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証券化対象不動産の法整備の歴史

証券化対象不動産の法整備の歴史

「証券化と法律と歴史か…堅苦しい話みたいだから、読むのやめよう」

大丈夫です!堅苦しいタイトルですが、細かい部分までは深入りしませんし、軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。

「証券化対象不動産」は漢字が長々と続くので、一般的に難解なイメージがあると思いますが、「J-REIT」をイメージしていただくのが一番分かりやすいと思います。

J-REITはインターネットで投資できる投資信託の商品の一つです。上場しているので、誰でも手軽に小口化された不動産に投資することができます。

そして、投資商品の背景には、時間をかけて整備されてきた法律の歴史があります。すべては、市場の健全な発展と、投資家を保護するために・・・

今回の記事では、証券化対象不動産の法整備の歴史について、時系列でまとめました。

証券化対象不動産の法整備の歴史

証券化対象不動産の法整備の歴史

不動産特定共同事業法(1995年)

不動産特定共同事業法(以下、不特法)は、実物の投資用不動産を小口化して運用する事業者を規制するための法律で、1995年に制定されました。

1980年代末期から1990年代前半の不動産バブル期では、急激に地価が上昇し、不動産の流動化がすすみ、高額な不動産を小口化して複数の投資家に販売する商品が玉石混合の状態でした。

当時は、今のような証券化スキームで器(SPV)を利用した不動産投資ではなく、事業者自身が不動産を購入し、匿名組合を通じて不動産を小口化し、投資家に売却していました。

当時は事業者に対する参入規制がないものですから、有象無象の事業者が物件を運用している状態です。

そんな中、バブルが崩壊し、景気が急激に冷え込むと経営基盤の脆弱な事業者の経営破綻が相次ぎます。事業者が倒産すれば、投資家のお金はかえってきません。

「このままではいけない。不動産の流動化にも何か規制が必要だ!」という声があがり、不特法が制定されました。

不特法に基づき運営される事業を、「不動産特定共同事業」といいます。
「不動産特定共同事業」の健全な発展と投資家保護を目的として、不動産を小口化する事業者を厳しい基準で選別しようとしたのです。

不特法が施行されて以降は、事業者が不動産を小口化するためには、国(国土交通省)や都道府県知事の許可、宅建業の免許、一定の資本金などが必要になりました。

不特法の制定により、事業者の信頼性が担保されることで、不動産を小口化した商品の信頼性も高まっていくことになります。

特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(1998年)

特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(以下、SPC法)は、不動産証券化のルールを定めた法律で、不動産の流動化を拡大することを目的として1998年に制定されました。
※2000年の法改正以降は、資産流動化法と呼ばれます。

余談ですが、SPC法は不動産鑑定士のバイブルである「不動産鑑定評価基準」の改正や不動産評価手法にも影響を与えており、不動産鑑定士とも馴染みの深い法律です。

SPC法では、不動産や不動産担保付きローンを証券化するための会社(ビーグル)について、法人税や不動産登録免許税などの減税税制上のメリットなどが記載され、不動産流動化がさらに進展することになりました。

投資信託及び投資法人に関する法律(2000年)

これまでは売るための証券化でしたが、「お金を運用したい」という投資家のニーズに答えたのが、投資信託及び投資法人に関する法律(以下、投信法)です。

投信法は、投資者から資金を集めて運用し、その成果を分配する制度を整えた法律です。

ここでJ-REITが登場します。J-REITは上場している不動産ファンドです。個人も含めて誰でも不動産に投資できるようになり、投資用不動産市場が大きく発展することになります。

J-REITでは物件の鑑定評価の概要もインターネットで公表されており、情報の透明性も担保されていることも、発展した要因です。

不動産証券化(J-REITと私募ファンド)の市場規模は、2017年時点で32.6兆円です。単年(2017 年)では約 6.6 兆円の売上をもたらし、その付加価値額が同年のGDPに占める割合は約0.65%です(一般社団法人不動産証券化協会調べ)。

わずか20年弱で、30兆円規模まで成長しています。

金融商品取引法(2007年)

金融商品取引法(以下、金商法)は、有価証券の取引について規定した法律で2007年に制定されました。

J-REITが登場して以降、流動化された不動産の商品化が進んだものの、法整備が追い付いておらず、不動産商品が乱立し、詐欺まがいの商品も見られるような状態でした。

そこで、金商法により不動産商品に対しても、株式や債券などの金融商品と同じような厳しい規制がかけられるようになりました。

これまではゆるかった不動産商品市場ですが、不当な価格で不動産商品を売ることが難しくなり、より安全な資産として市場が成熟していくことになります。

リーマンショックと証券化対象不動産

リーマンショックと証券化対象不動産
不動産証券化により、2000年中ごろは不動産投資が加速して、不動産価格が急速に上昇しました。いわゆるファンドバブルです。

そこで起こったのが、2008年サブプライムローンを端を発した世界的な金融危機です。金融資本市場は大混乱に陥り、不動産価格も一時的に下落しました。

物件の需要が相当限定され、投融資ともに資金繰りが悪化します。J-REITの予期せぬ破綻や生き残りのための合併が見られたのもこの頃です。

投資家の厚みがなく、まともに動けるプレーヤーといえば「サービサー(債権回収会社)」くらい。このため、サービサーが市場を牽引していました。

ただ、金融市場と比べて不動産証券化市場は落ち着くのも早く、2009年春には市場は落ち着きを取り戻しました。

ファンドバブルで不動産価格の上昇は見られたものの、2007年に制定された金商法の規制が効いていたため、不動産価格はそれほど大きく値上がりしていなかったことが、J-REIT市場が大きく乱れなかった理由の一つです。

終わりに

まとめ
今回は、証券化対象不動産の法整備の歴史を振り返ってみましたが、いかがだったでしょうか。

新サービスが登場すると、それに合わせる形で後付けで法律が整備されていることが良く分かると思います。

始まりは無法地帯でも、次第に環境が整備されていき、選ばれた事業者が参入することで、最終的によりよい商品が提供されるようになります。

今流行の仮想通貨や、今後登場する新しい不動産商品でも、同じことが言えるのかもしれません。

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