COLUMN コラム

FIREと不動産投資

FIREと不動産投資

「FIRE(経済的自立・早期退職)」という言葉が流行っています。

現代は新型コロナウイルス蔓延により、働き方改革を含め世の中が激変している時代ですし、我が国では少子高齢化が着々と進行しています。

必ずしも明るい未来ばかりが訪れるとは限りませんので、そのようなライフスタイルの目的を持つ方が多くいらっしゃることは、私もよく理解できます。

個人的には歳を取っても不動産鑑定の仕事を続けて行きたいと思っておりますが、私もいつまで元気に仕事ができるかわかりません。

ですからFIREとまでは行かないまでも、将来のために複数の収入源を確保しておくことは大切だと思います。

そんな中、「脱サラして投資で食べていきたい。不動産投資なら生きていけますか?」という質問をいただきましたので、本質問に対する回答を考えてみたいと思います。

私のスタンス

私は2018年7月末でサラリーマンを辞め、不動産鑑定業で独立しました。今は一人の不動産鑑定士として活動しています。

メインの不動産鑑定業のほか、嗜む程度に金融商品への投資もしていますが、あくまで投資は収入源の一つとして。もちろん、投資だけで食べていけるわけではありません。

むしろ「投資に依存するのは危険」と考える派で、本業の不動産鑑定業を大切にしていて、それはこれからも変わらないと思います。

まず前提として、「あくまでリアルビジネスで稼ぎ、投資は補完的にやるのがベスト」というのが私のスタンスです。

投資だけで食べていける人はほとんどいない

「投資は必ず余剰資金で」と言われます。2020年のコロナショックを誰も予想できなかったように、投資の世界は何があるか分かりません。 

余程の天才か強運、あるいは専業トレーダーや、親から多額の遺産を相続した方などでないと、投資だけで一生食べていくのは難しいと思っています。

ただ、どうしても投資だけで食べていきたいのであれば、個人的には「現物の不動産投資」なら、うまく行けばサラリーマンを辞めても経済的に独立できる可能性が(他の投資方法と比較して)高いと思います。

会社勤めから大家業という別の仕事に切り替わりますが、大家業なら自由な時間は増え、FIREにも近づけるのではないでしょうか。

経済的自由の目安は2億円の物件購入

では「どうやって現物の不動産投資でFIREするか?」について考えていきます。

資金や投資方法にもよりますが、仮に不動産なら2億円の物件を購入すれば、諸々の経費率や空室率、イールドギャップ、税金などもさっ引いて、実質利回り3%で回せば、年間の所得が600万円になります。

※景気後退による稼働率下落、家賃収入減少リスク等は考慮外としてます。これらのリスク要因により収入は変動します。

年間600万円の所得で足りるのか否かは、各々の価値観や生活水準、扶養家族が何人いるかなどにもよりますが、仮にあなたが「独身で浪費をしない」という条件を満たすのであれば、すぐに脱サラしても何とか暮らしていけるのではないでしょうか。

次に、「どうやって2億円の物件を買うのか?」ということについて考えていきます。

属性にもよりますが、とりあえず自己資金が1億円程度あれば、融資額から見た物件価格(LTV)で見ると、万が一急激な市況悪化で稼働率が50%まで急降下したとしても、ローン返済額(その他諸々の経費も含む)が家賃収入を上回ることはないのではないでしょうか。 

※実際には個別に査定が必要です。

もし1億円の自己資金を準備するのが難しいのであれば(大半の人がそうであるように)、まずは節約して現金数百万円を貯め、地方の築古戸建をLTV50%で買い、リフォームして貸し出し、家賃収入を浪費せずに全額再投資に回し、それを20年間程度繰り返してステップアップしていけば、最終的に家賃収入だけでも食べていける(つまり2億円の物件を買える)ようになれるかもしれません。

ただし、その間の不動産市況に恵まれ(※1)、かつ不動産の勉強をし続け(※2)、さらに独身であれば(※3)という条件が付きますが。

(※1)個人の不動産投資家の景気が良かったのは2012年頃から2018年頃までです。以降は融資引き締めによる価格下落や、アセットタイプによってはコロナの影響で稼働率下落・家賃減額リスクも高まっています。

(※2)不動産は情報格差の世界で、詐欺や怪しい勧誘が多くあります。初心者が理論武装するには、不動産鑑定士などの専門家に相談する、または自分で100~200時間程度は不動産の勉強をする、書籍を50~100冊ほど読む、などの対策が必要です。

(※3)仮に結婚していたとしても、夫婦共働きでかつ扶養家族がいなければ問題ありません。

バランス感覚が大切

確かにお金は大切です。

ある程度のお金があれば、子供の養育費、親の介護費、自分が体を壊した時の入院費、はたまた超高齢化社会に向けた老後の生活資金などの心配を減らすことができますから。

金銭的な投資は人生を豊かにしてくれるものですが、必ずしもお金を増やすことだけが投資ではないのではないでしょうか。

今はベーシックインカム(※)の導入も検討されていますし、個人的には投資は家族や友人との平和な暮らし、自分の時間や健康などのため、つまり「自己投資」が大切なんじゃないかな、と思っています。

(※)最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して 一定の現金を定期的に支給するという政策。

長寿命化により100歳まで生きる時代です。お節介ながら、なるべく若いうちから、その辺のお金と人生のバランス感覚は身につけておいた方が幸せに生きられるのでは・・・と思います。

投資テクニックだけを身につけて80歳になって「2億円の資産があるけど、他には何もない。オレの人生なんだったのか」という状況は避けたいな、と思うのです。

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