
4流山市 おおたかの森西4丁目177番38外+15.8%264,000
5流山市 東初石1丁目110番2+15.7%147,000

商業地(上位5)

順位市区町村・所在地変動率価格(円/㎡)
1船橋市 本町4丁目1241番7+16.2%2,150,000
2柏市 若柴(柏の葉キャンパス149街区9画地)+12.2%680,000
3船橋市 本町2丁目2325番10+12.1%620,000
4船橋市 前原西2丁目586番+12.0%1,490,000
5船橋市 宮本4丁目225番1+11.9%282,000

工業地(上位5)

順位市区町村・所在地変動率価格(円/㎡)
1習志野市 茜浜3丁目36番2外+16.7%175,000
2千葉市美浜区 新港63番2+16.4%128,000
3流山市 森のロジスティクスパーク2丁目221番1外+15.3%203,000
4松戸市 上本郷字船付543番1+14.9%262,000
5松戸市 稔台5丁目12番1+14.8%248,000

住宅地(下位5)※下落幅大

順位市区町村・所在地変動率価格(円/㎡)
1銚子市 犬吠埼10235番1−3.7%26,100
2銚子市 愛宕町3113番2−3.4%31,100
3銚子市 小畑新町8493番3−3.3%26,700
4銚子市 上野町217番19−3.1%31,600
5銚子市 北小川町2470番3外−2.9%32,900

商業地(下位5)※下落幅大

順位市区町村・所在地変動率価格(円/㎡)
1銚子市 長塚町3丁目647番56−3.1%43,100
2銚子市 明神町2丁目271番外−2.0%23,900
3いすみ市 大原字東仲町8699番−1.9%26,500
4勝浦市 興津字東町2665番2−1.6%25,100
5山武郡横芝光町 横芝字学野々台1501番49−1.4%27,300

実務で注目している点

  1. 住宅:賃料増の持続性は、駅力×管理水準×生活回遊で説明。築古でも“管理の言語化”ができれば評価は立つ。
  2. 商業:拠点駅前の回遊導線とテナントの更新力を検証。郊外ロードサイドは更新交渉で利回りが揺れやすい点に注意。
  3. 工業:造成費・電力・金利の試算を“早い段階で”織り込み、送電・許認可・引渡時期まで一体で与信。
  4. 下位エリア:雇用・教育・医療・交通の“戻り”がなければ反転は難しい。個別の強み(観光の通年化等)を定量で語れるかが鍵。

まとめ

今年の千葉県地価調査は、強い場所に“強い理由”があることを改めて示した印象です。
数字は“過去の結果”ですが、今後に向けても、「駅前の歩行者回遊」「テナントの更新力」「工業地の新陳代謝」の3点を注視し、現地で粘り強く追っていきたいと思います。

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