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不動産鑑定士はどんな仕事をしているの?

不動産鑑定士はどんな仕事をしているの?

「不動産鑑定士って何をしてる人?」

と1ヶ月に3回は聞かれます。不動産鑑定士の仕事を知っている人が、世の中にいかに少ないかが身にしみる瞬間です(希少価値が高いと、前向きに捉えることにしています)。

不動産の専門家である不動産鑑定士の仕事を一言で表すと、「不動産の価値を適切に評価すること」です。

そして、不動産鑑定士以外は、不動産の鑑定評価を行うことができません。

「え?不動産会社も査定してるけど?」

と思われるかもしれませんね。

不動産会社による査定は画一的かつ簡易なものがほとんどで、その価格には公的証明力・法的責任はありません。

不動産会社の無料査定と不動産鑑定士の鑑定評価の違い

不動産の鑑定評価に関する法律に基づく鑑定評価は、不動産鑑定士のみに認められている独占業務で、その評価方法は、様々な要因が複雑に絡み合い、多面的です。

では、具体的に不動産鑑定士はどんな仕事をしているのでしょうか?

不動産鑑定士の仕事には、大別すると「公的評価」「一般鑑定」に分かれます。

公的評価とは、地価公示、地価調査、路線価評価、競売評価など。一方、一般鑑定とは、公的評価以外の民間、市町村、個人などから依頼される鑑定評価のことを指します。

また、「企業に勤める不動産鑑定士」(いわゆる社内鑑定士)、「独立開業組」によって、メインとなる仕事内容やワークスタイルも変わってきます。

本記事では、これらをふまえつつ、不動産鑑定士の仕事内容を掘り下げていきたいと思います。

不動産鑑定士の公的評価

不動産鑑定士の公的評価
不動産鑑定士は、他の士業と大きくことなる点があるのをご存じでしょうか。
それは、不動産鑑定士には、国や都道府県、裁判所、市町村などから定期的に依頼される「公的評価」が認められている点です。

「不動産鑑定士は独立に適した資格」と言われる理由の一つに、この公的評価があります。
実績を積んで実力を付け、一度公的評価の鑑定評価員になれれば、一定の要件を満たすことで毎年依頼があるので(※)、他の士業と比較すると、独立しても安定した収入を確保できます。
(※)鑑定評価員になるために必要な要件や実績などの審査が行われます。

公的評価をメインの仕事にする不動産鑑定士は、企業内鑑定士ではなく、独立開業組に多い傾向があります。

公的評価の1件当たりの報酬単価は、さほど高くはありませんが、公的評価は地点数が多く、ある程度まとまった報酬を確保できるため、独立して間もない不動産鑑定士にとって、この公的評価業務があるのとないのでは、精神的な余裕が全く変わってきます。

では、次に公的評価の具体的内容を見ていきましょう。

国土交通省の地価公示

国土交通省の地価公示
地価公示はよくニュースにも取り上げられるので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
地価公示の歴史は長く、1969年に誕生して以来、50年以上経った今では、欠くことのできない社会・経済を支えるインフラになってます。

地価公示とは、国土交通省(土地鑑定委員会)が、適正な地価の形成のために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を、3月に公示するものです。
地価公示の地点を「標準地」といい、各標準地の鑑定評価は、全国の不動産鑑定士が行っています。

地価公示の主な役割は、
「一般的な土地取引の指標になる」
「公共用地の取得価格算定の規準になる」
「土地の相続税評価・固定資産税評価の基準になる」
などが挙げられます。

なお、国土交通省の検索システムでは、2019年から不動産鑑定評価書の全ページが公開されるようになりました。
自宅の土地価格を知りたい場合や、土地を購入したい場合などは、まずは対象不動産の近くにある地価公示を参考にされてみてください。

都道府県の地価調査

都道府県の地価調査
1974年に誕生した地価調査は、適切な地価を把握するために、国土利用計画法に基づき、国ではなく、都道府県が毎年7月1日時点の地価を判定しています。

この地価調査も、各地点(基準地といいます)の評価は、全国の不動産鑑定士が行っています。
調査の目的は地価公示とほぼ同じで、土地取引の指標や、公共事業の買収価格の規準となることで、適正な地価の形成を図ることを目的としています。

地価公示は7月1日時点の価格なので、1月1日時点の価格である地価公示からちょうど半年後の価格。
地価調査は地価公示と同じ地点も含まれており、地価の推移を補完する役割も担っています。

地価調査の概要は、国土交通省の検索システムで検索できます。ご参考まで。

相続税路線価を定めるための鑑定評価

相続税路線価を定めるための鑑定評価
相続税路線価とは、相続税や贈与税などを算定する場合の規準となる価格のことです。
※路線価が付与されていない地域は、評価倍率表に基づき計算されます。

この相続税路線価も、全国の不動産鑑定士が評価を担当しており、最終的には国税庁の「財産評価基準」により、毎年1月1日時点の価格が公表されます。

土地の接面する道路ごとに土地価格が決まっているため、「路線価」と表記されます。
一般的に「路線価」といえば、相続税路線価を指すことが多いですね。

相続税路線価は、地価公示や地価調査とのバランスも重視され、価格水準は地価公示の8割程度が目安となっています。
地価公示は「時価」ですので、相続税路線価は時価の8割の水準ということになります。

「なぜ相続税路線価は、時価の8割程度なの?」

と思われたかもしれません。
時価は常に変動するため、納税者が時価よりも過大な相続税の負担をすることのないよう、時価の8割の水準に抑えられています。

下記サイトで、全国の相続税路線価を確認することができます。

固定資産税標準宅地の鑑定評価

固定資産税標準宅地の鑑定評価
固定資産税評価額とは、固定資産税の課税や、不動産所得税、登録免許税を算定するための基となる土地価格のことです。

路線価とは道路に接面する土地の評価額になりますので、「固定資産税路線価」というわけです。

固定資産税路線価は、固定資産評価基準に基づいて、最終的に各市町村が決定していますが、不動産鑑定士による鑑定評価額が基礎となっています。

ただし、地価公示、地価調査、相続税路線価は調査時点が毎年ですが、固定資産税路線価に限っては、評価替が3年に一度。
そして、固定資産税路線価は、地価公示の7割の水準が目安になっています。

ちなみに、不動産鑑定士の少ない地方部では、固定資産税標準宅地の鑑定評価を受託できる地点数が都市部と比べて多くなるため、固定資産税評価を担当している不動産鑑定士が得られる報酬額も多くなる傾向にあります。

自宅の土地の固定資産税評価額の内容を確認したい場合は、各市町村の資産税課にて閲覧することができますし、固定資産税路線価は、下記のサイトで調べることができます。

不動産競売物件の鑑定評価

不動産競売物件の鑑定評価
不動産競売物件には、基本的に以下の3点セットが必要とされています。

①物件明細書(裁判所書記官が作成)
②現況調査報告書(執行官が作成)
③評価書(評価人が作成)

このうち、競売物件と不動産鑑定士との関わりは③の部分です。
評価人には、通常の場合、不動産鑑定士が選任されます。不動産鑑定士が作成する評価書には、対象不動産の状況、競売市場で売り出すことを前提とした評価額、価格を決定するまでの過程などが記載されています。

競売は、初回の期間入札で売却することを目標としているため、評価額は時価(公示価格レベル)の60~70%で評価されることが多くなります。
需要が乏しい地域や、売却が困難な物件は、さらに低く評価される場合もあります。

不動産鑑定士が不動産競売物件の評価人になるには、筆記試験や面接などがある場合もありますが、固定資産税評価と同様、特に地方を拠点に活動する不動産鑑定士の貴重な収入源となっています。

不動産鑑定士の一般鑑定

不動産鑑定士の一般鑑定
次に、公的評価以外の一般鑑定について見ていきます。

地方公共団体、民間、個人などからの依頼を受けて鑑定評価をするケースもあり、これらを総称して一般鑑定と呼ぶことにします。

特に大手の不動産鑑定機関では、公的評価よりも一般鑑定の依頼が多くなります。
また、独立開業組であっても、大都市圏では、メインとなる仕事が一般鑑定となる割合が高くなる傾向があります。

一般鑑定では、証券化対象不動産の評価など、報酬が大きい案件も多くなります。
したがって、独立開業組の不動産鑑定士にとっては、公的評価を確保しつつ、一般鑑定を多く受注するかが大切であり、営業活動のモチベーションにもつながっています。

地方公共団体から鑑定評価の依頼

地方公共団体から鑑定評価の依頼
地方公共団体などから、公共用地の取得や処分のほか、補償のための鑑定評価の依頼を受けることがあります。

残念ながら、地方公共団体からの依頼件数自体は減少傾向にありますが、最近では、公的不動産の利活用(PRE)などが、成長が見込まれる分野です。

地方公共団体が厳しい昨今の財政状況を把握するため、不動産鑑定士や民間事業者を活用して、公的不動産を戦略的に管理・運用する取り組みが進んでいます。

その他、市町村の担当者向けに研修会で、不動産鑑定士によるプレゼンテーションが求められることもあります。

民間企業から鑑定評価の依頼

民間企業から鑑定評価の依頼
民間企業系の大きな仕事しては、投資法人が不動産証券化のため、投資用不動産の取得や売却時に鑑定評価が必要になる場合や、賃貸等不動産の時価などを財務諸表に注記する場合などがあります。

その他、金融機関が融資を行う際に、正確な担保価値を把握するための鑑定評価や、中小企業経営者で、安定的な収益を確保するために不動産投資をする場合の鑑定評価なども考えられます。

また、他の士業から鑑定評価の依頼を受けるケースもあります。
例えば、税理士なら相続税の申告で特殊な画地を税務署に申告する場合、弁護士なら、訴訟の場で家賃や地代を増額または減額請求する場合などが代表的です。

難しい土地の評価も増えている昨今、他の士業にとっても、不動産鑑定士とつながっていることは優位性になります。

その他、最近は不動産業者の販路拡大のため、インターネットを活用した不動産投資「不動産投資型クラウドファンディング」が、市場を急速に拡大させています。
不動産投資型クラウドファンディングの投資物件には鑑定評価が活用されるケースも増えており、不動産鑑定士にとってもビジネスチャンスとなっています。

このように、不動産鑑定士の活動は民間企業でも多岐にわたります。

個人からの鑑定評価の依頼

個人からの鑑定評価の依頼
公的評価や民間企業からの鑑定評価依頼に比べ、必ずしも市場が大きいとはいえませんが、個人から不動産鑑定の依頼を受けるケースもあります。

個人からの鑑定評価の依頼でもっとも多いのが、自宅や店舗などを売買する、あるいは売却を検討している場合に、参考価格として不動産鑑定を取得するケースです。
また、相続時に相続財産である不動産を分配する際も、鑑定評価を活用するケースも増えています。

売買だけでなく、マンションやオフィス、店舗などの賃貸物件の賃料も、不動産鑑定士による鑑定評価が活用でき、家賃の設定や賃料の増減額交渉に役立ちます。

このように、個人でも鑑定評価を活用することで、公的で説得力の高い不動産の価値を把握することができます。

不動産のコンサルティング・海外への進出

不動産のコンサルティング・海外への進出
突然ですが、不動産鑑定業界の最大手は、一般財団法人日本不動産研究所で、不動産鑑定士が267名在籍しています(令和2年1月1日時点)。
鑑定業界は市場規模が小さいため、30名でも不動産鑑定士が在籍していれば、大手です。それでも、国内で数えるほどしかありません。

何が言いたいのかいうと、不動産のコンサルティングや海外進出の分野は、法令遵守の必要性などもあり、弁護士等も含め人材豊富な大手鑑定機関が中心となっています。

また、独立開業組であっても、大都市圏なら民間業務を中心に、地方なら公的評価を中心に、さほど贅沢をしなければ食べていくこともできるので、不動産のコンサルティング分野などに進出するインセンティブが乏しく、手を付けている不動産鑑定士は少ないのが現状です。

しかし、独立開業組であっても、不動産コンサルティングや海外への進出分野は、事業拡大の大きな可能性を秘めています。

不動産にまつわる全ての悩みを解決するためのコンサルティング業務であるならば、不動産は問題の宝庫です。皆さんの周りを見てください。すべて不動産です。

不動産の鑑定のみならず、今後広がりが見込める不動産のコンサルティングや海外進出の分野においても、不動産鑑定士の活躍が期待されています。

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