昭和52年生まれの私たちが背負ってきた時代は、決して穏やかなものではありませんでした。
超就職氷河期と呼ばれたこの時代に社会に出た私たちは、求人倍率が史上最低を記録する厳しい就職市場で、理想のキャリアにたどり着くことすら難しい現実と向き合わされました。周囲にいる先輩たちが「就職すれば安定」と語る姿とは対照的に、私たちにはその「安定」のスタート地点にさえ辿り着けないように感じたものです。大学を卒業しても正社員になれず、非正規雇用や派遣社員として働き始めた人も少なくありません。
この世代は、経済の移り変わりとともにさまざまな困難に直面した、最も不運な世代です。例えば、就職氷河期を過ぎてからも、リーマンショックやバブル崩壊の余波を受け、苦労して就職した会社が突然方針を変えたり、経営状況が悪化してリストラの対象になる人もいました。さらに、親世代の介護問題や自身の年金減額など、将来に向けての不安もこの世代は抱えています。
これらの経験は、私たちの世代に独特の価値観と生き方をもたらしました。一度転落すると這い上がるのが難しい状況にさらされてきた私たちにとって、この「転落への恐怖」は、誰もが経験したことのある感覚でしょう。努力して安定を築き上げても、何かのきっかけでその足元が崩れるのではないか――そんな不安を抱えている人も多いと思います。
ですから、昭和52年生まれや、同じ年に社会に出た人々に出会うと、自然と戦友のような不思議な気持ちになります。私たちが言葉にしなくても、そこにはお互いの苦労や葛藤が分かる共感があり、「あなたもあの時代を一緒に乗り越えてきたんですね」と心から思える瞬間があります。サラリーマン生活の中で理想の職場に出会えなかったり、辛く悔しい経験をしてきた仲間と出会うと、そこには自然と生まれる親近感があります。
また、そんな中でも多くの人が独立への道を選び、新しいチャレンジに踏み出しているのも、この世代ならではの特徴かもしれません。例えば、私と同じ年や少し年上の友人の中には、デザイナーとして独立したり、他には経営者として企業を立ち上げ、上場した後に海外に移住している人もいます。その他、独立し上場企業で社長や執行役員として活躍する人もいます。彼らもまた(私の知る限り全員が)最初の就職先に馴染めず、独立した人たちです。ある意味で、独立以外に道がなかったのかもしれません。
私たち昭和52年生まれの世代は、ある意味で強く、しなやかな「適応力」を備えているのかもしれません。転落の恐怖を知っていますが、たとえ理想から外れてたとしても、次の道を模索し、試行錯誤を重ねて少しずつ積み重ねて行く力。たとえサラリーマンとしてのキャリアがうまくいかなかったとしても、別の道を見つける柔軟さや忍耐力を持っていると思います。
厳しい時代を生き抜いてきた私たちにとって、同世代の仲間は大きな支えです。昭和52年生まれや、同じ年に社会に出た人々という共通点を持ちながら、それぞれが異なる道を歩む仲間たちと出会うたびに、勇気をもらい、そして私もまだまだ頑張らなければ、という気持ちになります。